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Endless summer  作者: 育深
始まり 
8/58

ある……少女とある男

今後の予定について大方の説明が終わった後、王様が少し言いづらそうにしながら言葉を漏らす。


「……少し話は変わるのだが、君達に少し頼みたいことがあってだな。」


少しだけ迷った後意を決したように言葉を繋ぐ。


「序列1位のことなのだが、監視を君達に頼みたい。


騎士が彼を牢に連れていった後、誰が拘置されている彼の監視役を誰がするかで揉めてしまってな。

彼はあの時簡単に気絶したが、力を隠しているかもわからない。

例えの話ではあるが、もし彼が人を操る能力でも持っていた場合なんてもう目も当てられない。


そのような事情もあって、軽く話し合った結果まず圧倒的な力を持つ君達に打診してみることが決まってしまってね。


勝手に呼び出した挙句こんなことをいきなり言われれば烏滸がましいと思う気持ちも分かる。

なので勿論君達の意見は尊重しよう。

平たく言えば、嫌だったら断ってもらっても構わない」


彼は最後にそう付け加えた。

結構内情まで吐露するんだなぁ。


それはそうと、思った通り11人の反応はそんなに悪いものではなかった。

大方彼に興味が湧いている、といったところか。


いきなり呼び出された挙句、命を懸けて世界を救えなどと言われて即決で許可を出してしまうような11人だ。

その時点で、いい意味でも悪い意味でも正常な神経はしてないと私は思う。


……まあかくいう私も人のことは言えなさそうだが。


まあ私は彼を弄れれば退屈はしなさそうって理由で、他の人が何か言うよりも先に声を上げる。


「はぁーい!私やりたいでーす!」


「ありがとう!やってくれるか!」


よし勝った、心の中でそう呟く。


「待て待て、嬢ちゃん1人じゃ大変だろ。

僕もやろう」


そう声をあげたのは序列5位のよぼよぼおじいちゃん。


のじゃって使わないことに違和感を覚えるかもしれない。

逆に聞こう。

実際わしとかのじゃとか使う老人居る?

あれは本当の死語だと思うよ私は。


つかじいちゃん余計なことを……


「そ、そうよ!!1人にやらせるなんて!私たちみんなで交代でやりましょうよ!」


おじいちゃんの発言に序列6位の赤髪ポニテちゃんが同調する。


「そ、そうだね、その方がいいよ!」


すると、スルトくんすらそう言いだした。

すると、スルトくん……


「じゃあ皆で交代に回すというのはどうだろう?

回す順番は、そうだな……序列順はどうだ?」


おサルさんがそう提案した。

くっそぉ、私が全部やりたかったが仕方ない。

私自体別にそこまで彼自身のことを気にしているわけでもない、弄りたいなぁと思っただけだ。

ここでなんか言うのも面倒だし引き下がろう……


その後私は彼の夕食を運ぶために彼の拘置されている牢に案内された。


夕食は先ほどの残り物だった。


美味しそう……








ついつい食べてしまった。

致し方ない。


どんな風に彼を弄ろうか?玩ぼうか?

考えただけで心が躍る。

我ながら趣味が悪いのなんて分かってるけど。


なんて考えながら牢へと続く階段を降りていくと、




なんと彼がぶっ倒れていた。


こ、これは起こした方がいいのだろうか?

甲冑少女にぶっ飛ばされた後ずっとこのままなら彼今結構ヤバいんじゃないだろうか?

でも、流石に運んだ騎士達も彼の生存確認くらいはしてるだろうし……

まさかの状況に焦っていると、ふと彼が目を覚ました。


と、とりあえずミステリアスなクールビューティ感でも醸し出してみようか。


「よく寝てたねぇ」


そう言って私は唇で弧を描く。


「どちら様ですか?」


彼は起き上がって胡座をかくと、キョトンとした顔で私へ問うた。


あるぇ?私さっきちゃんといたのに……

この人の中じゃモブ扱いなのかなぁ。

ちょっとむすっとしてしまいそうになるが、それを態度に出すことはない。


その後彼は、お腹が減ったようで夕飯はどうなるのかと私に尋ねてきた。


「食べちゃった」


なんの悪びれも無くそう答える。

彼の不機嫌そうな表情がなんか可愛い。


彼の私へのイメージは最悪だろう。

でも聞きたいことも山ほどあるようで。

今私に愚痴るのは得策でないと考えたのだろう、諦めたようにかぶりを振る。


その後私は質問攻めにされた。




いやん



……



彼の質問の中に気になるものもあった。

白い部屋がどうとか。

私は正直に答えてるのに怪訝そうにこちらを見てくる。


……そんな信用ないですかね。

少し不満なので彼が甲冑少女にぶっ飛ばされた時のことを穿り返してやる。

趣味悪いな私……

流石に彼もそれを言われると弱いようで、好きな人を友人に教えたら次の日、本人にそれが伝わっていた時みたいなバツの悪そうな顔をして目を伏せる。

ちょっと可愛いかもしれない。


その後も彼は質問を続け、私はそれに答えていった。

したことといえばそれだけだが、なんか楽しかった。


「……君さ、何が基準でこの訳のわからない序列があるんだと思う?」


自分でも驚いた。

彼にこのことについて聞こうとは露ほどにも思ってなかったし、それ以前に自分でさえただなんか変な予感がするだけで、大して気にも留めていなかったから。


一瞬彼はキョトンとしたような表情を見せた後、さも当然といったように言った。


「はぁ、何って強さ順じゃねえのか?なぜか俺は弱いけどな。

お前が強いってことは、俺を除く11人は闘う力の強さ順で並べられてるって考えんのは普通だろ?」


違うのだ。

聞きたいのはそういうことじゃない。

その旨を伝えれば、彼は数秒思案に耽った。


「年功序列?」


自分でも信じられないほど笑った。


確かに序列の下の人の中、明らかに彼より年上の人が居たのもそうだ。


しかし、1番の理由は私が齢500を超えているというところにある。

エルフ族は元より長寿で中には2000年を生きる者も珍しくない。

もし彼の言う通り年功序列だったのならば序列一位の彼はは500歳以上ということになる。

しかし彼はどうみてもそんな年齢じゃない。


あまりにも適当な返答すぎて爆笑してしまった。


そう考えていると、侍女さんが私を呼びに来る。


「あっ、もう行かなきゃいけないみたい。

じゃあねぇ、結構楽しかったよ!」


「へいへいどうも」


私たちは軽く言葉を交わした。


やべっ、名前聞くの忘れてた。

まあまた監視役やるときに聞けばいいかな。

そんなことを思いながら上の階へと続く階段へ足を運ぶ。


目が死に過ぎ


彼から私の姿が見えなくなる直前、私に向かって徐にそう零した。


私はその時、彼が何を言っているのかよくわからなくてあまり気にしようとは思えなかったが、引っかからないと言えば嘘になるだろう。

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