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交差点

作者: ひろゆき
掲載日:2021/06/20

 雨上がりの交差点。

 信号が青になるのを待っているだけ。

    それだけのはずだったのに……。

 雨上がりの静かな交差点。

 赤で止まった向かいに、あなたの姿。

 もう会うことはないと、どこかで忘れようとしていたのに、見つけてしまう。


   偶然が怖い。


 交差点の先のあなたの姿に、心が迷う。

 流れる車。

 途切れるあなたは笑っていた。

 懐かしい笑顔なのに、寂しくなってしまう。

 あなたの隣に、女の子が楽しげに笑っているから。


 わかっているよ。

 もう、別の道を歩いているんだって。

 もう、恋人じゃないとわかっているのに……。


   ねぇ、どうして……?


 ざわめきが強くなる。

 あなたの笑い声が聞こえる気がした。

 でも、それは記憶のなかで木霊しているだけ。

 懐かしい? どうなんだろう。

 わかっているよ。あなたは違う空を眺めているんだって。

 それでも、信号は赤のままでいてほしいと願ってしまう。

 どうして?

 体が逃げたいと、悲鳴を上げていく。

 どうしたらいいの?


 風に問いかけたとき、あなたはこっちを見た。

 気づいたんだね……。

 あなたが嘘をついたときの顔を浮かべた。

 悔しいのに、そんなことは覚えているんだね。

 信号が青になって、 

     人が歩いていく。


 歩きたくないよ。

 このままどこかに逃げ出したい。

 でも、ダメなんだよね。

 逃げちゃダメなんだよね。


 あなたは優しい人。

 困らせたくないんだよね、私を。

 ううん。隣にいるカワイイ恋人を。


 もう、別々の道、歩こうとした。

 こんなことわかっていたのに、なんで悲しいんだろう……。

 時間はあの日から止まっていないって自信があったのに、

 強がっていたのに、

 時間を止めていたのは私なのかな。


     だけど強がらせて。

        私は大丈夫なんだって……。

 

 交差点を進んでいく。

    あなたとの距離が近づいていく。

  それなのに離れていく……。


 わかっている。私はただの通行人。

 強がらせて。大丈夫なんだって。


 それでも、

 あなたはすれ違い際、顔を背けてしまう。

     耐えられない……。

 すぐそばにいた。

    それなのに、一番遠くに感じてしまう。

   臆病に負けて言葉が散ってしまう。


 カワイイ子だよね、恋人。

    でも、私とは全然違う……。

   これって嫌味だよね、ただの……。

    それでも……。


 交差点を渡る。

 さっきまであなたがいた場所。

  そこにあなたはいない。


 振り返らない。

 もう、あなたとは違う空を眺めているから。

    でも、偶然が嫌い。

 強がらせて。

   私は大丈夫なんだって。


 流れる景色。

     頬をなでる風。

   雨の匂いが苦しい。


 空を眺めた。

 もう雨は止んでいるんだね。

  止んでいたんだよね。

   ……それなのに……。




                    了

 偶然が怖い。

  ただ、交差点を渡るだけだったのに……。

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