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定刻の鐘  作者: IkKz
2/2

秋、夜明け前。

うっせえ!カピバラ投げんぞ!

    /)─―ヘ

  _/     \

/    ●   ●丶

|        ▼   |

|        亠  ノ

U ̄U ̄ ̄ ̄U ̄U

 ヽ(´・ω・)ノ

   |  /

   UU

 秋空というのは、見ていてなんとも清々しい。

真横から、そっと肌を撫でる秋風に、少々の肌寒さを感じる。先月まで相棒の如く使い倒した半袖シャツも、いつしか埃をかぶるようになっていた。


 “新“生活委員長の池岡にとっての「大切な一年間」が今、終わろうとしていた。


 副会長として、大した成果も上げることができず、「何をしたか」と聞かれて、はっきりと答えられる仕事もしていない。何か1つ挙げるとするならば、「生徒会室の掃除」程度だろうか。何にせよ誇れる働きぶりでなかったのは確かだ。


 「春眠暁を覚えず。」なんてことをどこかの誰かが言ったそうだが、実際のところ、眠いのは春に留まらない。こんな大切な()式典であっても、ー 昨日の夜更しのツケ ー 強烈な眠気が彼を襲う。


 校長の話の長さなんてものは年中無休である。もう既に数回聞いたことのある恒例談、「石積み職人」のお話を丁寧に聞き流す。流石に立場上寝るわけにはいかず、歯を食いしばって目を開け続けた。


 3ヶ月前、選挙に敗れた彼は「ただの人」になるはずだった。


それでも委員長のオーディションに出たのは、副会長としての一年間が、とにかく楽しかったからに他ならない。


 政治の世界においては、倒した政敵は蹴落とすのがスタンダードであるが、生徒会においてはそうでないらしい。いやはや、そうしなかった新会長のご厚意に感謝すべきかもしれない。


 なにはともあれ、こうして新たなスタートを切れることになったのだ。


 勿論、この頃はまだ彼は何も知らなかった。くす玉を割れなくなることも、時計を投げつけられることも…。


 義務付けられている以上、学欄を脱ぐことは許されない。少々身体が火照るが、我慢せねばならない。


 儀式の際には制服の統一が必要となる。前日が冷え込んだ影響もあり、今年の交代式は冬服統一で行われることとなった。(もっとも、一人だけ連絡が行き届かず、中間服でやってきた新役員もいた。)


 周りを見れば、新たな仲間の顔がある。少し緊張しているのだろうか、顔が強張っているように見えた。いや、見えてほしかったのだろう。「一年間の経験」という実際のところ何も役に立たないアドバンテージを持っていることを、再確認したかったのかもしれない。


 委員長任命の儀に入った。何、緊張することはないだろう。「皆から見られるのは緊張する」などいうが、実際は誰もステージなど見ていない。不真面目な生徒を心から嫌う池岡であったが、こればかりは致し方ないと感じる。


 今年も校長名義の任命書を、会長が読み上げるという謎行為が行われる。「勘弁してくれ…」と思うテキトーぶりであるが、いかんせん勘弁してくれるはずもない。これから受ける理不尽に比べれば、こんなものなんてことないだろう。


「学校とは、小さな社会である。」


 この言葉を耳にした人も多いと思う。当然、多くの人が集まり、共同生活を営むわけだからこれは「社会」にあたるだろう。そして社会には「癌」がつきものだ。


 その「癌」はなんと学校に遅れてくるという。しかも、正当な理由はないとのことだ。これらを撲滅するために抗がん剤として処方されるのが、生活委員長、池岡というわけだ。


 この抗がん剤がどれだけ通用するか、周囲はまだ知らない。一番わかっているのは抗がん剤自身である。


 抗がん剤はわかっていた。3年生の遅刻がとんでもない数になること、止めたところで逃げられること、それによって我々が怒られること。使いまわし品であるが故の理解である。


 3年生が卒業するまでの辛抱だ。


 そう早くも自分に言い聞かせる。勿論、その「卒業」のカタチを、抗がん剤はまだ知らない。


眠くて草。

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