聖女たちの宴 誕生、アンリミテッドファイターズ
決戦が始まる。どういう結果だろうが、人類は甘んじて受けいるしかない。火星の子、チアはどうしているのだろうか?
帝国軍と火星高空艦隊との艦隊決戦が始まった。
そこには無数の惨劇が起きた。両陣営の主力同士が死力を尽くして戦うのだ。
数で勝る帝国軍は、力でねじ伏せようと正面からの強行突入を図り、質でカバーさせようとする火星軍は3段構えで迎え撃つ形となった。
帝国軍の第1機空師団約270隻に及ぶ高空艦艇と190隻の第2機空師団が中央突破しようと衛星ソリティアの火星軌道から降下してくる。さらに後続の第3艦隊170隻あまりが続く。対する火星高空艦隊400隻は防衛線を構築、火星軍のほぼ主力がこれに当てられた。
結果は双方の主力艦を失い、戦力もほぼ半分が消失するという悲惨なこととなった。壮絶な艦隊戦は、帝国軍が第1機空師団の旗艦べギオンと第2機空師団の旗艦アテネを墜とされ、総数630隻の艦艇のうちおよそ350隻以上が墜とされるか行動不能に陥った。
火星高機空軍は少数ながら善戦した。しかし旗艦バルデーン含む180隻が墜ち、シスターズが3人死んだ。数の上からは火星側に優勢とみるべきだが、シスターズを少なからず失ったことは、火星側にとって大きな痛手となった。なぜならシスターズとは一人ひとりが特異な存在であり、それぞれが重要な位置を占めているからである。ひとりでも失えば、火星にとっては重大な損失になるのだ。
この空戦にチアももちろん参加した。アゾレアの艦隊とともに縦横無尽に戦った。いや、帝国軍の損失のおよそ20パーセント近くをチアが墜としていたのだ。信じられない戦果だ。だが、左門という優れたナビゲーターを欠いた戦空機では限界があった。もっと効果的な打撃能力があるはずだ。シスターズとは異能の集団なのだ。
すぐに結論が出され、実行に移される。
「新しい空戦機?」
チア・ロシュテン少尉はアゾレアのブリッジに呼び出され、命じられていた。
「そうだ。戦時編成ながら、新部隊の創設を行う」
艦長のフライム・モーガン大佐は重々しく言った。隣にはシスターズのクレティリアがいる。
「あたしから説明するわ、チア。あたしたちは戦略高空機団としてアゾレアを旗艦にサラトガ、ティラミス、ゆうなぎ、ゆきかぜ、そしてウラヌスを含めた機動艦隊を結成したの。その目的は敵艦隊の殲滅」
クレティリアが恐ろしいことを言い出した。モーガン大佐は最初それを聞いたとき、不可能、というより妄想に近い話だと思ったくらいだ。当然のようにチアが反応する。
「殲滅は簡単だけど、ナビも機体もなしじゃできっこないよ、ねえさん」
簡単なのかよ、と、モーガン大佐は心の中で突っ込んでいた。この子はやはり普通じゃない。できるとかできないじゃない。条件さえあれば、殲滅は簡単なんだと言っているんだ。たしかに信じられない戦果をあげている。チアなら不可能じゃない。だからできるだろう。だからこそ、信じられない自分が情けないと思ってしまう。自分の枠の外にある、常識とか経験とかがまったく通用しない世界。軍人として、そこに囚われてしまう苦痛を、なぜ自分は受けねばならないのか。
「それはこれから言うわ」
クレティリアが重々しく言う。すべての艦隊に映像通信が送られる。
「全艦に。シスターズのクレティリアです。あたらしい世界のドアを開けましょう」
クレティリアが言う言葉に、全ての艦隊の乗員が固唾をのんで聞き入る。
「アゾレアを旗艦とした編成は変わらない。サラトガ、ティラミス、ゆきかぜ、ゆうなぎはそのまま。しかし装備の一新と、新たに潜空戦闘艦ウラヌスを加え戦略高空機団として戦術を超えた新たな戦略的機動部隊としての創設を宣言する。指令はあたし、クレティア・ロシュテンが。アゾレアは艦長のフライム・モーガン准将。大佐から昇進だ。そして重要なのは、新打撃軍として新たな部隊を創設する。チアはそのチームひとつの隊長になるの」
「チームって?」
チアが聞いた。
「シスターズによる高空機動部隊。事実上、史上最強のアンリミテッドファイターズができるのよ。その一つの部隊を任せるわ」
「ナビゲーターは?あたしひとりじゃ飛べないわ」
チアは極端な方向音痴なのだ。火星に地軸はない。したがって北も南もない。計器が使えない。地形を理解できないと地形図も読めない。すべてにおいて特異な能力を持ったチアだが、欠点は存在する。今は負傷しているナビゲーターの左門はそういうチアを、いつも空を見ていやがる、と言った。地表など興味ないのだ。
「安心して。人間的なエスコートはできないけれど今のあなたなら充分だと思うわ。これがそのナビゲーター。AIのキャロット。仲良くしてね」
映像の中に小型の機械が映し出されていた。これがナビゲーター?大丈夫なのだろうか。チアは思った。
「大丈夫よ、チア。シスターズが作ったのだから」
クレティリアはそう言い切った。
「チア・ロシュテン。本日をもって大尉に昇進し、第1戦隊戦空機6機の指揮を命ずる」
「はっ」
チアが敬礼をした。シスターズの命令は絶対だ。疑問も反対も許されない。計り知れない頭脳と能力、それをつなげる統率力。そしてその根底には強い絆がある。どんな人間にも介入できない彼女たちだけの鉄の絆があるのだ。
「チア。駐機場に新型があるわ。見てらっしゃい」
クレティアは囁くように言う。愛情あふれる姉の言葉。周りの士官たちも胸に去来するものがあった。
「うん」
チアがセンターブリッジから退出すると、クレティリアは編成を告げる。チアには説明しなくてもいい。新型機を見ただけでその戦略目的まで瞬時に理解し、編成も自身で組み立ててしまう。それに合っていなければ間違った編成になるということで、逆に試されているようなものだと、クレティリアは思った。
今まで見たことのない機体だった。
鋭利な小さい固定翼がある。全体は直線的で、クサビのような形をしていた。
「すげえだろ」
振り返ると整備主任のロッキがいた。後ろには航空主任のハインダー少佐がいる。
「F444ウエッジストームだ。最高速度マッハ5、キチガイの檻(La Cage aux Folles)ってあだ名がある」
「気に入ったわ」
チアは嬉しそうに機体を撫でている。
「コクピットの後ろに何かいる」
目ざとくチアが言う。ハインダー少佐がそれに答える。
「AIのキャロットシステムだ。方位感知、索敵、あらゆる分析を瞬時に行う。伝達は脳神経に直接アクセスする生体トランスミッションによる。われわれだったら脳が焼き切れる電荷がかかる」
『よろしく、チア』
何者かがチアの脳に直接語りかけた。
「こちらこそ、キャロットくん?そうだ、名前を付けていい?」
『かまいませんよ。変なやつじゃなかったら』
「ユイは?」
『それはダメです。マザーの名前です』
「そうだった。じゃ、ゼア。強そうじゃない」
『ゼア。よい名です。パスコードが合致しました。あなたの提案により、AIの論理システムが進化します。処理終了。すべてのシステムがあなたのもとに統合されました。火星全てのAIがあなたのためにあります。力を行使しますか?』
「それって何ができるの?」
『火星の支配です。強いというコードから導きだされました』
「いらん」
『では保留で』
チアの言葉だけでは何のことだかわからないロッキだったが、ハインダー少佐はわかっていた。そして身震いしたのだ。この目の前の少女が、恐らく火星の絶対的な支配者になる選択を迫られ、拒否した、ということを。しかしハインダーは知らない。拒否したものの、それはAI自身の総意によって保留されていること、を。
うしろの方にやや大型の戦空機があった。
「FB506メテオライト、戦闘爆撃機だわ」
駐機場にぞろぞろとスマートな耐圧飛行服を着た女たちが集まってきた。その中の背の高い飛行士が言った。
「あたしはシスターズのエルメダ。第2戦隊ワイバーンの指揮官よ。よろしくね、チア」
「よろしく、エルメダ」
「同じくワイバーン戦闘爆撃隊のテスよ」
「メイ、です」
「マドンナよ。ようこそ、おチビちゃん」
「みんなよろしく」
チアはひとりひとりとハグしていく。
「わたしは重爆撃機第3戦隊サラマンダーのクイーンだ。機体はB110スーパーノバよ」
「あたしは副操縦士のチロル。チア、よろしくね」
「今度操縦させてね」
「ありがとう、チア。でもおことわり」
「チア」
ファラの声だ。
「どうしたの、ファラ?」
「どうしたも何も、こんどあたしはウラヌスの艦長よ。機動団に先行して索敵と哨戒をするのよ。もちろん戦闘もね。こっちは副官のモンティーヌ。知ってるでしょ。大尉に昇進したわ」
「モンティーヌ」
「チア。作戦主任として索敵・分析を担当するわ。見失わないで、しっかりついてきてね」
「うん」
チアは嬉しそうだ。どういうわけだかチアはモンティーヌを実の姉のように慕っている。シスターズではないのに、だ。そういうことでモンティーヌはアゾレアの中では準シスターズ扱いされていた。中尉なのに准将並みの扱いなのだ。
「あたしたちは第4戦隊、コードネームはゴースト。文字通り幽霊みたいに神出鬼没なのよ。そしてこの子たちがあたしたちの目になるの」
ファラが3人の女の子を紹介した。
「偵察戦闘隊ホークアイの隊長、マイです。こっちはクレラ、こっちはユリコ」
「よろしく、みんな」
「はい、おねえさま」
「くすぐったいわ」
「隊長」
美しい少女たち5人が並んでいた。
「チア、はじめまして。わたしたち第1戦隊、ストームトゥルーパーのメンバーで、わたしが2番機副官セラです」
「3番機アイラです」
「4番機ピュリです」
「5番機ミキです」
「6番機サブリナです」
「みんなよろしくね」
「はい、よろしく、チア」
のちにマッドシスターズと呼ばれ、敵味方に恐れられる姉妹たちが誕生した。
クレティリアが来ていた。一緒にあの亡命皇子ギアがいた。ほかにイエーガー少佐とトビー中尉がいた。
「チア、編成はどう?」
「すばらしいよ。これなら十分だよ」
「そう、よかった」
正直、クレティリアはホッとした。試験に受かった気分だ。
「あの人たちは?」
チアが聞いた。
「かれらは今後、わたしたちと行動を共にする同志たち。反乱軍なんて、聞こえが悪いもの。でも、彼らの希望でコードはレべリオンというの。自虐趣味なのかしらねえ」
クレティリアは可笑しそうに笑った。美しい笑顔だとチアは思った。
「ギア」
チアが飛んできてギアに臆面もなく抱きついた。ギアは目を丸くした。側にいたイエーガーは、なにか別の世界のことのように見えていた。
「これから一緒に飛ぶんだって?もう、楽しみね」
「う、うん。よろしくたのむよ」
「お姫さま、お手柔らかに」
「あら、イエーガーさん、トビーさん、これからよろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
トビー中尉はチアの戦い方をまざまざと見て、心の底から怖れ、尊敬していた。いや、崇拝していた。もはや宗教に近いだろう。そういうものが何人もいるのだ。実際、アゾレアの全乗組員とウラヌスの全乗員もそうだ。むしろ艦隊全部がチアの信者なのだ。
あの子が一番、マザーに近いのかもね。そうクレティリアは思った。シスターズの中でただ一人、マザーに近い存在。それがどういう意味か、十分すぎるほど知っていた。
「じゃあ、これからパーティーをしましょうね。第1集会室で御馳走を用意したわ」
クレティリアがそう言うと、みなが歓声をあげた。しかしひとりだけ他の方を向いている。チアだ。新型戦空機を見つめている。あーあ。そうよねー。そりゃ、そうだわよねー。理解した。
「あのー、クレティリア?」
「いいわよ」
「え、まだなにも」
「いいから行ってらっしゃい。燃料はもう積んであるから。でも、こわしちゃだめよ」
「あ、うん、サンキュー」
新型戦空機F444ウエッジストーム。コックピットに乗り込む。
『お待ちしていました、チアさま』
「チアでいいよ」
『了解しました、チア。すでにウオーミングアップは済ませています。コンディションはオールグリーン。絶好の飛行日和です』
「あんたのこと、大好きになりそうよ、ゼア」
『面と向かって言われると、ちょっと照れ臭いです』
「じゃ、コントロール、フライト許可を」
「オーケー、こちらコントロール。アンリミテッドファイターズ(U F)の発進を許可する。順次、発艦せよ」
「え?」
『全員出るようです』
「パーティーは後回しね」
『シスターズの場合、これが本番のパーティーです』
「いうわねー」
赤く透き通った空にチアの1番機が飛び出していった。
「いい機体だわ」
『チア、名前をつけてください』
「この子に?」
『とびきりのやつを』
「そうね、うーん、じゃ、プレスト」
『プレスト?理由は?」
「ただ、頭の中に浮かんだだけ」
『そうですか。あなたの力の深淵が見えました』
「どういう意味よ」
『この火星にマザーが降り立ったとき、乗ってきた機体名です』
「ふーん」
『プレスト。別の言葉でさきがけ、といいます。秘匿コードが解除になりました。あなたはマザーとのアクセス権を唯一、有しました。おつなぎしますか?』
「今はいいわ。飛んでいたいの」
『了解しました』
そのころにはマッハ5を超えていた。文字通りのアンリミテッドだった。第1戦隊Sトゥルーパーの5人のところに戻ると編隊を組んだ。速度はマッハ4を超えている。一糸乱れぬ飛行に、アゾレアの艦橋から眺めていたモーガン大佐はため息をつく。
「あれが見えるかい、ハインダー君」
「艦長、もはやわれわれでは」
「そうだよな」
「艦長より全艦に告ぐ。お姫様たちが飽きて降りてくるまで、いや、燃料が尽きるまで当艦隊は哨戒を密にし、高度を維持する」
「艦長、ドローンが発艦を求めています」
「なんだって?どういうことだ」
「新型AIドローンです。つねにUFに連動します」
「めんどくさいな。まあいい、行かせてやれ」
「フライト許可だ、クレボエンス」
「それがヤツのコードか?」
「名前だと言い張っています」
「わけわからん」
編隊行動からやがて模擬空戦に入っていった。潜空戦闘艦ウラヌスと大型の多目的爆撃機スーパーノバが標的となったようだ。スーパーノバはうまくかわしているようだが、模擬弾のペイントに艦体を汚された、ウラヌスの艦長になったファラが怒ったようだ。アクティネーターを始動させ、逆に戦闘機隊を追いかけまわしている。
目ざとく偵察戦闘機3機を見つけたチアが追いかけまわす。3機は散ったり集まったりしてなかなか的を絞らせないでいる。チアが本気を出していないのもあるが、なにかじゃれているようにも、訓練のようにも見える。こうやって高度な技を身に着けるのだろう。そんななかに戦闘爆撃機の群れが混じってくる。狭い空間によくあれだけの数の空戦機が密集していると、アゾレアの艦長は思った。まさに狂人の檻だな。
特異なのは新型AIドローンだ。人は乗っていないにもかかわらず、まるで人間の意思があるように飛行するのだ。わざと飛行コースを塞いだり、射線に入ったりしてくる。墜とそうと機首を向けるとあっという間に消えてしまう。オプティカルカムフラージュを使うのだ。センサーにもジャミングを入れてくる。厄介な相手だ。しかしチアが何発も模擬弾を当てている。ドローンはチアだけからは逃げ回っているのだ。
やがて燃料が尽き始める。第1戦隊から降りてくる。
「クレティリアさま。ドナポリスから通信が」
「つないで」
「クレティリア?聞こえる?アストリスタよ」
「おねえさま、聞こえますわ」
「みんなは、どう?」
「達者ですわ」
「そう、それはよかった。あたしがあげたおもちゃも喜んでくれてるかしら」
「おねさま、そろそろ本題に」
「あら、ごめんなさい。じつはさきの決戦でほとんど無傷の艦隊がいたでしょう?」
「ウイッチ級の重巡が旗艦のおよそ170隻ね」
「そうよ。いまは敗存の大型艦を入れて200隻になっているけど。それが火星周回軌道上に残っているのよ」
「これをわたしたちに?すると合同ですね。今動けるのは第2艦隊だけですが」
「第2艦隊は無理。修理が間に合わない」
「他に使える艦隊は」
「無いの。修理、編成、補給で目いっぱいなの。無傷で稼働可能なのはあなたたちだけなのよ」
「わかりました。全力を尽くします」
「すまないわね。詳しい座標を送るわ。それと、チアによろしく言っておいてね」
「あなたの特別大事な妹が、最前線のその最前面に出ることになります」
「それは気の毒に」
クレティリアはシスターズの中でもとくに突出した存在だ。しかしこのビッグシスターズには足元にも及ばないのだ。ビッグシスターズ。火星の権力の中枢にいる7人。各巨大都市にいて、その区間の行政や軍事を司っている。火星第1の都市、ドナポリスにビッグシスターズのひとり、アストリスタがいるのだ。そしてそれが火星のすべての軍事を統括しているのだ。
「そう、チアに伝えます」
「いいえ、それはちがうわ」
「なにが、です?」
「気の毒なのはムー帝国の方。あんなじゃじゃ馬さんの相手なんかさせられるんだから。ウフフ」
クレティリアはぞっとした。確かにそうだろう。チアはどうあれ、あの戦いぶりに戦慄しないものはない。しかし大小200の艦隊なのだ。空戦機は恐らく1000は投入される。どう戦えばいいというのだ。実力と戦力を見極められないビッグシスターズでもあるまい。よっぽど追い詰められている、とクレティリアは解釈した。チアの命を投げ出さねばならないほど火星は追い詰められているのだと。
あの子が死ぬならあたしも死ぬ。簡単な方程式だ。みな死ねばいい。喜んで死ぬだろう。チアのため、死ねないヤツなど、この艦隊にはいないのだ。ある意味爽快な作戦となった。
「お受けします、お姉さま」
「たのむわよ。多少、手こずるかも知れないけれど」
「いのちにかえましても」
「あら、なにか無理なことでも押し付けたかしら?」
「いえ、万が一、です」
「あなたや、他の人が死ぬのはしょうがないわ。寿命なんだから。でも、チアはちがうわ。それはそうね、人知を超えるなにか、なのよ、あの子は。だからあの子にすべて委ねて。もちろんあなたも愛しているわ、クレティリア」
「最後に、お聞きしていいかしら?」
「なあに?」
「統合って、いったい何のこと?シスターズ全体にさっき認識された。でもよくわからない」
「それは先ほど解除されたコードのひとつ。人類がもう一つ、先に進むステップ。やがて人類はこの火星の上で未曽有の繁栄をするでしょう」
「それが解除されたと?」
「そう、解除され、拒否された」
「はい?」
「もうしばらく人類はこのままなのかもね」
よくわからなかった。この戦いも、人類の未来も。ただ、深くチアがそれにかかわっていることだけは認識できた。
目標空域まで艦隊を進める。今度の戦場は、星と宇宙の狭間なのだ。
あらたな指令が下る。さらに困難な作戦。いや、もはや作戦ではない。死にに行くのだ。しかしチアは?新たな任務に、仲間を守れるのか。