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微笑みの悪魔


 ぼ、僕は何て不遇な運命を背負った男なんだ......。


 終わりのホームルームが終わって帰ろうと昇降口で靴を脱いでたら、いきなり背後から星城くんが追いかけて来て.......

 死ぬ気で逃げてきたと思ったら今度は別の奴等に絡まれている。

 

 本当に何で僕ばっかり、僕ばっかりこんな......


 「あれっー、山田じゃん。何? その真っ白のブレザー。お前もしかして成開なのか? やっぱり頭いいねー」

 「ん? 誰だよ。こいつ」

 「へっへっ、こいつか? こいつは俺が中学の時に可愛がってやってた奴だよ。頭はいいけど弱っちいからずっとボディーガードしてやってたんだよ。()()のボディーガード料でな」

 「へぇー。確かにお坊ちゃん感半端ねぇなー。はっはっは」


 「の、法田くん......」

 ボ、ボディーガード.......。

 

 「何? 今日はゲーセンに何しに来たのよ。もしかしてお前、高校でも一人なの?」


 「い、いや、その......欲しいクレーンゲームのフィギュアが入荷したって聞いて......」

 「へぇー、なら軍資金もたんまり持ってきたんだ? ったく本当お前はしゃーねぇーなー。安心しろ。いくらお前が高校でぼっちだったとしても引き続き俺らが友達になってやるからな。嬉しいだろ?」


 「い、いやその......」

 「あぁ? 嬉しいだろ?」


 「う、うん.......」

 「はっはっは、本当お前は幸せだぜ。俺らに()()()()()の格安料金で守ってもらえるんだから。お前みたいな奴がゲーセンに一人なんて危なっかしすぎるからよぉ。なぁお前らもそう思うよなぁ」

 「はっはっは、違いねぇ」

 「おう、事情はわかったぜ。俺もこれからお前のことしっかり守ってやるからな。ふははははは」


 さ、最悪だ。

 一番会いたくなかった奴等にこんなに早く.......

 それに知らない奴まで増えて.......


 「ほら、今日は5000円で面倒見てやる」


 け、結局、高校になっても僕は中学の頃と........


 「ほら、何してんだ。早く出せや!」


 くそ......。くそ.......。何でまた......って、あれ?


 「おいコラ、舐めてんのか山田?」


 「い、いやない。ぼ、僕の財布がない。何で?」


 ない。本当にない。左ポケットに入れていたはずなのに。

 な、何で.......


 「おい、お前マジでいい加減にしろよコラ。しょうもない嘘ついてんじゃねぇぞ。おい」


 「って、あっ、あ、あっ、あ.......」


 「は? 何お前? めっちゃ震えてるじゃん。そんなビビるぐらいなら早く出せよ。何だよその足。おい皆見ろよこいつ。はっはっは、内股でちびりそうだぞ。おい」

 「うはっ、何だこいつ。てかどこ見てんだよ」

 「やべー、こいつおもしれー」


 「そ、そこ.......」

 

 な、な、何で君が.......


 「あぁ? テメェどこ指さして.......って、あ、あ......」




 せ、せ、星城くん........!?




 ぼ、僕をここまで追いかけて......

 な、何を、僕が君に一体何をしたと言うんだよ....

 本当に何を......



 「おい、山田。これお前のだろ。何で逃げんだよ。手間かけさせんなよ。俺もこう見えて結構忙しいんだぞ。」




 し、しかも何だよ。その不気味な笑みは

 それに僕の財布が、な、何故か彼の手に......

 あ、あ......怖い。怖すぎる。殺される。

 とりあえず殺される。何で


 「な、なんでお前が、おい、き、聞いてねぇぞ。山田!!! おい!!!」


 「あ? 誰こいつ? 確かに顔は相当なもんだけどよぉ、所詮見てくれだけだろ? ワンパンだよ、ワンパン!!!」

 「ちょ、や、やめとけ竹本!!!いくらお前でもそいつは!!!」

 「オラよぉおおお!!!!!!  って........へ?」


 せ、星城くんの頬にあのガタイの良い男の拳がめり込ん......で? 

 あ、あれ? 微動だにしてな....い?


 「おい、痛いじゃねぇか。何しやがる」


 って、あっ


 「ぐべらっ!?!?!?!!! ぐふっ!!!」


 ひ、人が、あ、あの、巨体が宙に舞ったと思ったらゴロゴロと地面を転がって.......


 「おいおい冗談だろ。そこまでの力で殴ったつもりはねぇぞ。そんな一発で伸びられたら俺が悪いみたいじゃねぇか。一発は一発。やり返しただけだ。悪く思うなよ。おい」


 「お、おいマジで聞いてねぇ。聞いてねぇぞ。山田ぁ!!! お前がこんな男の財布やってるなんて聞いてねぇぞ!!!」

 「や、やべぇ、マジでやべぇ、違う。俺は違う。関係ないんだ。こいつにそそのかされて......。って、な、何でお前までその白のブレザーを着て.....」

 「わ、悪かった。こ、こいつが、今、お、お前の財布やってるなんて知らなかったんだ」


 「は? 財布やってる? 何言ってんのお前?」


 え、ど、どういうこと。

 星城くんって一体.......


 「お、おい法田。こ、こいつ何だよ。何だよ。おい」


 「そ、そうか、お前も隣町から来ているから知らねぇのか。こいつ、こいつとだけは関わっては駄目だ、じ、冗談抜きで殺されっぞ。な、なんてたって、中学の時にこいつはあのここらで最凶と言われたあのチームをたった一人で壊滅まで追い込んだ.....」


 か、壊滅? 最凶? チーム?


 「と、とにかくお前は黙ってろ。お、俺が何とかする。絶対に竹本みたいに手をだそうなんて思うなよ。絶対にだぞ。と言うか、ピ、ピクリとももう動くな。こいつは虎よりも危険な男だ。気分しだいで人を簡単に〇ってしまいやがるぞ。特にこいつが笑みを見せた時、その時は一番関わってはいけねぇ狂暴な時だ。こ、こいつが()()()()()()と一部界隈で呼ばれる所以だ.....」

 「え? お、おい、さっきこいつ不気味な笑みで微笑んでたぞ。おい」


 あ、あの法田くんの足が産まれたての小鹿の様に.......


 「お、おい。マジで俺達が悪かった。許してくれ。もうお前の財布のこいつには二度と、一切、絶対に近づかねぇ........。な、なぁお前ら」

 「も、も、もちろん」

 「て、手をだすわけがねぇだろ。い、命がいくつあっても足りねぇよ」


 や、やっぱり星城くんは見た目通りの危ない........


 「い、いやいや本当にお前ら何を言ってんだ。真剣に意味わかんねぇよ。俺を一体なんだと思ってんだ......。俺は今まで殴られたから殴り返して来ただけで自分からは一度も仕掛けたことなんてねぇぞ。それにチームを壊滅? そんなつもりはないし、あの時は奴等があいつら二人に手をだそうとしたから.......ってまぁこんなことお前等に弁明したところで何にもならねぇか」


 「で、い、いくらだ。いくらで許してくれる」

 「は? いや、いくらも何も。別にそっちがそれ以上何もしてこねぇ以上は何もしねぇよ」


 「ひっ.........あ、あ」


 って、あ、逃げた。

 あの法田くんたちがまさかのあんなみっともない姿で 


 逃げた........


 「おらよ。何かよくわからねぇけど。もう落とすなよ。チェーンとかでポケットにつけとくぞいいぞ。チェーンとかで。ったく、何だよ。あいつ等、せっかく友好的に俺が笑ってやってるのに。マジで意味わからねぇ。なぁ」


 「あ、う、うん。ありがと.......」


 「って、確か。今日俺の欲しいクレーンゲームのフィギュアが入荷される日だったけ。お、ちょうどいいじゃん。じゃ、そういうことだから、またな。くっ、最近はようやく絡まれることも少なくなってきたと思っていたのに。またかよ」


 「あ、う、うん」


 さ、財布が戻ってきた.......。

 でもきっと.......


 って、あれ? 

 1枚、2枚、3枚、4枚........

 小銭もじゃらじゃらと


 そ、そのまま?

 見る限り全く減ってない........


 嘘?

 そ、そのまま返ってきた......だと?


 せ、星城くんって一体.....

   

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