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双子妹の聖女 美優紀


 ったく、昨日はマジで疲れたぜ。


 入学初日から一体何人の女が勝手な理想を胸に俺の元に来て、勝手に落胆して帰っていったよ......。

 数えきれないぞ。うぜぇ。うざすぎる。


 それにしても俺でアレだからな、本人はとてつもないことになってたんじゃねぇか? まぁ昔からのことだし、もう嫉妬も生まれないんだけどな


 とりあえず今日はどうか勘弁してくれよ。本当に。

 いくら俺でもそれなりに精神にはくるんだから。

 いくら鍛えられてメンタル鋼の俺でもよ。 


 「おはよう!」

 「ん? って、あぁ美優紀か。おう」


 で、何だ。


 何で無言で俺のことをじーっと見てくる。

 俺の顔に何かついてるとか? 


 「おい、マジで何だ」


 「ね、ねぇ、修くん。何か気が付かないかな?」

 「あ? 何か?」


 ん? 何か気づく?

 

 「ふふ、私、いつもと違わない?」

 「どこが?」


 いつも通りの美優紀っぽいが。

 何が言いたい? そのすぐに他人に騙されそうな屈託のない笑顔も、偽善者でお人よしなオーラ全快のふわっとした癒し()風雰囲気もいつもと何も変わらないぞ。

 ん?


 「もう! 髪だよ。髪。何でわからないの! 怒っちゃう。怒っちゃうよ私!ぷんぷんだよ!」


 「あ、あぁ、そういうことかよ。それは変わったな。って何を怒ってんだよ。い、痛い。痛くないけど痛いぞ。とりあえずポコポコやめろ。うぜぇ」

 「だめ。気が付かなかったお仕置きだよ。何がうざいよ。もう!」

 「わかった、わかった。悪かったって。普通に気はついてたって。そんな簡単な質問だとは思わなかっただけだ。何をそんなに」

 「むぅー、本当に修くんは」


 な、何だよ。その頬っぺたを膨らます感じ。

 そ、それに近ぇよ.....。顔。

 あと、その髪型は普通に駄目だろ........。

 その髪型は......


 「おい、俺は悪くないと思うけど。その髪型は多分あいつの好みではないぞ。どうした。達也の好みは昔から散々レクチャーしてきてやっただろうが」

 「ふふ、そう? 間違えちゃったかな。私的には気に入ってるんだけどな。って、あっ、またラノベ。ほんと修くんは顔に似合わずラノベ好きだよねー。特にそのシリーズ」

 「べ、別にいいだろうが。顔は関係ないだろ。顔は」


 俺は自信をもってオタクだぞ。自信を持って。

 あと間違えたくせに何でそんなに嬉しそうに笑ってるんだよ。

 イカレたか? 

 

 「って、あ!その表紙の女の子の髪型。私の髪型と一緒だ。全く一緒!」

 「ん? ってよく見たら本当だ。うわ、すげ。マジで一緒じゃん」

 「どう? 似合ってる? ふふっ」

 「お、おお、マジ似合ってる。実写かよ」


 やばい。似合いすぎ。

 これは確かハーフアップと言うやつか。

 

 「記念に一枚だけ撮ってもいいか」

 「うん。いいよ。ピース。ピース」

 

 はい。表紙と同じく綺麗な笑顔をいただきました。

 別にどうこうするわけではないけれどつい衝動的にって.......違うだろ。

 おい......。


 「おい、美優紀。真剣な話、達也のことを考えたらやっぱりその髪型は悪手だ。戻した方がいい。ふざけてんのか? お前らがちゃんとやってくれないといつまで立っても俺が面倒くせぇままじゃねぇか」

 「むぅー、悪手ではないと思うけどな。せっかく可愛くしてもらったのに」

 「あ? 何言ってんだ。どう見ても悪手だろ。あいつの好みの真逆と言っても過言ではない。って、あれ絵梨花はまだ来てないのか? もうそろそろHR始まるぞ」

 「あれ? 本当だね。 多分寝坊だね。絵梨花はお寝坊さんだし」


 「いやいや、お前ら同じところに住んでいるんだし普通に起こしてやれよ。入学二日目で遅刻はまずいだろ」


 お前ら双子は恋のライバルとはいえ、俺らと違って仲が悪いわけじゃないんだから。


 「え? あれ? 言ってなかったけ」

 「ん? 何を」


 何をそんな小動物みたいにちょこんと首をかしげて


 「私たち今は別々のところに住んでるんだよ」

 「は? 別々?」


 普通に初耳


 「うん。結構前からパパとママが別居しているの。それで家事が得意な私はパパと一緒に。絵梨花はママと一緒に住んでるんだ」

 「そ、そうか........」


 って、ことは........


 「うん。でも別に離婚とかは考えてないみたいだから大丈夫だよ。離婚しないための別居。だからそんな顔しないで。ふふ、最近のパパとママ、また以前の様に仲良しに戻ってきている感じもあるし!」

 「お、おう。そうか。悪い」


 よくわからないけど、そうか。

 まぁ俺の家も再婚みたいだから色々あったのかもしれないけれど。物心つく前から今の状態だからそこらへんはどんな顔をしたらいいのかわからない。

 小さい頃は美優紀たちの両親にも結構お世話になった記憶もあるから複雑は複雑だけど。

 でもとりあえず、美優紀の顔や話を聞く限り、そんなに悲観する様なことでもなさそうだし。まぁ大丈夫なんだろう。

 仲も戻ってきているみたいだしな。

 俺が色々と考えることでもない。


 「でも、これはまたマジな話しだけどよ。まだお前ら実際のところ達也に告白とかは考えてないのか? 高校に入ってさらにあいつのことを好きな奴等は増えるだろうし、やばいんじゃねぇの? まぁお前らが負けるとも思わねぇけど。俺としてはそろそろ早く決着つけてもらって楽になりたいんだけど」


 俺が真に考えることはこっちだ。

 とりあえず、面倒くさいこのポジションからはもういい加減に抜け出したい。

 いつになったら抜け出せる。

 

 「んー、告白は考えてないかな」

 「は!?なんでだよ」


 ま、また何をお前は........

 あんなに俺が頑張って面倒見てきてやったのに告白は考えてない? 


 「うん。それが私たち双子のルールだから」

 「ル、ルール?」


 ちょっと意味がわからない。

 どういうことだ。正直、あいつを見る限りでは今のお前らならもう射程範囲内には普通に入ってるだろ。

 何でだよ.......


 「う、うん。私たちからは告白はしないの。その代わりね、どちらかが告白されたらさ。その時はもう一方の方は潔く身を引く。そういうルールかな」


 「な、なんだよそれ.......」

 聞いてねぇよ.........

 

 「それに私達の好きな人はほら、多分。私たち両方から告白されたら多分、両方ともフってしまう人の様な気がするし。優しすぎる人だから」


 「いやいやいや.......。」


 あんなに幼いころから途切れることなくずっと好きなんだろうが。

 そんな綺麗ごといらねぇんだよ。

 

 確かにあいつはいくら変わっちまったとはいえ、美優紀や絵梨花には変わらず優しい......。俺に対してはくそ嫌な奴になっちまったけどな。


 だからとりあえず早く告れよ。

 両方フラれたらフラれたであいつならうまく........

 って、いや、それはそれでムカつくか。

 俺の今までの労力を考えるとそれはちょっと......

 でもこのままずっと抜けられないのはやっぱり.......


 「だから私もこの高校生活は全力でアピールしまくるよ。悔いは残したくないもん。ふふ、だからこれからもよろしくね。修くん! こ、個人的には絵梨花よりも私の方にもうちょっと時間を割いて欲しいかな、なーんて思ってたりして......」


 「って、いや、何だよ。その上目遣い。面倒くせぇよ。俺にそんなことしても意味ねぇだろうが。俺は全力は出さねぇ。気が向いたときだけ。気が向いたときだけだ」

 「ふふ、そんなこと言って。何だかんだで修くんは力になってくれるもんね。今までだってそうだったじゃない」

 「う、うるせぇよ。離せ。そんなことねぇよ」


 しかも何だよ。何でそんなベタベタと

 もう俺にそんな気は完全にねぇ

 本当にそんな気はないから。別にドキッとなんかしてねぇ

 してねぇから。一ミリもな.....


 「あれれ? 修くん顔赤くない?」

 「あぁ? あ、赤くねぇよ。バカか。無駄口叩いてる暇があったら早く絵梨花と決着つけろ!!!」


 美優紀でも絵梨花でも、とにかくどっちでもいいから早く告るか告られろ。


 「ふふっ、うん。頑張るね。ま、修くんがいつも教えてくれるラノベの知識は正直、役には立たないけどね!」

 「は? な、何言ってんだ。お前。あ、あれはラノベの知識とかじゃねぇよ。お、俺の人生の経験的な.......」

 「はいはい。とりあえず頑張るから修くんも友達づくり頑張ろうね。ほら、あそこの3人組もラノベとかアニメ好きみたいだよ。声かけてきなよ」


 ん? あそこの......あぁ


 「ひ、ひぃ、パシリは勘弁してくださいー!!!!」

 「ぼ、僕貧乏なんでお金はありません!!!!!」

 「こ、殺されるー!!!!」


 いや、おい.......


 「何か、何もしてないのに全速力で教室から出て行きやがったんだけど.......」

 「ご、ごめん。頑張ろう......ね。い、いつかきっと修くんの良さをかわってくれる男の子も現れるよ。きっと。いつか」

 「くっ.......」


 ただ、ただ、俺は笑っただけだろうが.........

  


 

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