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スライムを仲間に②

 スライムの森に入って30分。これだけ探してもなかなか現れないスライム。

 サナとフランさん曰く、本来はもっと早く出て来るらしいのだが、なぜか今回に限っては現れる気配が無い。


 ここで僕は思った。もしかして、めちゃんこ強い二人が傍にいるから出て来ないんじゃないか?と。


「という訳で、二人には呼んだらすぐに駆け付けられる所で待っててもらうっていうのはどうしょう?」


「そんな提案を受けれる訳ないでしょ。自分の“体力”と“守”のステータスを忘れたの?体力が12で守が1って、スライムの攻撃でも5以上は確実に受けるわよ」

「それにスライムはレベル1の戦士より、やや素早いステータスをしていますからね。ステータス面でも貧弱な魔物使いでは、いきなりランクEの魔物に襲われるのとほぼ同意義です」


 ランクというのは魔物の強さを表したランクだ。

 上から順にS、A、B、C、D、E、Fとなっている。


 ランクEは、レベル5以上の戦士推奨の魔物だ。ちなみにレベル1の戦士の平均ステータスはこんな感じらしい。


―――――――――――――――――――――――――――


|御業|

戦士:武器の扱いに長けており、前線で敵を引き付けて味方を守り、高い攻撃力でパーティーを支える戦闘のエキスパート。


|ステータス|

Lv.1

体力:24

魔力:3

力:13

守:9

速:10


―――――――――――――――――――――――――――


 頭の良さと運は完全に本人に依存してるらしいので、特に平均はなし。レベルアップすると一応上がったりはするらしいけど、基本的にあまり変動しないらしい。

 スライムはランクFだけど、確かに魔物使いの僕にとっては強敵だ。


「うーん、そっか~…」

「まぁまぁ、そう気を落とさずに。もう少し奥に行ってみましょう。スライムの巣に近くなりますが、私とサナさんがいればあまり危険度は変わらないですし」


「もう!フランさんはホープに危険な目に合わせたくないのか、合わせたいのか、どっちなんですか!?」

「もちろん前者です。ですが、何事も危険を冒さずに成果を得ようなどという考えは、あまりにも甘えが過ぎるというのも事実。サナさん。ホープさんが心配なのはわかりますが、あまり干渉し過ぎるのは本人の為になりませんよ。彼がやろうとしていることは無謀ではありますが、神が未だに魔物使いという御業を授けているのです。昨日ホープさんが言った通り、きっと何か方法があるかもしれません。私たちの知らない、正式な方法が」

「……わかりました…」


 フランさんの言葉に、納得まではしないまでも了承するサナ。

 サナにとって僕は幼馴染であると同時に、本当の弟のような存在なのだろう。まぁ僕はサナんちの子ではあるし、戸籍上は姉弟だと思うんだけど…。

 とにかくそんなサナが心配する気持ちはわかる。僕だって、大切な人とか無茶しようとしたら止めるかもしれない。


 でも……魔物使いの僕は、今は無茶をしないといけない。


「大丈夫だよ、サナ」

「ホープ…」

「僕だって、薬草採取に勤しむ予定とはいえ、冒険者を目指してるんだよ?それに討伐クエストもやることだってあるかもだし、その時には頼もしい仲間が欲しいじゃん?魔物使いなんだし!」


 僕はサナに少しでも安心してもらおうと、にかっと笑顔を作る。


「……はぁ~…。わかったわよ。思えばホープは、自分が納得したり満足するまで、何言っても聞かない子だもんね…。いいわよ。あんたがスライムを仲間にするまで付き合って……ッ!」


 サナが言い終わる前に、近くの草むらがガサガサッと音を立てる。


「おや?ようやく来たようですね」

「全く……待たせ過ぎなのよ、最弱の魔物のくせに…」


 二人は一応と、武器を構えると同時に無色透明な液体に、一つ目がチャームポイントの丸っこいぷるぷるとした物体が現れる。

 そう……この見るからに謎な物体こそ、僕たちが探していたスライムだ。


「―――ぷるんっ…?」

「おー!やっと出会えたーっ!おー……図書館の図鑑でも見たことあるけど、実物はこんなにも可愛いのか…。抱きしめたい!」


「ちょっと。わかってるでしょうね?ホープの要望通り、私たちは手は出さないんだからね。慎重に行動して―――」

「スライム!お願いがあるんだけど」


「て聞きなさいよ!しかもそんなほぼ無防備に近付かないの!」

「まぁまぁサナさん。ここはホープさんに任せましょう。なにやら、作戦がおありのようですので」

「う~…。冒険者になるんだったら、あのマイペース過ぎる行動を少しは控えて欲しいわ…」


 サナは滅茶苦茶心配しているのを横目に、僕は魔物辞典を盾にしながらスライムにじりじりと寄っていく。


 ……大丈夫大丈夫と言ってきたが、やはり相手は魔物だ。いざこうして対面してみると、恐怖が湧いてくる。

 これは、命を賭けた戦い。それを自覚すると、心臓の音がやや早くなっていくのを感じた。


「―――すぅーーー……はぁーーー…」


 しかし、魔物という存在も僕たちと同じ生き物なんだから、きっと行けるはずだ…。

 僕は深呼吸をして、心を落ち着かせる。


(ビビっちゃダメだ、ビビっちゃダメだ…。恐怖は、相手にも伝わってしまう…)


「……スライム。僕の……仲間になって欲しい」


 僕が心の底から、スライムに仲間になって欲しい、一緒に戦って欲しいという思いを込めて、そう言う。

 するとスライムはまるで驚いたような表情……いや目をしながらぶるぶると身体を震わせる。


 皆が固唾を吞んで見守り、スライムはしばらくしてから、目をにこっとしながらピョーン!ピョーン!と飛び始める。


「せ……成功…した?」


「な、なに!?あんなスライムの挙動、初めて見た…。それにまさか、ホープの……人の言葉が通じたって言うの?も、もしかして、本当に…?」

「いえ!安心するにはまだ早いようですよ!」


 しかし安心したのも束の間。

 スライムはきりっと僕を睨み付け、頭(恐らく)をぶんぶんと前後に激しく揺らし始めた。


「えっと……これはどういう挙動?図書館の図鑑にはこんな行動するって書いてなかった気がするんだけど?」


 一応じりじりと後退しながら二人に聞くと、サナは首を横に振り、自分もわからないとジェスチャーする。

 しかし口元に手を置き、少しばかり考えていたフランさんが、口を開く。


「もしかしたら……仲間になって欲しければ、自分と戦えと言いたいのでは?」

「え?……そ、そうなの?」


 フランさんの言葉に対しスライムは、にこっとまるで肯定するように笑った。


「……なるほどね…。ていうことは、僕の考えは半分当たったってことかな?」


 魔物だって知性ある生き物。無理矢理従わせられるなんて嫌なはずだろう。

 だから今まで戦って弱らされたり、調教という名の、魔物にとっては拷問に等しいことを受けたりしても、決して従うことはなかった。


 ならばと、僕は屈服させる道ではなく、仲間になって欲しいとお願いすることにした。

 結果、戦うことまで想定外だったけど、まぁそれは流石に甘いか…。


 ああ…。お小遣いはたいて両手杖を買っておけばよかった。

 これからはあまり能天気に考えるのは控えよう。思ったより命に関わる。


「まぁいいや!なんとかなるでしょ!」

「―――ぷるるんっ!」


 僕は後ろの二人にもう一度だけ手を出さないで欲しいとお願いして、僕は魔物辞典を構え、スライムはきりっとした目で前傾姿勢で構える。

 僕とスライムとの一騎討ちが、幕を開けた。

スライム「―――ぷるるんっ!」

訳『この人間頭がおかしいぜ!?魔物に、しかもスライムのオイラに心の底から仲間になって欲しいって本気で思ってんだからよ。だがそういうの、嫌いじゃないぜ…。ならばオイラと戦え人間!オイラは自分より弱い奴には従わねぇ主義でよ……あんたが勝てば仲間になってやらぁ!』


スライムにだって魔物としての矜持とプライドはあります。


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