刀剣男子と刀剣女子
彼女との再開は早く、次の日下町を歩いていたら怪しい壺を買わされそうになっているカレラに出会った。
「そ、そんな怪しい壺普通買わないでしょ……」
「怪しいってなんですか!
幸運を呼び寄せてくれるんすよ!」
その場から引きずって止めると、昨日と同じボロボロの行商用リュックを背負った彼女は、むくれて反論してくる。
苦労しそうだなぁ……この子。
それから僕らは何度も下町で顔を会わせるようになって、彼女の生きるのに必死なその姿を見て僕もどんどん丸くなっていったのだ。
人の良い武器屋を紹介したり、人の暖かみに沢山触れさせてあげることで、自分の惰性を誤魔化していた。
彼女の前でだけは、かっこつけていたかったのだ。
「緋色さん、あんま事情とか分からないっすけど家出なんてやめたほうがいいっすよ。
……人なんて、いつ死ぬか分からないんだから」
紡ぎ出された言葉には、10才とは思えないほどの重みを孕んでいたように思える。
そんなこんなで色々合って、僕は家に戻ることにしたのだがこちとら何年も家を空けて芳賀家の悪評を振り撒いていた身。
家族……というか妹との確執はさらに大きくなっており、結果が昨日の前哨戦である。
天はあいつに何物与えたのか、使用人や関わりの深い人間への僕に対する意識を変えていき、結局は父母ですらも有無を言わさぬ勢いで僕を追い出そうとした。
勿論抵抗はしたものの、信用も信頼も失った僕にはどうしようも出来なかったのだ。
そのままあれよあれよというままに試合に負けたら家を出るということを半ば強制的に約束させられて…
「兄さん、私は今から3分間攻撃をしません。
一撃でも当てられたらこの話は無しにしてあげてもいいですよ」
「……ふざけるのも大概にしてほしいよ、泣いても許さないからね……一生剣を持てないようにぶち壊してやる」
そう啖呵を切ったのはいいものの、僕だって普通の剣士よりかは遥かに強い。
立ち合った瞬間実力差が分かった。
そして結果は知っての通り、存分に弄ばれた挙げ句の大敗。
「分かりませんね、実力差が分からないほどに愚かでもないでしょうに……
最初から降参しておけば痛い思いなどしなかったでしょ」
片膝を付く僕の首筋に刀を突き立てた彼女は言うが、僕は余裕を崩さない。
「さぁどうだろうな、お前には一生分からないだろうけどさ」
そんな僕の態度を見て一瞬憎々しげに殺気を放った彼女だったが、すぐに溜飲が下げて蔑むように言い放つ。
「っ!
……ふぅ、この期に及んで吠えるのね……弱い犬ほど、とはよく言ったものですね。
もういい、2度と私の前に姿を表さないでください。
不愉快です、芳賀家の面汚しが……」
「クソッ!」
僕は闘技場の外壁を思い切り殴る、思い出したらどうにも苛立ちが収まらなくなってきた。
志乃優沙とかいう序列一位が格好付けてこの場を離れてからもう恐らく数十分は経っている。
しかし僕はこの場から動けずに、闘技場の外壁にもたれ掛かって座り込んでいる。
道行く人は僕に奇異の目を向けるが、こういうときって人はそれすら心地よく感じるものなのだろう。
僕がマゾな訳ではない。




