ある男と闘技大会5
「あの、すみません序列一位様……」
今まで空気だった王女様が、控えめに口を挟む。
「ん?なんだよ」
「もう試合始まりますよ?」
そう言った彼女に、俺はため息しかでない。
「あのなぁ、お前らだって試合なんざ見ちゃいねえだろうが……
なんで俺だけ……弱いから試合見とけってか?
横暴だぞこの暴君王女!」
最中、シャルルが甲冑を光らせてとんでもない顔をしていたが知ったこっちゃない。
ズボンの方が何故か湿っているような気がするが、知ったこっちゃないったら知ったこっちゃない。
そんな状態の俺とは違い、至極落ち着き払った様子ではっきりと言うエルザ王女殿下。
「いや違います……始まるのは、
貴方の試合です」
「ふぁ?」
「10分後です」
「ふぃ?」
「……聞いてます?」
「ふぅ?」
「……シャルルの胸はEカップです」
「ふぇええええ!!」
「エルザ!?」
「今も尚成長中です」
「ふぉおおおおおおお!!」
「エルザぁぁ!!」
「ちょっとぉ?ゆーさくん?
枯れてるんじゃなかったっけぇ?」
気付くと腕にまとわりついていたのは、ついさっきまでレイスに足揉みマッサージをされていたシュリア。
「ノリだ、ノリ」
結構真面目な顔で言われたもんだから、ついぶっきらぼうに返してしまう。
「怪しい……」
「怪しくねえし!」
とかなんとかやっていると、足揉みマッサージ師レイスが声を上げた。
「時間、大丈夫?
あと7分しかないけど」
……だめです。
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「次はどっちだ甲冑少女!?」
けたたましいほどの足音を鳴らしながら、俺とシャルルは闘技場内の通路を走っていた。
通路、と言ってもゴミのように人々がいる観客席の中を揉みくちゃにされながら走る訳にもいかない。
ちゃんと選手用に用意された通路があるのだ。
幅は5メートルくらい、等間隔に松明があるだけであとは大理石の壁、床、天井、とまあ殺風景を極めている。
「なんで私に十数メートル離されてるくせに次の曲がり角の情報を要求するんですか!?
右です!」
「うっせえよ!
力の加減が分からねえんだよ!」
「隠された力があるみたいに言わないでください!
そっち左!」
「違う!俺の世界では右が左だったんだよ」
「全部ちゃんと翻訳されてます!」
翻訳……なんだそれ?
とは思ったものの、そりゃ当たり前のことだ。
そうでもされてなきゃ俺達が言語通じてんのもおかしな話だもんな。
思案に耽りながら足を動かしていたのだが、シャルルの声で我に帰った。
「さぁ!着きました!
早く準備してください!」
辿り着いたのは、沢山の武器や防具が置かれている武器庫。
整理はされているし物自体は綺麗なのだが、武器庫に光が差していない為か、少し汚いような印象を受けた。
広さはまあ想像通りの広さで、結構なものだ。
所狭しと並べられた武具の数は合計で500はあるだろう。
まあ目算だから実際どうなのかは正直よく分からないが……
「じゃあ私は戻りますので、準備が出来たら係員にお伝えください」
その瞬間、気配もなく隣に現れたのは係員専用だと思われる制服を着た女性。
全然気付かなかったぞ……
「では……健闘を祈ります」
挙動不審になっている俺に投げ掛けるシャルル。
だがしかしここで行ってしまったら俺が困るのだ。
「ちょっと待て、甲冑少女」
「……何ですか?」
眉をひん曲げて首を傾げる彼女に、俺は悪どい笑みを浮かべて切り返す。
「甲冑の着方を教えてくれ」
こいつら基本的に走ってるな(走らせないと場面変えられない作者のせい




