【29】聖女様と冒険者(5)
救出作戦は決まった。
明朝一番に出発することになったの。
本当は直ぐさま出発したいところだけど、準備万全にしとかないと二次災害みたいに、この救出パーティーも危機に陥るかもしれない。
でもその前に……結構罪悪感が凄い……。
わたし。嘘付いてる。
わたし。[魔払い人]ではないの。
[魔払い人]を偽装している。
ほら?魔物の位置や数、強さが分かったら冒険者にとって凄い魅力的でしょう?魔物が逃げなければ尚更ね。
わたしその能力もってんの。
そしてその能力が知れたらヤバい事になるって、少し考えれば分かるわ。だから物語で知っていた[魔払い人]に偽装したの。
魔物を払う能力は、聖女の代名詞たる魔法[ホーリーフィールド]。魔物を寄せ付けない聖なる結界を貼る魔法!
その範囲内の瘴気を浄化する結界なの。
一度張った結界は長時間持続可能で、神の力の神聖力が強い者程その力も持続時間も増すの。わたしの場合1ヶ月は結界を維持できるわ。
それにこの[ホーリーフィールド]の特徴は、決められた一定範囲内なら遠距離からも神聖力を注入して効果を延長出来るって事!
だから聖女はその範囲を国にして、神聖力が高い神殿から国の中にある結界へ力を送るのね。
その[ホーリーフィールド]を自分自身に掛けたの。
[魔払い人]の能力ってこの[ホーリーフィールド]に似たような能力をあらかじめ持っていて、その効果を自然発生させる人だと踏んだのね。
でもね。ちょっと[魔払い人]の能力を買いかぶり過ぎてた。セイバスさんがね教えてくれたんだ。[魔払い人]の効果範囲はせいぜい半径100mくらい。多くても200mに満たないだろうって!物語にはそんな事は書いてなかったからね。
つまりわたしはその常識からすれば、トンでもない規格外だってこと!
これでも自分としては過小申告してたんだ!
あまり凄く見せたく無かったから、実際の数字の半分以下に申告していたのさ!
だってわたしの[ホーリーフィールド]の適用半径って5㎞なのよ。つまりわたしを中心に10㎞の範囲の瘴気を浄化出来るってこと。
浄化繋がりでいうけど浄化魔法[ピュアラ]では瘴気は浄化出来ないみたいなの。ピュアラの方が簡単なのに……。
それからもう一つ。魔物の位置等を把握出来る能力も、実は魔法なの。魔法名は[サーチ]。
サーチの能力は重複するけど、対象範囲内の魔物の位置、数、強さを知ることが出来るの。弱い魔物は赤い点に見えて、強くなるにつれて赤い点が大きくなるわ。
それだけじゃないの。人間の数も分かるわ!
これは青い点で記されるの。ただ人間の場合は皆同じ大きさ。強さまでは分からない。
でもその人間の点を思い描いて鑑定すれば、大体の強さは分かるの。しかもサーチ適用範囲はホーリーフィールドと同じ半径5㎞!
凄いでしょ?ヤバいチート能力だって自覚している。
だから人間の位置も分かるのは秘密にしたし、能力が心許ない事を示す為に半分以下の範囲しか分からない設定にしたのに、やらかしちゃった。
元のわたしの化物ような能力を考慮して居なかったの。
わたしね。
聖女に成ったのね。
それはね。
コリン病の患者を嵐に紛れて大勢治した後に、何と無くだけど今までの自分ではない気がしたの。それで自分に鑑定を掛けてみたから、聖女って分かったのよ。
それで色々能力が覚醒したみたいなの。
聖女にわたしがなれた理由は、コリン病患者を大勢治したから。本来コリン病で死ぬ運命の人々を何千人も治したから、聖女に成れたの。
神様の御褒美って訳ね。
そして魔力量も判明したわ。
その前に誰でも魔力は持って生まれて来ているの。
普通の一般人は魔力値が100前後。
わたしが五歳の時に図った魔力値が300。
一般人の三倍あるけど、魔力値としては最低クラスね。
母でさえ1000はあったわ。
その1000の値は冒険者の魔法士レベル。
大体1000~3000ね。
そして魔法使いを名乗れる貴族が持ってる値が5000からなの。大体5000~一万の間。
王族はね。8000~2万位。
で聖女は、五万~十万って覚えていて。
わたし毒盛られて死にかけたりしながら治療魔法使い捲ったでしょう?それで魔力そのものは上がらなかったけど、魔力が練られて練度や潜在値が大幅に上がっていたの。
そして毒で死んで生き返った。
一回目で蘇生したら10倍の3000に成っていたの。
冒険者並みね。
二回目蘇生でまた10倍で魔力値は3万!
王族を越えたわ!
三回目では更に10倍!魔力値は驚きの30万!
聖女をもぶっちぎり!
そしてコリン病治療の為に街全体に……あれ南街にだけ魔法掛けた積もりだったけど、ローレン全域に[ピュアラ]が行き渡ったみたいでね、そのせいか知らないけど30万の魔力を全投資して魔力切れを起こした。
そして目覚めたら魔力が二倍の60万になっていて、聖女覚醒のおまけ付き!
つまり元の魔力値300を1だとすれば、最終的に2000倍になったのね。凄いね。
聖女になったらさ、新しい魔法……と言ってもわたしが作ったわたしだけの魔法を簡単に開発出来るようになったの。何気に生きるのが楽になったわ!
それと不思議なんだけど、屋根裏部屋で毒に対抗して状態異常回復魔法[キュア]やダメージ回復魔法[ヒール]そしてその複合魔法[キュール]を使いまくっていたけど、おかしいのよ。
キュアやヒールで一回あたり魔力消費100減るの。
キュールは200ね。
魔力は1日掛けて自然回復するから、わたしその頃魔力総量300しかないでしょう?単純計算で8時間で魔力100回復よね。でもわたし……1日10回以上は使っていたのよ。
さらに蘇生魔法[ホーリーザレク]で一万も魔力消費する筈なんだけど?
計算が合わないよね?
もしもの為の[ホーケンリーク]もずっと待機しているけど、それだけで1日当たり2千もの魔力を消費しているね。鑑定によればね……。
そしてわたし1度目に死んだ時に、魔力消費2千の[ホーケンリーク]と魔力消費1万の蘇生魔法[ホーリーザレク]で合計1万2千も魔力を使用したのね?
そん時わたし魔力値300しかないのよ。
ざっと見40倍の魔力を消費していたわけだけど、差し引き残りの11,700の魔力はどこから沸いてきたのだろう?
さっぱり見当もつかないわ!
どうなってたんだろ?
1~3回目までの蘇生は覚醒前なので、なぜ魔力許容量以上の魔法を使えたのか、アイラには分かりません。
という設定です。
作者も分かりません。