ニート・クエスト
「我々の倒す敵は、ログアウトを盗んだ盗賊ニートを見つけて、捕まえて、ボコボコにして、ログアウトを取り戻すことです! 分かりましたか?」
「は~い。」
渋子の家の作戦会議。渋子の話にソウちゃんたちはダルそうに返事をしていた。
「どうしたの? みんな? なんで、そんなにやる気がないの?」
「だってラスボス創作編に私たちは出ていない。だからみんなグレている。」
「それにラスボスを倒して、ログアウトを取り返したら、渋子姫は現代世界に帰ってしまう。そんなの嫌だ。」
渋子の仲間たちは、出番が無かったことと、渋子と別れることになるのが悲しくて子供の様に拗ねていた。
「あんたたちって、可愛いのね。アハッ!」
渋子は仲間たちのことを心から愛おしく思った。
「それでは、ログアウト盗賊のニートを倒しに、ニートの世界に全員で行くわよ!」
いよいよ物語は佳境に入り、ラスボスのニートとの全面対決が始まる。
「・・・・・・。」
しかし渋子の仲間たちからは返事がなかった。
「どうしたのよ!? みんな!?」
「嫌だ。終わりたくないよ。」
仲間たちは私的な理由から渋子に協力することを拒否していた。
「わ、分かったわよ! なら私一人でもラスボスを倒して、ログアウトを取り戻してやろうじゃない! 本当に子供みたいに駄々をこねて情けない! あんたたち、それでも男なの!?」
「・・・・・・。」
渋子は挑発するように強い口調で言ってみるも、ソウチャンたちから何の反応もなかった。
「私は渋子と共に行こう。」
「アーちゃん!」
ソウちゃんたちが冒険をボイコットする中、渋子と一番多くクエストに挑んだ聖剣エクスカリバー持ちのアーサー王こと、アーちゃんが立ち上がった。
「裏切り者!」
「良い恰好し!」
仲間からアーちゃんに対して厳しい言葉が飛ぶ。
「しょうがないだろう。か弱い渋子一人を戦場に送る訳には行かんだろう。」
「アーちゃんありがとう。」
「がんばって、ログアウトを取り戻そう。」
渋子はアーちゃんを仲間に加えた。
「では、諸君! 行ってきます!」
渋子とアーちゃんはニート・クエストに旅立って行った。
「ふん! アーちゃんは分かっているのか? ログアウトを取り戻したら、渋子はいなくなっちゃうんだぞ!?」
ソウちゃんたちは不貞腐れて動こうとはしなかった。
「あんたたち何を言っているの?」
その時、天才ゲーム・プログラマーの姉の日向からの神の声が聞こえてくる。
「この物語は10万字書き終えたら終わりよ?」
「なにー!? 謀ったな!?」
「こうしてはおれん!? 直ぐに渋子の後を追わねば!?」
「出番が減る!? 急げ!?」
ソウチャンたちは慌てて渋子の後を追った。
つづく。




