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【20】聖女様と街娘(6)


これはわたしが脱出した11歳から12歳までのお話。

実年齢では15歳から16歳の間ってことね。


ちょっとややこしい。


わたしは脱出してから半年間は、アマンダ母さんの食事療法で体力回復に努めたの。その間はほとんど数えるくらいしか、外出はしなかったわ。

初めは骨と皮の痩せ過ぎの見た目でしょ?

悪目立ちするから、はじめの3ヶ月は一切外出はしないで、食べて、筋トレして、寝て、勉強して、本読んでいたの。

そして学校が9月から始まるから、それに標準を合わせて体を作ってきたの。


お陰さまで9月も間近の頃は、小さいなりに肉もついて、違和感が無くなったの。つまり骨と皮のやせっぽちのわたしから、脱却したってことね。


そして家族みんなで、わたしたちの住む南街を回ったわ。

お父さんやお母さんに連れられて街を案内がてら、わたしの紹介をして貰ったの。


街のみんなはね、わたしがお父さんの死んだ妹さんの[忘れ形見]っていう設定を信じてくれてた。

それどころか11歳にも見えないくらい小さいらしく、随分可愛がってくれた。


そして街の、ある喫茶店に入ったのね。

そしたらレイア時代の知り合いがいたの。喫茶店のウェイトレスをしていたお姉さんなんだけど、わたしを見て突然感極まって泣きだしたの。

その顔を見てわたしも固まってしまった。だってそのお姉さん。サラさんって名前だけど、両親が生きていた頃のわたしの専属メイドだったの!当時は15歳の成人成り立てだったから、再会当時が20歳だったわ。


そして『バレたの?』なんて、内心ドキドキしていたけど、わたしが驚いた顔で固まっているのに気付いて


「ごめんなさいねアイラちゃん。昔わたしがお仕えしていたお嬢様に面影があまりに似ていて、びっくりしたの。

でも……その頃はアイラちゃんと同じ年頃だったけど、今は15歳だからきっと綺麗な御令嬢に成っていると思うの。だから……アイラちゃんもきっと美人さんに成れると思うわ」


そうね。わたし栄養失調で当時から殆んど成長していないから、間違えるのも無理はないわ……。


っっっって!順調に成育していたら、危なかったってことね。


それでお父さんが心配してくれて、変装もかねて度が付いていない大きな丸眼鏡を買ってくれたの。それを毎日付けて外出しているわ。


通いだした学校は貴族達が通う大きな学園ではなくて、平民庶民の子供達が通う学校ね。寮とかないからみんな家から通っているの。

学校は午前中しかなくて、文字の書き方や数学を重点的に教えてくれる。それから歴史ね。このフリーデン王国の成り立ちとか、王族の偉業とか、それに……領主のアスタリス侯爵家の偉大さとか……。

この学校でアスタリス侯爵家がどれ程王家に貢献して、この領地や寒村だったこの街を発展させてきたか、教えて貰った。初耳だったの。


わたしが本格的に家庭教師に習いだした時に両親が事故で亡くなったから、わたしの知識は止まったまま。


だから実年齢15歳で11歳のクラスに配属されたけど、違和感なく普通に溶け込めたのよ。

ちょっと上のクラスの子供達を先輩扱いするのが、変な感じだった。だってみんな本当は年下だしね!


学校はだいたい10歳から15歳まで通うの。

だからわたしは本当は卒業して社会人として働きだす年齢ってことね。


でも屋根裏部屋に監禁されて、勉強も何もできなかったから、正直この学校で学べることは凄く有難い!


学校へ通い始めてから半年、脱出してから一年。

今日わたしの16……じゃなかった……12歳の誕生日を迎えたのよ!



この半年は色々楽しい新鮮な出来事が沢山あったけど、内容は省くわ。それよりもこの街に奇跡が起きたのよ。

ある日を境に多くの人達を悩ませた[コリン病]患者が、治ったの。


しかもコリン病の根元の今は廃鉱となっている山の土砂が黒々と固くなって、土砂の流出が無くなったというオマケつき。


これはもちろん……わたしがやりました。


まずいちいち一人一人治すのは面倒だから、街全体を思い浮かべて浄化魔法[ピュアラ]を発動する事にしたの。

でも魔法を仕様すると青白く光っちゃうでしょう?

街全体に魔法を掛けて街が発光したら目立つでしょう?


だからね。機会を待ったの。


ある日。大嵐が夜中にこの街を襲ったの。

雷が凄くて、ピカッて光っては近くに落ちていたの。


ここで閃いた!


──今がチャンス!


わたしは夜中にお父さんとお母さんに見つからないように抜け出して、雷が激しく光ったタイミングで街全体に浄化魔法[ピュアラ]を掛けたわ。

そしたら街が青白く大袈裟に輝いたけど、みんな雷の光だって誤解してくれたみたい。

一瞬の出来事だしね。


そしたらその浄化魔法が、川も数十キロに渡って浄化されて、山の廃鉱跡も固まってしまったのよ!


流石にその日は魔力切れを一時的に起こして大変だったけど、変な後遺症も無く、無事回復したわ!


というよりも何故か寝て起きたら、魔力総量が倍増していた。つまり実年齢11歳までの時の魔力値が1だとすれば、15歳間近で脱走した時は1000。その倍だから、2000に成ったってことね!


何故そんなことになったのか、分からない。

もしかしたら魔力が一時的に枯渇した反動が、その力を目覚めさせたのかもしれないわ。






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