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サイコロ男

作者: 八十島そら

 サイコロ男は、生き別れた俺の弟について、手がかりを知っている! 俺が育った施設で、スタッフが話していたんだ。得意の狸寝入りが、こんなところで役に立った。

 俺に弟がいたことに驚いた。親の顔も知らずに施設で生活していて、天涯孤独なんだと思っていたから。どうして、弟も一緒に置いてくれなかったんだ。そいつだってどこかで、兄の存在を聞いたら、会いたいにちがいない。俺は施設を出ていった。本当の家族と飯を食う方が、格段にうまいに決まっている。

 サイコロ男は、頭がでかいサイコロだから、そう呼ばれているらしい。全身はタイツでぴったり包まれているそうだ。そんなやつが、街中で歩いていたら絶対に目立つ。馬鹿な俺にでも見つけられるさ。待っていろよ、サイコロ男。とっちめて弟のことを吐かせてやる。



 サイコロ男を捜して二日目、腹が減ったから安くてボリュームのある飯を出す店を見つけて、入った。客が多いので、相席になると店主が言った。俺には慣れたことだった。注文してからすぐに、向かいの席にスーツの痩せた男が座った。

「係長……なんで、あんな姿になったんですか…………サイコロ男なんかに」

 普段なら、ぶつぶつ言っていて気持ち悪いから無視してやるのだが、やつの名前が聞こえたので、スーツの男の肩をつかんだ。

「詳しく話せ」

 スーツの男は、見た目通りおどおどして俺の言うことをきいた。元上司がサイコロ男に転身したらしい。近いうちに、昇任試験なしで課長になることが約束されていたが、突然退職届を出して、変な趣味に走ったんだとOLどもの噂から知ったのだという。

「サイコロ男は、どこに」

「し……深夜、南の公園で……会える……そうです」

 出来たてのカツ丼をかきこんで、スーツ男に支払いを押しつけて公園に走った。



 公園でサイコロ男を待ちぶせして六時間、俺は何もしていなかったわけではない。可能な限り聞き込みをしていた。応じてくれた人々は、何らかの形でやつに関わっていることが分かった。

「サイコロのおじちゃんは、わたしのびょうきをなおしてくれたんだよ」

「サイコロの兄ちゃんは、わしに金を恵んでくれた」

「あいつは、私との結婚を断ったのよ!」

「あの人は……僕の猫を、切りつけたんだ」

 サイコロ男、お前は、いったい何者なんだ……?




 《ラジオドラマ「サイコロ男」は作者失踪のため、打ち切りになりました》

あとがき(めいたもの)

 改めまして、八十島そらです。


 数学で習う、確率は、得意な問題と苦手な問題があって、楽しいのだかつらいのだか。感嘆符が、確率では「階乗」の意味を持つのですね。計算していて、不気味な笑いを浮かべる八十島でございました。


  

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