変わってしまった兄
やっぱりあいつなのか。
お、お前だと言うのか.......
つい先月の卒業式の後のことが、まだ俺の脳裏からはこびりついて離れない。
―――「ごめんなさい。今の達也くんをどうしても好きにはなれない。それに私、他に好きな人がいるの.......。気持ちは嬉しいけど。ごめんなさい」――――
美優紀、何でだよ.......
お、お前は俺のことが好きだったんじゃないのかよ。
昔から、ずっと俺のことが。
―――「ごめん。確かに昔のアタシはアンタのことが好きだったと思う。昔のアンタのことを.......。でも今はもう別に好きな奴がいるんだ。今のアタシは別に好きな奴が。嬉しいけどごめん」―――—
絵梨花、お前もだ......。
好きだったって何だよ。好きだったって.......。
意味がわからねぇよ。
今の俺? 昔の俺?
同じだろうが。
いや、むしろさらに良い男に成長しているはずだろうが
俺はこの星城家のできる方の双子の兄。
友達の質も、人脈も、要領、ルックスも頭も、もちろん人気も。全てにおいて俺があいつに負けている点などないはずだ。いや、ない!
そ、その俺からの告白を何であいつ等は......
何で......
他の女たちと仲良くしていたのが駄目とでも言うのか?
いやいや、あんなの遊びじゃないか。見たらわかるだろ。
本気じゃない。完全に遊びだ。つきあいだよ。
それともあの時のこととかか?
いやいや、あれもお前たちと話したいって先輩がいたからちょっと紹介しただけじゃないか。別に美優紀や絵梨花にとっても悪い話じゃなかったはずだ。
あの時はあらかじめ俺の女たちだってこともちゃんと伝えて置いた。
い、色々とあったみたいだし、詳しく何があったのかは誰も教えてくれないから俺もよくわからなかったけれど
無事に帰ってきているんだから別に問題ないじゃないか。
何だ。何だよ。
俺に何の不満がある?
あいつが持っていて、完璧な俺にないものなんて....ないだろうが。
くっ........修二
何であいつだけは、あいつだけは俺の思い通りにならない。
あ、挙句の果てには絵梨花や美優紀たちまでも.......
きっと、きっとあいつ等も修二のせいでおかしく......
そうだ。変わったのは俺じゃない。
絵梨花、美優紀、お前等の方だ。
俺がその洗脳を解いてやる。
必ず解いてやる。
こんなおかしいことが、あっていいわけがない。
絶対にないんだよ。
何でどうでもいい物ばかりが俺の周りに集まって。
本当に大事なものがあいつの.......
いつからだ。いつからこうなった。
ふざけるな。
絶対に。絶対に。取りもどす。
罰として何もかも全て奪い尽くした上で変わってしまったモノを全て.......