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神は不平等で自分勝手

ホープは少し声が高めのイメージです。

「―――ープ。ホープ!いないのですか?ホープ!?」

「んあ?」


 誰かに呼ばれておはようございます。ホープです。

 いやーよく寝たぁ~。いつの間にか御業の儀は僕の番だったらしい。

 座りっぱなしって結構疲れるんだね。お尻痛い。


「いないのか…。でしたら、次の―――」

「はーい。僕でーす。僕がホープです」


 僕は急ぎ立ち上がり、新成人やその保護者、そして優秀な人材を確保する目的で来ている冒険者たちに注目されながら、壇上へと向かう。

 神父は僕の態度が癪に障ったのか、眉間に皺が寄っている。


「ごめんなさい。座ってたら眠くなっちゃって、さっきまで寝てました~」

「それは感心しませんね。ここはエメロン大聖堂、即ち神の御前であるも同然。しかも神聖な御業の儀の最中だというのに―――」

「神様どうか、戦士とか魔法使い程の強い御業じゃなくていいので、安定して平穏に暮らせる御業をくださいませ。出来ればペットも買えるくらい」


 僕は神父の説教を無視して、神様にそう願う。

 まぁ最後のは完全におまけ。薬草採取だけじゃペットを買えるだけのお金なんて貯まらない。


「話を聞きなさい!そして神に対して無礼ですよ!?」

「えへへ~……ごめんなさい」

「……………」


 まるで反省してない僕に血管が浮き出るほどまで怒った様子を見せる神父。


 いや~。ぶっちゃけ御業になんて興味ないし。

 早く帰って明日にでも冒険者登録して、のんびり薬草採取の毎日を送りたいのだよ。

 魔王軍との戦争が1000年も続いてる今、当然薬草の価値は高く、1日2日過ごすだけならそれだけでやっていける。

 冒険者になるには御業を授からないといけないから、こうして御業の儀に参加してるんだけどね。


 だけどほとんどの人が薬草採取に満足出来ないから、出世を目指してゴブリン討伐とか危険なクエストに手を出し始める。

 僕にはその野心がよくわからないよ。


「ゴホン!まぁいいでしょう…。神は寛大です。信仰無き者にも平等に、御業をお与えになります。では、両膝を付いて神に祈りなさい」

「え?さっき()りましたけど?」

「あれを祈りとは言いません!良いから膝を付き、首を垂れて神に祈るのです!」


 なんか注文が増えた気がするけど、まぁいいや。

 僕は言われた通り両膝を付き、首を垂れる。なるべく様になるように両手を合わせて、神への祈りを開始する。


 そして暫くすると、声が聞こえてきた。耳からではなく、直接頭の中に響くような感じで。


―――――――――――――――――――――――――――


『はっはっは。愉快愉快。ソナタのような不遜な人間は初めてだ』


 ―――誰?何の声?

 ―――ああ……ダメだ。何故か頭が、ボーっとしてて。


『いや、気にするでない。無理に答えなくとも良いぞ。これはほとんど一方通行の念話だ』


 ―――ああ、そうですか。じゃあ寝よ―――ZZZ


『……………はーはっはっはっ!愉快愉快!気に入ったぞ人間。ソナタの名前を覚えておこう。……ほう。ホープというのか。望みは……安定した平穏な暮らし?しかもペット付き?はっはっは!なんとも贅沢な人間だ。だが良いぞ良いぞ、人間は程々に強欲でなくてはな。ソナタの望みを叶えてやろう』


 ―――ZZZ


『………というか、本当に寝とるなコヤツ…。ふぅむ。ここまで不遜だと、清々しいな。面白い、ますます気に入った。ちょくちょく様子を見に来てやるとするか。どれ、ソナタら人間が言う御業を、授けてやろう。さて、どれが良いか…』


―――――――――――――――――――――――――――


「……………」


「お、おい。あのホープって奴は大丈夫なのか?御業の儀が終わる気配がないぞ」

「神様への信仰が無さ過ぎて、御業が貰えないとかじゃないのか?」

「おいおい、そんなことがあんのかよ」


 ホープが祈りを捧げ始め、30分が経過していた。

 通常、御業の儀は1分程度で終了する。終了の合図として煌びやかな光が身体全体を覆うのだが、一向にホープにそれが訪れない。

 これにはホープに良い感情を抱かない神父も心配していた。


(まさか、神はあまりに不遜な態度を取るホープに、お怒りに…。もしそうなら、一体どうなってしまうのだ!?)


 一瞬、声を掛けたい衝動に駆られる神父。

 しかし御業の儀の最中に声を掛けたりするなどの行為はご法度となっており、儀式が終了するまで、ただただ待つしかなかった。

 誰もが息を呑み、見守っていた。


「ホープ…」


 そして同じくホープを心配する、冒険者の少女が一人。

 燃えるように赤い髪を持つ少女は、ホープが無事に御業の儀を終えるのを祈る。


(お願いします神様…。どうかホープに、御業をお与えください…)


 そうして時だけが過ぎ去り、遂に少女の祈りが届いたのか。

 ホープの御業の儀開始から1時間。ホープの身体に、煌びやかな光が覆い始めた。


―――――――――――――――――――――――――――


 時は遡り、1時間の御業の儀にあったこと。


『ふむふむ、なるほどな。ホープは生まれて間も無く両親が他界。幼馴染のサナと共に姉弟のように育ち、物心が付いた時から周りが予測不能な言動が多い、超絶マイペースな性格だったと…』


 神はホープの記憶を探り、ホープに最適な御業が何か、愛用の伊達メガネを掛けながら考えていた。


『戦士はこの華奢な身体じゃ当然合わない。かと言って魔法使いや僧侶では、ホープが望む平穏な生活が訪れん。将来は戦争に引っ張りだこだ』


 魔王軍との戦争が未だに続く現在。高火力が期待される魔法使い、回復魔法や補助呪文が得意な僧侶では、大量の収入で将来安定した暮らしが出来るが、平穏などという暮らしからは程遠い。

 さらには生きて帰れるかすらわからない戦場だ。公表されてないだけで、一体どれくらいの人間が犠牲になったことか。


『それにペットか~…。薬草採取だけじゃ厳しいだろう。育てるだけならスライム討伐も一緒にやれば良いが、ペットを買う時の金が貯まらんだろうに。野良を拾う気でもないようだし』


 神は平等。などと言うが、実際のところはかなり不平等な存在だ。

 神はその人間にあった御業を与えこそすれ、その後の人生など全く考えてはくれない。その者が望む程の力など与えてはくれない。

 全員にそんな対応をしているのであれば、ある意味平等ではある。しかし神というの気まぐれで、時々気に入った人間がいればそれに肩入れする性質であった。


 今こうして、神がホープにどのような御業が良いか。どんな力がホープの望む生活を送らせてあげられるか。

 気に入った者には過保護になってしまうくらいに入れ込んでしまう、悪癖のような物が神にはあった。それも人間の金銭事情なども細かく調べて。


 ―――ZZZ


『はっは。神がせっかく悩んでやってるというに、すやすや寝おってからに。よし!決めた。ある程度の討伐クエストが可能な御業で良かろう。本人もそれが望みっぽいし。仲間(ペット)については、まぁさっきから御業をあげてやれと五月蠅い嬢ちゃんが助けてくれんだろう。いや、いっそ助けてやれと促すか……うむ。そうしよう』


 ご覧の通り、神は気まぐれで割と自分勝手な存在であった。

予め言っておきますと、神が直接関与しますがチート一切無しで進めます。

この世界のシステムだけで乗り切ります。

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