スライムを仲間に①
翌日。
どうもおはようございます。最弱の魔物使い、ホープです。
今日は手始めにスライムを仲間にしようと、街の門へと向かっています。
ちなみに僕の住まいはここ王都エメロンで、サナの実家で一人暮らしです。昨日はサナもいたけど。
おじさんとおばさん……つまりサナのお父さんとお母さんは外国へお仕事に行っています。一人だと寂しかったので、昨日はサナがいて幸せでした(丸)
「ちょっと待ってよホープ!本当に魔物を仲間にしに行くの?」
「もちろん。だって神様がくれた御業だよ?まずはやってみないことにはわからないでしょ」
「ほぼわかりきってることでしょ?無謀もいいところよ、そんなの…」
街から出て、さっそくとスライムを仲間にしに行こうとする僕をサナは引き留めようとする。
今まで誰も魔物を仲間にしたことが無いから、サナが心配する気持ちもわかる。
「ほら。サナも自分の仕事があるでしょ?僕のことはいいから、依頼を受けてきなよ。スライム相手なら、やられることはないだろうし」
「昨日はホープの御業の儀だったのよ?そのお祝いを本当は今日盛大にやるつもりだったんだから、冒険者の仕事はお休みよ。ていうか!スライムでも危険な魔物に変わりはないのよ!?そんな能天気に考えていいものじゃないのよ、戦いっていうのは」
サナは2年前に御業の儀を受けて、戦士を授かっている。
その日のうちに冒険者登録をして、今ではそこそこ有名な冒険者らしい。センスがあったのか、すぐにレベルを上げて王都から旅立った時は本当に寂しかったのを憶えてる。
背中の大きい斧が一見すると細身なサナに不釣り合いだが、大きい得物を振り回す女の子ってなんかロマンを感じるから好きだよ僕。
「大丈夫大丈夫、なんとかなるって。根拠はないけど」
出口の南門が見えて来た辺りでそんなことを言うと、前から昨日お世話になった人に声をかけられた。
「なら尚更、君を放っておく訳にはいかないでしょう?根拠のない自信は、すぐに身を亡ぼすことになりますよ」
そう言ったのは、大聖堂の寝室で看病してくれた僧侶さんだった。
確か名前は……
「フランさん!貴方からも言ってくださいよ。魔物を仲間にしに行くのは無謀だって」
「そうそう、フランさんだ。いやー本当に女の子みたいな名前ですよね」
「貴女も女の子なのに、男の子みたいな名前をしてるじゃないですか」
「「え?」」
「え?」
あ。ふーん。またそういうのね…。
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「これは大変失礼致しました!」
「いや何も頭を下げなくてもいいですよ。僕ってば自他共に認める美少女顔ですので。間違われるのは慣れてます」
「自分で認めちゃうんだ…」
「何度も可愛い娘、妹って言われてればそりゃあね、自覚はするよ」
そう。僕は金髪碧眼がチャームポイントの童顔男子なのだ。だからよく女の子に間違われる。
これで謙虚に「可愛くないですよ~」なんて言ったら敵を増やすことになるっておばさんが言ってた。たぶん経験があるんだね。
「それはそうと、なんでフランさんがここに?もしかして僕に気でもありました?」
「成人したとはいえ、まだ子どもと言っても差し支えない相手にそんな気は起きませんよ…」
む。何気に失礼なことを言われた気がするけど……まぁいいや。
「私がここであなた方を待っていたのは、スライムを仲間にしに行くのを手伝う為です。私のパーティーは今日、定休日でしたので」
「え?……それは僕としてもありがたいですけど、なんでそんなことを?」
「ホープさんはわかっていないようですが、昨日のあれを聞いた側からすれば、死にに行く宣言をされたも同然なんですよ?それを放っておけるほど、薄情ではありません」
へぇ~。昨日も思ったけど、フランさんって優しいんだな。
赤の他人なんだし、普通は放っておくと思うんだけど。
「でも、なんで南門に来るってわかったんですか?やっぱり僕に気が―――」
「はいはい、変に話をこじらせる様なことを言わないの…。昨日ホープがスライムとコボルトを仲間にしようって言ったんでしょ?だったら明らかに戦闘経験の無いホープが“スライムの森”に近い南門から出て行くのは予想が付くわよ」
「ああ。なるほど」
サナの指摘に納得した僕。
それにしても悪いなぁ…。僕のことなのに二人の先輩冒険者を巻き込んでしまうことになるなんて…。しかも休日に……って、まだ僕冒険者じゃないんだけど。
「本当にいいんですか?サナはともかく、フランさんまで」
「いいんですよ。男に二言はありません。それに、私は魔物に苦しめられてる人たちを助けたくて、冒険者になったのです。なので、先ほども言いましたが、目の前で死にに行く宣言をした貴方を放っておけません。性分、みたいなものですね」
「なんか人生損してそうな性分ですね」
「あはは……耳が痛いです」
それはそうと、戦士のサナだけでなく、僧侶のフランさんまで手伝ってくれるとは……なるほど、運43は伊達じゃない。
「いやいやいやいや!行く前提になってるけど、私はまだ反対なんだからね!」
「あ。そうだった。でもどっちにしろ付いて来るんでしょ?」
「う…。う~~~…もう!今日だけだからね!上手くいかなかったら、潔く諦めること!」
「そこをなんとか、1ヶ月だけでも挑戦を許してくれませんか!」
「ダメ!今日だけ!明日にはダンジョン都市に戻るんだからね!チャンスは今日だけ」
「しょぼ~ん」
「あはは…。賑やかなパーティになりそうですね」
―――――――――――――――――――――――――――
南門を出てから、徒歩で10分。
ここはスライムの森と呼ばれており、名前の通りなぜかスライムしか生息していない変わった森である。
少々浅めの森で、新人冒険者のレベル上げに向いてるので国がわざと残している森だそうだ。
「とうちゃーく!スライム出てこーいっ!」
神様から貰ったスキルでもある魔物辞典を召喚して、そう叫ぶ僕。本当に分厚い。武器判定になってるのも納得の重量感。角で殴れば人一人くらい簡単にヤ(・)れそうなくらい。やらないけど。
凶暴な魔物とか出てくるから、本来なら叫ぶなんてご法度だが、ここはスライムしかいない森。二人も強力な味方がいるのだから、危険は無いに等しい。
むしろ出て来てくれないと困るので、敢えて叫んでる。ちゃんと二人から許可を取ってるよ。
「こんな浅いところじゃ出てこないわよ…。もう少し奥に行かないと会えないわ」
「む?そうなのか?」
「そうよ。ほぼ液体のスライムだって知性ある魔物なんだから、身を守るために浅いところでなんて―――」
「おーい!スライムー!仲間になってーーー!」
「人の話を聞きなさいよ!あと一人で勝手に行かないの!」
「あっははは。懐かしいですね。ホープさんを見てると、初めて冒険に出た時のことを思い出します」
二人は後ろから見守る様に付いて来てくれている。
僕からそうお願いしたのだ。最初は自分一人だけの力で戦って、スライムを仲間にしたいから。
なので危なくなったら助けてもらうという形だ。実質戦闘は僕だけだと思った方がいい。
まぁなんとかなるでしょ、と能天気に考えながら進み続けた。
フラン(昨日はサナさんの胸を躊躇なく揉んでいたので、余計に女の子だと勘違いしてしまった…)
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