ある男と闘技大会6
「こ、これでいいですか?」
「おお!いいねいいね!
ありがとな!」
戸惑いながら甲冑の着方を教えてくれた甲冑少女に礼を言う。
「で、でもそれはどうかとおもいます……」
彼女が若干引き気味に言いながら凝視しているのは俺の甲冑。
沢山の武器がある武器庫の中、収納されていた物にも拘らず少し埃をはたけば光沢すら見える。
最も、それはシャルルが厳選してくれたからではあるのだが……
話が逸れたが、正しく言うと彼女が見ているのは甲冑ではない。
……甲冑からはみ出した、大量のタオルである。
「ここに来るとき何に使うかもわからない麻袋なんか持っていたからなにかと思ったら……」
「ま、そういうことだ。
甲冑の中に大量のタオルをぶちこむことによって衝撃を緩和するっつう話」
「そ、そうですか」
この時、シャルルは気付いていた。
甲冑に限らず、世に出回っているもののほぼ全ては使う人のために様々な工夫が凝らされ、配慮がされているのだ。
素人の思い付きの閃きなんてものは高確率で逆効果、ということを。
しかし、彼女はそれを口に出すことはなかった。
面白そうだから。
この女、嫌いな男に土下座してまで成り立った自国の命運を左右する試合で結構な能天気である。
まあその時の俺はそんなことにも気付かずに、作戦の緻密さに酔いしれていた訳だが……
俺は甲冑を着終えた、係員に案内してもらい戦地へと赴く。
流石の俺で緊張が拭えないので、べっぴんさんの係員さんをナンパする心の余裕がない。
あってもしないが……
「ここを抜ければ試合会場です。
紹介が終わったら入ってくださいね。
いってらっしゃいませ」
「はいよ、ありがとね。
勝ってくるわ」
歩みを止めずに少し顔を後ろに向けてにやっと笑って見せる。
それが自分に対する言葉なのかどうかはわからないけど……
「は、はい……
健闘を祈ります」
急に目を逸らした係員の女性を横目に、前へ向かって歩き出す。
辺りは武器庫へ向かう通路から松明を抜いたような殺風景。
しかし、進む先から聞こえてくる地響きのような歓声は、こんな殺風景さえも緊張を助長する脳内麻薬にする。
因みに俺も自分で紹介文を書いて渡した。
五時間は悩んだ記憶がある。
「勇者れ……ん?なんだこれ字が汚くて読めないぞ!
まあいいや!異世界からの来訪者最強の序列1位!
志乃優沙選手!」
俺の5時間を返せ、そして誰かその司会者をクビにしろ。




