ある男と闘技大会4
「そ、そんなわけないでしょ!
知り合いなんですか?カレラと?」
少し興奮気味に距離を詰めてくる芳賀兄。
これはいけない、とりあえず逃げなければ……
「ちょっとおトイレに行きたくなってきたなぁ!あはは!」
そう言い残して俺は彼を押し退け、ダッシュで貴賓席
へ戻る。
「ここがトイレだよ……」
とか後ろからなにか聞こえた気がしたが恐らく幻聴かなにかだと思う。
とまぁ紆余曲折はあったものの俺は貴賓席に戻ることができた。
「あ、お帰りゆーさくん、今はレイスちゃんの試合やってるよ!」
帰ってきた俺に対してそう言ったシュリアの指が指し示す方向には、大量の武器を回りに浮遊させる赤髪の少女の姿。
……え?
何を言っているか分からないと思うが落ち着いて聞いてほしい。
レイスを中心として数十もの武器が彼女を守るかのように浮いているのだ。
種類は様々で、刀や大槌、中には弓なんてものまである。
心なしかモーニングスターが大半を占めているような気がするがそれはどうでもいいことだ。
相手選手は手に持ったモーニングスターを震わせながら唖然としている。
ちょっと待てどうでもよくないぞ、モーニングスター率ヤバくないか?
「ゾーン!!」
そう叫んだのはレイス。
瞬間、彼女を中心として半透明で半円状の膜が広がった。
そしてその膜は数秒もすると舞台全体をすっぽりと包み込んでしまったものだから会場のどよめきも凄いものだ。
「やああああぁ!」
レイスのその一声に呼応するように動いたのは数十もの武器たち。
それらすべてがまるで意思を持っているかのように相手選手へと迫る。
「こ、降参します!」
勝ち目がないと悟ったのか、膝をつき両手をあげてそう叫ぶ相手選手。
先程までどよめきが覆っていた会場も、その声を聞くと我に帰ったかのように大きな歓声を響かせた。
「しょ、勝者!
レイス・ホルダー!」
「やった!!
レイスちゃん勝ったよぉ」
司会者の声を聞いたシュリアがきゃっきゃと喜ぶのを横目で見ながら、俺は全く別のことを考えていた。
考えざるを得なかった、と言っても過言ではない。
「あの技……どっかで……」
思わず漏れた呟きは、誰の耳に入ることもなく闘技場の歓声へと身を潜めていく。
各ブロック試合は順調に進んでいったが、ここで思いもしないハプニングが起こる。
「勝者!芳賀美舟!
これは意外な展開です!
救世主をも切り裂いたその秀麗な刃、【東都の姫騎士】の異名は伊達ではなかった!」
倒れ伏すアホ猿を息を切らしながら見下ろす姫騎士に観客は大いに沸き上がる。
自国の人間が救世主という強大な相手に挑んで全てを出し尽くして勝利する、このシチュエーションは確かに燃える。
が、俺は燃えてもいないのに燃え尽きた灰のようになっていた。
貴賓席の高級ソファで試合も見ずに優雅にくつろいでいた甲冑少女なんて俺より酷い。
アナウンスが響いた瞬間から微動だにしていない。
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「いやぁ負けちまったよ、わりいわりい」
こういう時の時間はすぐにすぎるもので、八百長大作戦を思いもよらぬ形で破綻させた張本人が呑気に貴賓席に戻ってくる。
俺はすぐさま駆け寄り、怒りを伝える。
「ふざけるなサルチャ、ミフネマンごときに負けやがって」
「何言ってんだお前」
俺の怒りは伝わらなかったようである。
「お、お疲れ様でしたカールさん。
と、とりあえず体を休めておいてください」
平静を装いながら労る甲冑少女の額には青筋が走っていた。
うわぁ……
「そして志乃さん……」
俺が憐れんでいると、生気を失った声で甲冑少女が俺に話しかけてきた。
「なんだ?慰めてほしいのか?
こころゆくまで抱き締めてやるよ!」
「ほんといまそういうのいらないんで……
というか一生要らないです」
「あ、は、はい」
疲れた顔で言われてしまって流石の俺も言葉に詰まった。
「今、試合は盛り上がりましたが数日たてば救世主の実力に対する不安感は否が応でも浮き出てくるでしょう」
慎重に諭すように言葉を選ぶ甲冑少女。
俺を説得さすには生半可な理屈じゃ話にならないとわかっているのだろう。
「そ、そりゃな」
「あなたが負けたらどうなるか……分かってますよね」
甲冑少女は威圧感に押されるように引き気味な反応しかできなかった俺に畳み掛けるように詰め寄る。
「ま、まあ想像はつくよな……」
まだまだ詰め寄ってくる甲冑少女から逃げるように後ずさっていると、遂に壁に追い詰められてしまった。
なにされるんだ俺は……
「もうっぅ!貴方が並み居る敵をバッタバッタ薙ぎ倒すしかないんですよおお!!」
ええ……泣いちゃったよ……
確実に文章力落ちてるのマジで草生えるであります。




