【108】聖女様の初デート(4)
コーヒーがメインの喫茶店は、紅茶のお店と区別するためにカフェと呼ばれているみたい。
それで貴族の方々は紅茶の喫茶店に入り、カフェは庶民が愛用するようなの。
労働者の男性も紅茶の繊細な味よりも、コーヒーのワイルドさが受けるらしくて、今は平民庶民のデートコースの定番化しているみたい
「フェルは詳しいのですね。カフェには良く来られるの」
「正直にいう。初めてだ。でもありきたりな貴族のデートコースなら、これから嫌というほど経験するだろう?だから休日に街に通う騎士達に聞いて、良いお店を教えて貰ったのだ」
──それはわたしの為にってことよね?
わたしに喜んで貰おうと、騎士の皆様に色々聞いているオルフェルを想像してしまった。
さっき「わたしが平民だからですか?」なんて尋ねてしまいそうになったけど、せっかくの好意に水を差すことになってしまうから、言葉を飲み込んだ。
それからカフェを出て、街の中央広場の噴水を見に行った。そこには小さな屋台も幾つか出ていて、可愛らしい棒付きのキャンディなんかを売っていた。
わたしは一つ買って貰って、はしたなく舐めながら歩いた。
砂糖は高級品だから、その塊のキャンディも結構いいお値段だった。この辺りは裕福な人達が多いから、こういう商売も成り立つのだろう。
ちいさな女の子の催促に負けて、お母さんがキャンディを買って上げている。そんなありきたりな光景もオルフェルと共有したら、特別なことのように思えた。
噴水前広場ではバイオリンを奏でる人がいたり、手品をやっている手品師や、芸を披露している大道芸人の人達もいる。
わたしは物珍しく楽しく見学したの。
わたしはずっとオルフェルの腕に絡まったままだった。
それにしてもオルフェルは格好いい。
こんな平民の服を着ていても、人目で貴族って分かるくらい素敵!
わたしも……もっと頑張らなくちゃね!
でも……ふと……我に返った。
いくら平民の服装を着て変装していたとしても、あまりにも可笑しい。たとえオルフェルの正体に気が付かなくても、こんな素敵な貴公子のような男性なら一人や二人振り向いてもいいのに?
気になったので、それとなく聞いてみた
「ああ。その事か?それはね……」
胸元の飾りを指差した。それはわたしにも侍女が付けてくれた
「これは認識阻害の魔法が組み込まれていてね、このブローチを持つ者は他の人から認識して貰いずらくなるのさ」
さらに同じブローチを付けている者同士は、その魔法には掛からないので、わたし達二人だけではなく護衛の騎士の皆様も付けているみたい。
良くみると、みんな同じデザインのブローチをしている。
そう。
今も護衛騎士の皆様はわたし達を守ってくれているの。
数は見たところざっと10名以上はいるみたい。みんな平民の服を着ているけど、騎士をしているくらいだから筋肉質で逞しいからそれぞれがとても目立つの。
騎士のミーアキャンベル様のように、女性騎士もミーアを含めて三人が男性騎士とカップルになっている。
そして変な人や、ゴツい人が近付くと進路を邪魔して、こちらへ来れないようにしている。
わたしが移動中はオルフェルの腕に絡まっているのも、絶対はぐれない為も有るんだ。
わたし達は噴水前広場を後にして、ある路地の前に着いた
「フィーネ。ここは表通りだけど、この建物の間を向けて向こう側へ渡ったら裏通りになる。そこも安全だけど、表通りと比べると万全とは言いがたい。だから絶対はぐれないように……」
「はい。フェル。離れません」
わたしは返事をして、今以上にしっかりとオルフェルの腕に掴まった。わたしの胸がギューと押しつけられているけど、きっと気付かないと思う。
わたしの胸……少女のままだから……。
そんな事無いですよ!
オルフェル!
きっとドキドキが止まりませんよ!
☆
ラフィーネの自己重要感の低さに思わずチャチいれちゃいました(>д<)