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【2】聖女様の屋根裏部屋(2)


床に倒れたまま動かない少女。


数十秒後。


少女の全身がポワーと青白く光る。


そして少女は半身を起こした


「今日も毒が入っている。

しかも一口で死んじゃうくらいに!

ちゃんと加減しないと……本当に死んじゃうよ。

わたしは『いらない子ちゃん』だけど、死んだらマズイのでしょ?」


そして小さく呟いた


「もうすぐ殺されちゃうけど……でも……死ねないのかな?」


少女は握り拳を固く握り締め、決意を新たにした!



「わたしは!生きるためには猛毒でも喰らうわ!」





少女の名前はレイア。


レイア・アスタリス。


アスタリス侯爵家の後継者。


れっきとした貴族のお嬢様だ。

本来は専属のメイドや侍女をつけられ、大勢の使用人にかしずかれるアスタリス侯爵家の一人娘だった。


父はフレイド・アスタリス侯爵。

母はマリア。


美男美女のおしどり夫婦で、娘のレイアはそれこそ蝶よ花よと育てられた。目に入れても痛くない可愛がりようだった。


でも愛情深く育てられたレイアは我が儘放題に脱線することもなく、スクスクと美しく育った。


けれど11歳の時に悲劇が襲った。


崖崩れに巻き込まれて馬車が崖下に転落、両親は死んだ。


その両親に代わり、代理人と称する叔父夫婦が侯爵家に現れた。レイアと同い年の少女も一緒だ。そして我が物顔で采配を仕出した。

先ずは長年使えている侍女やメイドを解雇した。


そしてレイア専属メイドや侍女も同様だ。

代わりに叔父の一人娘シャノンに専属メイドと侍女が付いた。


シャノンは金髪碧眼の美少女だ。


シャノンの父である叔父ダルイは、父フレイドの腹違いの兄。

性格は酷薄で腹黒い。

見てくれだけが金髪碧眼の貴公子だった。


妻はエフレア。

髪は薄いブロンド、瞳は緑。

少し冷たい感じがするが美女であった。


ダルイ夫妻がレイアの後見人となり、侯爵家を乗っ取ったのだ。レイアの父の部屋は叔父の部屋となり、母の部屋と持ち物や貴金属類は全て叔母の物になった。


そしてレイアの物は全て取り上げられて、シャノンの所有物となった。レイアの可愛らしい部屋の主はシャノンとなった。沢山集めたぬいぐるみも彼女の下僕になった。


自室を追われたレイアは代わりに小さな部屋を宛がわれ、食事も別々に取るようになった。


やがてレイアは病気となった。

体がダルくて、ずっと気持ちが悪かった。


そして寝たきりになった。


そして一年が経った頃には、レイアは屋根裏部屋が住まいと成り果てた。


病気なんて嘘だった。

レイアは少しづつ毒を盛られて、弱っていたのだ。

医者は時々往診に来たけどポーズだけで、解毒剤ではない薬を処方された。

ただの小麦粉と塩を混ぜたものだ。


医者もグルで、レイアが日々病気になっていく様を演出したに過ぎない。


叔父夫婦にとってレイアは自分達の生活には完全に[いらない子]だった。皆は……使用人も含めてレイアを『いらない子ちゃん』と呼んでいた。

初期の使用人は全て入れ替わり、もう誰もレイアの味方をする者が居なかった。


それでも何故生かされているかというと、レイアが15歳に成れば成人を迎え、晴れて侯爵家を継いで当主となる資格を得る。

その時に叔父に侯爵家を譲るという署名が必要だからだ。

第三者の立ち会い人が来るので、事前に署名させることは出来ない。


レイアが侯爵家を叔父夫婦に譲る理由は

[病気の為に家名を存続させることが出来ない]

その[病気]の口実の為にレイアは毒を盛られていたのだ。


そしてレイアは今は14歳。

体が12歳位から殆んど成長していないのは、11歳の終わりくらいから屋根裏部屋に移され、満足な食事が与えられず慢性的な栄養失調になったから。


そして後、一月もしない内に15歳の誕生日を迎えレイアは成人となる。

そして侯爵家を叔父に託す署名をすれば、『いらない子ちゃん』は完全に『いらない子』になってしまう。

用済みとなったレイアはいずれ[病死]という名の[毒殺]されるのは目に見えている。


というかシャノンが得意気にレイアに秘密を語ったのだ


「あんた!殺されるよ!いい気味!」


だって!


そして屋根裏部屋に移されたのは、その陰謀がレイアに知られたから、逃げられないようにする為だった。






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