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【19】聖女様と街娘(5)


レイアが脱出してから、一年が過ぎた。



アスタリス侯爵家のダルソン子爵は相変わらず代理のままだった。噂では理由は分からないがアルゼン伯爵に賠償金を払う羽目になり、アスタリス侯爵家は更に酷い状態になっていた。

庭は荒れ放題で、外部委託の庭師も集まらないらしい。


使用人の数は必要最低限。

入れ替わりも激しく、執事すら居着かない。


高額で雇っていたシェフとの再契約はなし。食事のランクも大分落ちたらしい。


それどころか、ダルソン子爵は肥満が進行して、痛風が酷く、このところ心臓の痛みを訴えているらしい。

夫人のエフレアも肥え太り、体調不良で歩くのもままならない。娘のシャノンの顔は丸々とした球体となり、社交界のデビュタントはダンス中に何度も派手に転んで、別の意味で会場を沸かせた。


そして[斜陽のアスタリス]と揶揄され、侯爵家の転落振りが噂された。


そしてある噂が流れだした。



『跡取りのレイアはもう生きていないのではないか?』

『殺されたのではないか?』


『ダルソン子爵が殺したのではないか?』



レイアが15歳の成人になっても一向に表舞台に姿を現さない。病気と称して引きこもり、侯爵家をダルソン子爵に委譲する署名の儀も延期された。

何度か生存を確認する使者が訪れたが、皆門前払いをされた。


しかも騎士を殆んど解雇して、王国への義務も果たせない。


それでいよいよ国王が動くらしいという噂が社交界に流れた。


レイアが生きていれば良し……さもなくば……。


レイアは綺麗な青い髪の少女だ。

青い髪は平民にはいない。

何故なら青い髪は魔力持ちの証明だから、貴族に直ぐに引き取られるから……。


[身代わりを立てるのは無理]


だから、アスタリス侯爵家のお嬢様には誰にも会わせない。


でも。


もし王家が直接動くとなれば、隠し通すのは不可能。



それが本当なら……。



アスタリス侯爵家……いや……ダルソン子爵は風前の灯だろう。




☆★☆



「お母さん。行ってきます!」

「気をつけてね!アイラ。

今日は誕生日だから、道草せずに早く帰ってくるのよ!」


「はーい!」

「お友達も連れてきてね!」


「はーい!行ってきまーす!」


ガイの家から12歳の女の子が出てきて、母のアマンダに手を振る。

少女は12歳にしては背が低く可愛らしい。

ウェーブの掛かった焦げ茶色の髪を、首と頭の境くらいで短く切り揃えている。瞳は茶色で大きな丸眼鏡を掛けている。


彼女の名前はアイラ。

今日。春も麗らかな3月3日。

12歳の誕生日を迎える。


彼女には秘密がある。


彼女は消息不明の貴族令嬢。

アスタリス侯爵家のレイア・アスタリスだ。


あの脱出した次の日。

家族会議で名前がレイアからアイラになった。


年齢は本当は当時2日後に誕生日を迎えれば15歳となり、今日16歳となるはずだったがそれは秘密。


ガイとの屋根裏部屋の話し合いで12歳にされ、更に小さすぎるとのアマンダの意見で11歳になった。

年齢が11歳の方が脱走先の主人に見つかって疑われても、シラを切れるだろうという思惑もある。

本当はそんな人。存在しないけど、アマンダさんの好きにさせた。


誕生日はゴロが良いからと脱出した日ではなくて、レイアと同じ3月3日となった。もう誰が見てもレイアだとは思わないだろうから、ガイも問題ないと太鼓判を押した。


脱出から一年が過ぎ、友達を招いての初めての誕生日を迎えた。





それにしても実年齢から4歳も低くくても通用するなんて!


12歳でもみんなに「小さいね。結構お姉ちゃんなのね」なんて驚かれるの。


わたしがガイの家にお世話になった当初は、わたしも病人扱いで半年間家から殆んど出なかった。あまりに痩せすぎていたので、そのまま家の外を彷徨いたら、かえってガイとアマンダさんが虐待を疑われるし目立つから、回復に努めたの。


そうそう!


アマンダさんの病気はいつの間にか治りました。

調子の良い日が続いて「変だな?」なんて思っていたらしいけど、それが今日まで続いているの。


もちろんわたしが真夜中に浄化魔法のピュアラをアマンダさんに施して、有害物質を浄化したの。

一瞬で完治したわ。


それで得意の縫製や刺繍をしても、指が昔のように動かせる事が判明して、それを生業にしているの。腕が良いから毎日注文に追われて忙しそう!


ガイも体が動くようになって、ポーターだけではなくて、時々剣を振るって魔物と戦っているらしいわ!


本当は危ない事をして欲しくないけど。

結構有名な冒険者だったらしくて、冒険者ギルドから初心者冒険者チームの指導を任されているの。

心構えとかね。


それで何日も家を留守にする事が多いけど、わたしが家にいるから安心して冒険に出れるらしいの!


実はガイの体も長年の酷使でダメージが蓄積していて、間接とか腰の痛みとかが時々凄かったらしい。だからシレッと黙って[キュール]で全回復してあげたの。


今はお金の心配もないし、何処から見ても幸せな家族だと思うわ!






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[一言] 苦しめ… もっと苦しめ… ダルイ一家…
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