_6__世紀の大発見!
初投稿につき至らない点もあることと思います。
感想・ご指摘・アドバイスなどお待ちしております。
ヤバい。
死んだこれ。
シレンから逃げ出したと思ったらレンポが元の場所に戻りやがった。
この裏切り者が!!別に仲間じゃないけどさ、気持ちを汲んでくれてもいいじゃん!
俺の心臓は有り得ない位にバクバク弾み、体中から冷や汗が噴き出していた。
考えろ!い、いや、考えている時間も無い。
1ミリの希望が残されてはいないかと、頭の中をグルグル回転させたが、間が空くと何か言い訳でも考えているのかと相手が捉えかねないので本能に任せた。
俺の本能曰く、この危機的状況を回避する方法は白を切ることらしい。
「ただいまー!」
俺は小学生の様な爽やかな笑顔で言った。
逃げてたんじゃないよ?そう思わせる戦法だ。
ここで謝ってはいけない。素直なことは相手に好印象を与えるが、間違いを認めてしまうと罪が軽減されることはあっても消えることはないのだ。
恐る恐るシレンを見ると、殺意で顔が歪んでいた。
怖えぇぇぇーーー!!!!!
全く俺の戦法が効いていなかった。
どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ!
緊張の糸がピーンと張ったこの状況で、俺と同時に投げ出されたエミルアさんがヨタヨタと立ち上がった。
「何が”ただいま”なわけ!?戻って来ちゃったじゃない!!」
俺に言うな!レンポに言えよ!!
金髪碧眼の美白女性が、俺にブリブリ怒り出した。
言い返そうと思ったが、エミルアさんを見てあることを思い出した。
!!!!!!!!
雷に打たれたかの如く、閃きが頭を駆け巡った。
もうこれに賭けるしかねぇ!
俺はエミルアさんに向かって”テイム”と念じた。
「あなたがちゃんとした地名を言わなかったらじゃないの!?全く何時になったら聖シュライン公国に・・ハゥん・・・」
俺のステータスに眷属欄が現れ、エミルアさんが載った。
通常の【魔物マスター】が持つ≪スキル≫では魔物以外を使役することは不可能だが、俺には不可能を可能にするチートスキル《絶対捕獲》がある。
「聖シュライン公国が【聖女】、エミルアでございます。マスター、ご命令を」
そう言ってエミルアさんが俺の前に跪いた。
初テイムが人間の女性って・・・下衆だなぁ。
俺の背中にゾクゾクっとしたものが走ったが、状況が状況だけにサッと頭を切り替えた。
「ボス、落ち着いて下せぇ!あの機関車に乗ったのは理由があるんでさぁ!」
「あ!?」
うわ~、メチャクチャ怒ってるなこりゃ。聞いてくれるか・・・
「ボスにこの女を献上するためだったんです。機関車の中で隙を突く算段だったんでさぁ!バッチリ上手くいきましたぞ、ささ、どうぞ受け取ってくだせぇ!!」
俺はクズ人間に成りながらエミルアさんにシレンの前へ進むよう念じた。
だって仕方ないじゃん。命より道徳が大事なわけ?
豊満な胸部を揺らせながら、エミルアさんは凛とした格好で念じた通りに進み出た。
「あぁん!?何言ってやがんだショボ筋コラぁ!!俺は肉食わねぇって言ってるだろがオラぁ!!!」
「ボ、ボス、食べ物ではねぇです」
ある意味食べ物ではあるけどもさ。
「あぁ!?じゃあ何だってんだよ!!」
それ言わすかね?
「ゴホン、ボスの命令に何でも従う召使ですぞ」
ここまで言えばわかるよね。
「んな枝みてぇな筋肉で何が出来るってんだ?ショボ筋より使えねぇんじゃねぇのか?」
・・・この脳筋分かってねぇ。くそっ、違う路線で勧めないとな。
「私はいい、だが、マスターを愚弄するな!変態!」
あの、上司を敬う気持ちはテイマー冥利に尽きるけどもさ。今そういうこと言われると不味いんだよね。
人をテイムするとこういうキャラになるのかな・・・。
シレンの殺意が一層濃くなった。
俺は焦ったが、最早万策尽きていた。
爽やか笑顔で誤魔化すことも失敗、美女で誘惑することも失敗した。
ここまで来るともう、一発芸で笑ってやり過ごすしか・・・。
「すいやせんボス!詫びにー、そ、そうだ!エミルアさん、踊って差し上げなさい!」
超スーパーウルトラド級の無茶振りだった。すまん、仕方が無いんだよね。
こういうことを命令出来るって本当にテイマー最高だな。
エミルアさんが踊れるか知らないけど。
エミルアさんは俺の命令にビクッと反応し、キレッキレのシャッフルダンスを踊り出した。
突然の激しいステップに俺もシレンも唖然とした。
何でシャッフルダンスなん??
この世界ににEDM無いだろ。んであんたヒールだよね?
様々な疑問が頭の中で木霊したが、俺はこの隙に何とか逃げ切れないかと思考を巡らせた。
「なかなか良い動きだな枝筋!」
え?
「枝筋の動きを見てっとよぉ、何だか体を動かしたくなるぜぇ」
こいつぁもしかしてもしかすると!?
俺はテレビで見たことのあった踊りっぽい動きを必死に思い出してちぐはぐに踊った。
「FUUU!ボス!!FUUU!一緒に踊りやしょうぜ!!FUUUUUU!!」
3人は悪魔の黒渦の前で踊り出した。
エミルアさんはキレッキれのシャッフルダンス。
シレンはというと、腰の前に両手を固定し、ガニ股で腰を振っていた。俺は交尾の舞と名付けた。
「なんかこうしてっとスンげー気持ちいなっ!おっ!おおっ!」
へ?
「あああっ!!俺様は分かってしまったぞ!こうすれば良いんだっ!こうだっ!!こうやると気持ち良いんだっ!気持てぃよぉおおお!!」
思春期かお前は。
シレンは妙なことを発見し、激しく交尾の舞を舞った。
ダンスでエロスを発見すな。
「ぬおおおおおおおお!!!」
エンジンのピストン運動みたく、超高速で腰を前後に振り出した。
「ボス!これがダンスなんです!!良いもんでしょ!」
俺は乗っかった。
「ぬほおおおおお!!!ダンスぅううううう!!おおおっ!!おっ!おっ!」
シレンが世紀の大発見をして興奮している隙に、レンポが動き出し、悪魔が居る方に走り出した。
俺は急いで追いかけた。幸いにもシレン隊長は腰を振る喜びを発見し壊れている。今がチャンスだ。
追いつくとレンポと悪魔がゴニョゴニョ会話していた。
悪魔は、俺が転生して降り立った草原を超え、カーミング王国という国へ侵攻する最中だったらしい。
悪魔はシレンへの報復を断念し、本来の目的を選んだようだった。
行先はカーミング王国だ。
俺は悪魔と一緒にレンポに飛び乗った。
「発車致しまぁーす。ドアにご注意ください。」
ドアが閉まり、レンポが動き出した。
最後にチラッとダンサー達を見たが、壊れたおもちゃみたいにまだ踊っていた。
俺は窓を開けて叫んだ。
「アディオス!!!」
窓を閉じて悪魔をテイムし、俺はゆっくりと座席に着いた。
こんな文字の羅列に目を通して下さった皆様、感謝でございます!
ありがとうございました!!
評価を頂けると嬉しいです(ボソッ
瞬きすることは忘れずにね☆