ある男と甲冑少女3
「……」
なんでこいつなんにもしゃべらないんだ……?
気まずすぎやしないか?
「と、というか俺が帰ってくるまで態々待ってたのか?
案外律儀なとこあんだなぁお前さん」
気まずい空気を壊すために適当に話題を吹っ掛けて見たものの、俺の台詞は彼女の頬を少し膨らませる程度に留まった。
依然としてコミュ難の危機は過ぎ去る気配を見せない。
おかしい、通常なら秒で罵られる筈なのに……
「ま、まぁ取り敢えず俺は疲れたから部屋戻るわ。
じゃあな」
正直ヘイト値マックスのこいつを相手にするのよりキツい、精神的に。
そう思った俺は逃げるように歩を進める、が……
「ま、待って!」
裾を思い切り引っ張られて止まらざるを得なくなってしまう。
な、なんだこいつ……熱でも出たのか?
「あ、明日!
応援してます……頑張ってください」
「わ、分かってるよ。
最善は尽くすっての」
裾は掴んだまま上目遣いで顔を真っ赤に染めて呟くように言った甲冑少女に、俺はもう混乱を隠すことも出来ずに返事を返す他なかった。
「か、勘違いしないでください……エルザちゃんに仲直りしろって言われたから……はっ!」
彼女が、失敗したといった風に口を手で覆って見た先は階段の方向。
俺も気になってそちらを振り返ると、【ツンデレ、だめ】と書かれた大きめの紙を持つ王女様の姿。
俺と目が合った瞬間にどたばたと音を立てながら慌てて上の階へ上がっていった。
見覚えのあるある長い耳とショートの黒髪が特徴のエルフが一緒に居たのは気のせいだと思いたい。
「あの子、転生がまだなんですよ……」
え?これまだ話続くの?
「私は転生回数が多くてエルザちゃんと仲が良かったからからこの地位についていて、そのせいで妬み僻みの視線を受けることも多いんです……
でも貴方の無茶から王女様を救ったという功績が認められて最近はそういったこともなくなってきてる。
それには本当に感謝しています、けど……」
殴りかかって返り討ちにされて感謝される男、情けなさの天元突破である。
なんて自虐しながら人の話はちゃんと聞くのが俺。
偉い、偉すぎる。
「今まで私に向いていた矛先がエルザちゃんに向いてるんじゃないかって、そう思うようになって。
王族なのにこの年で転生がまだっていうのは他の貴族とかから見たらあんまり印象が良くないみたいだから……」
うん、いい加減に裾を離せ、というか流石転生者だなおい。
さっきから抵抗してるのにビクともしねえぞこれ。
はぁ、仕方ねえ。
眠いし取り敢えずちゃっちゃと話済ませるか。
「だから、今回俺らは醜態晒せねえってわけか。
健気だねぇ甲冑少女よ、百合かい?
大歓迎だ」
「……冗談で言ってる訳じゃないんですよ」
冗談混じりの返答に不満を覚えたのか、彼女は少し声のトーンを落とした。
いつの間にかロビーには人気が無くなっていて、少し不気味なほどに明るい光が直接俺たちを照らしている。




