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交差点

作者: ひろゆき

 雨上がりの交差点。

 信号が青になるのを待っているだけ。

    それだけのはずだったのに……。

 雨上がりの静かな交差点。

 赤で止まった向かいに、あなたの姿。

 もう会うことはないと、どこかで忘れようとしていたのに、見つけてしまう。


   偶然が怖い。


 交差点の先のあなたの姿に、心が迷う。

 流れる車。

 途切れるあなたは笑っていた。

 懐かしい笑顔なのに、寂しくなってしまう。

 あなたの隣に、女の子が楽しげに笑っているから。


 わかっているよ。

 もう、別の道を歩いているんだって。

 もう、恋人じゃないとわかっているのに……。


   ねぇ、どうして……?


 ざわめきが強くなる。

 あなたの笑い声が聞こえる気がした。

 でも、それは記憶のなかで木霊しているだけ。

 懐かしい? どうなんだろう。

 わかっているよ。あなたは違う空を眺めているんだって。

 それでも、信号は赤のままでいてほしいと願ってしまう。

 どうして?

 体が逃げたいと、悲鳴を上げていく。

 どうしたらいいの?


 風に問いかけたとき、あなたはこっちを見た。

 気づいたんだね……。

 あなたが嘘をついたときの顔を浮かべた。

 悔しいのに、そんなことは覚えているんだね。

 信号が青になって、 

     人が歩いていく。


 歩きたくないよ。

 このままどこかに逃げ出したい。

 でも、ダメなんだよね。

 逃げちゃダメなんだよね。


 あなたは優しい人。

 困らせたくないんだよね、私を。

 ううん。隣にいるカワイイ恋人を。


 もう、別々の道、歩こうとした。

 こんなことわかっていたのに、なんで悲しいんだろう……。

 時間はあの日から止まっていないって自信があったのに、

 強がっていたのに、

 時間を止めていたのは私なのかな。


     だけど強がらせて。

        私は大丈夫なんだって……。

 

 交差点を進んでいく。

    あなたとの距離が近づいていく。

  それなのに離れていく……。


 わかっている。私はただの通行人。

 強がらせて。大丈夫なんだって。


 それでも、

 あなたはすれ違い際、顔を背けてしまう。

     耐えられない……。

 すぐそばにいた。

    それなのに、一番遠くに感じてしまう。

   臆病に負けて言葉が散ってしまう。


 カワイイ子だよね、恋人。

    でも、私とは全然違う……。

   これって嫌味だよね、ただの……。

    それでも……。


 交差点を渡る。

 さっきまであなたがいた場所。

  そこにあなたはいない。


 振り返らない。

 もう、あなたとは違う空を眺めているから。

    でも、偶然が嫌い。

 強がらせて。

   私は大丈夫なんだって。


 流れる景色。

     頬をなでる風。

   雨の匂いが苦しい。


 空を眺めた。

 もう雨は止んでいるんだね。

  止んでいたんだよね。

   ……それなのに……。




                    了

 偶然が怖い。

  ただ、交差点を渡るだけだったのに……。

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