ラストQ 死ではなく、生きたい
「アハッ! 良いことに気がついた! アハッ!」
妹の渋子は何かに気がついた。
「私はデス・ゲームなんかじゃなくて、人を生かす物語がしたい! アハッ!」
渋子の最終目標は、デス・ゲームの逆で、生・ゲーム、ライブ・ゲームもありだと気づいた。
「ゲームで死んだら本当に死ぬだから、ゲームで生き返ったら本当に生き返るでいいんじゃない? アハッ!」
自称、天才。それが渋子である。
「で、できる!? 我が妹ながら末恐ろしい!?」
天才ゲーム・プログラマーの姉の日向は渋子の成長に舌を巻いていた。
「生ゲームに超能力少女を足して、サイキックで未来過去の時間を飛び越えることができるのは確実ね。」
時空スキルと物語の展開を同時に思いつくくらい、今の渋子は絶好調だった。
「過去の世界に行って、英霊の魂を蘇らせる? そして現代に連れて来て、イケメン高校生でハーレムを作る? 面白いような、面白くないような? そしてお約束の現代に来たお惚け英霊さんの生活風景。」
世界で日本だけは日常生活を描いた平和な物語がウケているらしい。
「なんでこんなのがウケるのか? それは日本が平和だから。豊か過ぎて夢の国の住人が日本にはたくさんいる。お金持ちと貧しい人は夢を見る。お金があっても無くて、皆ストレスを抱えながら生きているってことね。」
悩みと言わずにストレスという所が現代人らしい渋子である。
「サイキックで悩みやストレスという課題を解決する物語にすれば、こんな世知がない残酷な時代でも皆生きていけるかしら?」
悩みやストレスが課題。その課題を乗り越える。物語とは、その周回、テンプレートの繰り返しである。だからつまらなし面白くない。新しいキャラクターであったり、新しい世界を投入しなければいけない。
「人間って大変よね。出生の秘密、生まれた環境、経験した出来事、形成される性格。人間全員が純粋なきれいな人間ではない。純粋に汚れた人間もいるはず。」
「ねえねえ、渋子。このデス・ゲームの最後の展開を考えようよ!?」
その時、日向が声をかけてくる。
「出来たじゃない。」
「え?」
「出来たじゃない。この物語のラスボス。純粋な汚れた人間よ。アハッ!」
「じゃあ!? ふざけたフリして新作を考えているように見せかけて、真面目にラスボスを考えていたのね! さすが! 私のカワイイ妹だ! アハッ!」
「もっと言って! アハッ!」
「渋子カワイイ! アハッ!」
「アハッ! アハッ! アハッ!」
「アハッ! アハッ! アハッ!」
笑っていれば何とかなる、それが渋野姉妹。




