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スライムを仲間に③

 戦いは先手必勝と言う。ならばそれに習い、スライムに接近して魔物辞典を叩き付ける。

 だが、スライムは余裕でそれを横移動で回避して、すかさず体当たりしてくる!


「あっぶなっ!?」


 僕はなんとか魔物辞典を盾にして、ドンッ!と重い一撃をガードする。


「はや!見た目からは想像出来ないくらいに早いな」


 なんとか目で追えるからガードは出来ても、僕じゃ避ける暇なんてない。


「フランさんが言ったこと忘れたの?スライムはレベル1の戦士より素早いステータスなのよ。もっと慎重に行動しなさい!」


 サナからそんな言葉が飛んで来る。

 戦士の平均10の速より上なのは理解してたけど、まさかここまでとは思わなかった。


 だったらあのスピードを武器に戦って来るスライムに対して、僕の攻撃手段は……


「カウンターしかないか…」


 スライムの動きに注目して、その攻撃に合わせて迎撃するカウンター戦法しかない。

 僕に出来るのはその程度だ。


 しかしスライムの平均ステータスは体力7、守2と低い。

 僕の魔物辞典は2の攻撃力。僕自身の力も合わさて7の攻撃力。

 ダメージ計算は引き算形式で7-2で5。

 力加減や当たり所にもよるのであまり参考にならないけど、それでも直撃すれば僕の勝ちと考えて良いだろう。


 仲間にする為、あまり全力で叩き付けることは出来ないが、逆に言えば普通に殴るだけで勝ちとも言える。


「一撃……一撃だけでいい…。当てれば、僕の勝ちだ」


 勝つ。勝ってスライムを仲間にする。その思いを込めて、魔物辞典を盾にして構える。


「来いよスライム!君の攻撃を全て受け止めて、僕が勝つ!」

「―――ぷるるんっ!」


 スライムは僕の言葉に答えるように、より強く僕を睨む。

 そしてスライムは不規則にジグザグ動きながら突っ込んで来て、体当たりしてくる。


 僕はガード、ガード、ガード……ひたすらガードし続ける。

 稀に鈍器で殴られたのではないかと思うほど、スライムの力強い一撃によろめくこともあるが、それでもすぐに態勢を整えてスライムの攻撃を防ぎまくる。

 反撃のチャンスが訪れる、その時まで。


「私たちにとっては何の変哲もなく、大したことない体当たりでも、ホープさんにとっては一撃で瀕死に追い込まれる攻撃……それをああして耐え続けるしかないとは、なんとも歯痒い心境でしょうね」

「……………ホープ…」


 視界の端で、サナとフランさんの心配する様子が映る。

 特にサナは胸を手を当てて、僕の助けに入ろうとする衝動を抑えてるように見える。


 ……あの二人に安心してもらう為にも、僕はこの戦いに勝たなければいけない…!スライムに負けてるようでは、サナからはいつまでもただの幼馴染にしか見られない!

 だからこの勝負……負けられないッ!


「―――焦るな、落ち着くんだ僕…。耐えろッ……耐えろッ……耐えて待ち続けろッ…!」


 やがて、ついにその時が訪れる!

 スライムがしびれを切らしたのか、僕から距離を取って、助走を付けて真っ直ぐ突っ込んで来る。

 あれをまともに受ければ、僕ではただでは済まないだろう。


 しかし!スライムは威力を上げる為に距離を取った為、こちらにある程度の余裕が生まれていた。


(これは……避けられるっ!)


 スライムの全力の体当たりを、僕は横に回避してすかさずスライムに向かって魔物辞典を振り下ろす!


 勝った!と僕は思った……しかし!

 魔物辞典がスライムに当たる直前、突如スライムは一つの身体から二つの身体に分裂し、魔物辞典はその二つの身体の間をすり抜けた。


「え―――」


 突然の出来事に困惑した僕は、分裂して二匹になったスライムから同時に、体当たりをもろに受けてしまった。


「うわぁーーーッ!?」

「ホープーッ!!!」

「ホープさんッ!!!」


 思い切りぶっ飛ばされ、地面に転がる僕。

 痛い……今までに感じたことがないくらい、凄く痛い…。頭がクラクラして、目の前がぼやてる…。

 そのぼやけた視界で、二匹になったスライムがくっついて、また一匹になったのを確認する。


「―――ぷるるんっ!」

「……スライムの……スキルか…?」


「ホープッ!良かった…」

「待っててください。今すぐ回復魔法を…」

「私も、あのスライムを―――」


「手を出すなッ!」

「「!?」」

「これは……僕と、スライムの……真剣、勝負なんだ…。そこで、まだ、見ててくれ…」


 僕を助けようとする二人に待ったをかけて、僕は何とか立ち上がり、スライムと対峙する。


「む、無茶よ!」

「そうです!今回は諦めて、また後日出直しましょう!その時はまた手伝いますので!」


「……たぶん。それじゃあ、意味がないです…」


 僕は魔物辞典を開いて、防御面積をほんの少しばかり広げながら言う。


「それじゃあきっと、スライムは僕を認めてくれません…。今、ここで……僕がスライムに勝たないと、仲間になってくれるとは思えないんです!」


 スライムはきっと、今の僕を気に入ってこうして勝負をしてくれてるんだ。

 ここで二人に助けてもらったり、逃げようものなら……きっと、二度とチャンスをくれない。


「そんな……別にそのスライムにこだわらなくたって、別のスライムでも…」

「……この先、このスライム以外に仲間になってくれようとする奴がいるとは……限らない。だから、僕はこのスライムを、絶対に仲間にする!」

「ホープっ…!」


 サナが涙を流しながら、なんとか止めようと声をかけてくる。

 しかし僕はその静止の声を振り切り、スライムにじりじり寄って行く。


「思い出したよスライム。さっきのは君のスキル、《分裂》だね?その名の通り、身体を二つに分けるスキル。だけどその代わり身体が一回り小さくなって、ステータスがそれぞれ元の半分になる。普通は戦闘で《分裂》はしないらしいけど、君……結構頭がキレるんだね?」

「―――ぷるるんっ!」


 ドヤーとでも言いたげな目をするスライム。

 だけど、《分裂》にはステータス半減以外に、明確な弱点が存在する。


「―――ぷるるんッ!」


 スライムは先ほどと同じように、真っ直ぐ突っ込んで来る。

 僕はそれを避けずに開いた魔物辞典で根性で受け止め、思い切り閉じた!


「―――ぷるんっ!?」


 瞬間、スライムは身動きが取れなくなる。


「《分裂》は、十分なスペースが無ければ発動出来ない。密閉空間であれば自慢の液体を利用して、身体半分出せれば分裂出来るらしいけど……精一杯押さえつけてる今、そんなこと出来るかな?」

「―――ぷ、ぷるるんっ…(汗)」


 一部体が魔物辞典からはみ出してはいるけど、もちろんこれでは《分裂》は不可能。

 身動きも取れないので、スライムは完全に積んだ状態。あとはどうするか僕の思いのままだ。


「初めからこうやって捕まえれば良かった…。今更思い付いて後悔。だけどこれで―――」

「―――ぷるるんっ!?」

「終わりだーッ!?」


 僕はスライムを挟んだ魔物辞典を、地面に向かって叩き付けた。

スライムに7のダメージ!。残り体力1。


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