【94】聖女様の秘密(3)
「だってレイアは生きていたら19歳か其処らの筈よ。
それに引き換えラフィーネは15歳。それどころか小さいし、もう少し下の年齢と言われても疑わないわ!
全然違うって!」
王妃は手をヒラヒラさせて
「レイアの髪も瞳も深い海のような、聖女様と同じ紺だった筈よ。でもご覧なさいラフィーネは焦げ茶の髪に茶色い瞳。髪は染められるけど生え際は無理よね。わたくしはドレスの試着の時に立ち会ったけど、生え際から同じ髪色だったわ。それにしても瞳は変えようがないでしょう?薄いガラスを目にいれて変える方法もあると聞いたけど、流石にそれなら隠し通すのは不可能よ。それに……死亡時期にはラフィーネは巷で庶民を満喫していたのでしょう?
ラフィーネはレイアではない!それは断言できるわ」
それでもオルフェルの真剣な眼差しは変わらない。
王妃は眉をひそめて
「貴方には確信してるの?オルフェル」
「確信ではありませんが、わたしはもう、それを証明しようという段階に至っています」
そして根拠を話し始めた。
遺体が無いことはもちろん。
失脚したダルイ伯爵は「殺していない!逃げた」と言い張っていること。フリーデン王国側は罪を軽くするために虚偽と見ているが、もしそれが本当だったら?
そして逃げたと主張する時期がレイアの成人直前。その頃に養父の家にラフィーネが現れた。
そして半年間は病気と人に触れ回って、表に一切出なかった。
それを疑問に思った近所の主婦が存在を疑い、唯一出入りしていた冒険者仲間の家族の、その息子に……ラフィーネと同い年の少年に少女の病気の事を聞いたという。
そしたら少年はこう言い放ったという
「あいつ。気持ち悪いんだよ!骸骨みたいでさ!」
それで主婦はよっぽど病気がひどいと思い、少女が外出出来ない理由に納得したという。半年後に養父母に伴われて挨拶に来たときは小さいけど、肉付きは普通の女の子だったという。
国王は顎に手を置き
「骸骨か……骨と皮だけならそう見られても仕方ないな……。だがそれだけでは、偶然の域を出ないぞ。
何より髪と瞳……年齢の説明がつかん。
一歳や二歳差なら誤差ともいえるが、あのラフィーネ王子妃を見て誰が19歳だと信じる?流石に無理があるのではないか?」
国王の言葉に、王妃も納得しているようだ。
だがオルフェルは続ける
「わたしにも髪や瞳の説明はつきません。
けれど年齢なら『もしや?』と思われる証言があります」
「『証言?』誰のだ?」
国王は続きを促す
「担当メイドの証言です。メイドが言うにはレイア侯爵令嬢の食事は一日に一回。パン一個とスープが一杯だけだったそうです。それに飲み水も小さなバケツに貰っていたそうですが、それは身体を拭く水も兼ねていたようです」
国王も王妃も要領を得ないような表情を浮かべている
「そのメイドが言うには、レイアは極度の栄養失調による虚弱体質で見た目も、メイドが担当を始めた12歳の頃から最後に見た15歳まで殆んど成長せず変わらなかったようです」
「何?!」
「それは本当なの?」
二人は身を乗り出した。
もしそれが本当なら、年齢の問題は一気に片が付く。未だに成長が遅いのも、その長年食事を満足に取れなかった後遺症なのかもしれない……。
オルフェルは
「ええ。そう証言があったのは、裁判の公式記録にのっております。それにラフィーネの誕生日とレイアの生まれた日が、全く同じ3月3日です。
これだけ偶然が重なると……聖女はともかく……レイア侯爵令嬢とラフィーネが同一人物だと思えてなりません」
「だが……例えそうだとしても証明しようもない。
未だに王族の御落胤だと名乗り出る者も多い。状況証拠だけをいくら積み上げても、フリーデン王国とその貴族はおいそれと認めんだろう。
肝心のラフィーネ本人があの調子ならば……難しいだろうな」
「そうよね……」
国王はラフィーネの記憶喪失を思った。
王妃も同じ意見だ。だけどもし本人がレイアだと認めても、あの髪と瞳の色では証明されようもない
「ある日。国境へフリーデン側から二人連れの商人がやって来ました。約二年前のことになります……」
オルフェルはまるで物語を始めるような口調で語りだした。
うん。
ジャン君。
女の子にそれはないよ(*`ω´*)
坊主頭にしちゃるよ!