EX ニート・クエスト
「ぷはあ!? ここは!? 私の家!?」
渋子はゲームの世界から、自分の家に戻ってきた。
「ははは・・・・・・やっと、やっと、戻って来れたんだ。私。」
無事に現代社会に戻って来れた渋子は感極まって涙を流す。今までの平凡な日常とゲームの世界での過酷な体験が渋子の脳みそや体の中で一つになり、恐ろしいくらいの震えを感じる。
「そうだ! お姉ちゃん!」
渋子は日向を探しにリビングに行く。
「zzz~。zzz~。zzz~。ガガガガガガ~。」
姉の日向はパソコンに向かいあいながら、いびきをかいて寝落ちしていた。
「お姉ちゃんー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「はい!? 締め切り遅れてすいません!? 許してください!? ごめんなさい!? ごめんなさい!?」
渋子の号砲に寝ていた日向が寝ぼけながら目を覚ました。
「あら? 渋子?」
日向はゲームの世界にダイブした妹の姿が目の前にあるので驚いた。
「う・・・・・・う・・・・・・お姉ちゃん!」
渋子は感極まり涙を流しながら姉の胸に飛びつく。
「うええええええーん!?」
怖かったのだろう。心細かったのだろう。何も他のことを考えられずに渋子は日向に泣きじゃくった。
「おかえり。渋子。」
「ただいま。お姉ちゃん。」
妹は姉がいる喜びを、姉は妹がいる喜びを噛み締めて安らいでいる渋野姉妹。
「アハッ! アハッ! アハッ!」
「アハッ! アハッ! アハッ!」
渋野姉妹名物、アハ会話である。これでコミュニケーションが取れるのも姉妹の友情である。
「ということで、私の仲間たちを復元して頂戴。お姉ちゃん。アハッ!」
「いいわよ。それぐらい、天才ゲーム・プログラマーの私に任せなさい! アハッ!」
「やったー! さすが、お姉ちゃん! アハッ!」
妹の頼みを聞いて、ゲームのバックアップデータから渋子の仲間たちをよみがえらせようとする日向。
「しまった!? バックアップ取るのを忘れてた!?」
「ええー!?」
そう、この物語の設定上、姉の日向は天才ゲーム・プログラマーであるが、カワイイうっかりさんなのだ。ゲームのバックアップを取らないことなど普通によくある。
「どうしてバックアップを取ってないのよ!? お姉ちゃんのバカー!」
「ごめんなさいー!?」
姉に襲い掛かる妹。
「はあっ!? もう私はソウちゃんたちには二度と会えないんじゃ!?」
引っ越しをして仲の良い友達を失った様に、渋子は不安に怯える。
つづく。




