ある男とある……少女?
二話同じ話を投稿していたので今日は三話行きます
俺、転生してから気を失いすぎてないだろうか。
3秒は生き延びられたのでよしとしよう。
俺が目覚めた時、自称妖刀の姿はどこにもなく、通路から漏れていた明るい太陽の光は既に月明かりに変わっていた。
「よく寝てたねぇ」
そんな間延びした声が聞こえてくる。
声の主は目のところまで黒髪を伸ばした、ショートカットの美少女。
別に化粧をして言うわけでもないだろうが、艶やかに紅く染められた唇が弧を描く様に形を変える。
特徴的なのはやはり耳で、普通の人より遥かに縦長であった。
茶色で貧乏臭い布の服だったが、それすらも彼女は着こなしている。
身長は150後半くらいだろう。
一見10代のように見える容姿だが、なんか胡散臭い。
若作りしているに違いない。
「どちら様ですか?」
体を起こして、楽な姿勢で返答する。
まぁ胡座かいてるだけなんだが。
俺はこいつのことなど見たこともない。
すると彼女はおやおやと言った風に口をへの字に曲げてこう言い放ってきた。
「君と一緒に転生してきた1人だよ?序列2位、エルフのシュリア」
不敵に微笑む彼女を怪しんでこう尋ねる。
「なんでこんなところに居るんだよ?」
「君の監視役だよ、いくらあの時のことがあっても序列は1位。
自国の兵じゃ抑えられない可能性も危惧したようだね。
転生者が交代でやることになってるんだぁ。
それでも初対面のあたしらにこんなの頼むなんてどうかしてるとは思うけど……」
「そうか、じゃあ俺の夕飯とか持ってきてくれるんだよな?」
よく考えたらこの時間は夕飯の時間である。
お腹が減った。
「うん、それが役目だからね」
大きな双丘を目一杯張ってそう言うものの、どこにも飯らしいものはない。
「で、俺の夕飯は何処へ?」
そう問えば、彼女は茶目っ気を出そうとでもしているのか唇から舌の先を出して、
「食べちゃった」
……こいつ。
俺は、額に青筋を浮かべながら彼女を睨む。
だが彼女は髪を手で弄りながら、涼しい顔をしている。
何言っても無駄だと感じた俺は、彼女に気になっていたことをいくつか質問することにした。
「……はぁ。
まあいいや、それはそうとお前に聞きたいことがあんだけど」
「なぁにぃ?」
自身の黒髪を弄る手を止めずに特徴的な間の伸び方をした声でそう聞き返す彼女。
「お前、あいつらに協力するの?」
「うん」
「あぁ……言い方が悪かった。
俺が聞きたいのはその理由だよ」
「別にぃ、面白そうだしさぁ」
何を考えてるか全く読めない。
恐らく誰もがそう思うだろう。
頬を緩ませながら適当なことを言う彼女に、俺はめんどくさいってこと以外感じることはない。
しかしまぁそれは置いておくことにする。
今は彼女からしか情報を得られない。
「で、お前強いの?」
なにせ俺自体あれほど楽にぶっ飛ばされたのだ。
他の人達も強くないのではないか。
そう淡い期待も込めた問いだった。
「うん、めちゃくちゃ強いよ?」
そんなに都合のいいことはない。
そりゃそうだ。
期待をしてたと言っても強いか弱いかなんてどうでもいいのだ。
どうでもいいのだ。
……ただ少し自分だけ人と違うとちょっと悲しいような感覚に包まれているだけで。
……どうでもいいったらどうでもいいのだ。
若干気落ちしながらも質問を続けた。
と、いうよりかは本題はここである。
「そいえばさ、ここに転生してくる前に白い部屋に飛ばされなかった?」
ずっと飛ばされたものだとは思っていたのだが、俺を除く11人は妄想系お姫様の説明したことを割と真剣に聞いていた。
というよりも、妄想系姫君の話を聞いていた彼らを見て、俺はどうも事前に説明を受けたとは思えなかった。
「え?そんなことはなかったけど……
君、夢でも見てたんじゃないかなぁ?」
俺以外は呼ばれてないのかな。
俺だけ弱いから特別とかだったら悲しいです。
……しかしまあ嘘を言っているようには見えないのに信用性に欠ける。
何故だ。
……ここは黙って信じることにしよう。
「というかさぁ、君弱すぎだよねぇ。
君が小柄な騎士の女の子に後頭部盾でぶん殴られた時はついつい笑っちゃったよ。
私より序列が高いからどんなもんかと思ったのにさぁ。
三下丸出しのセリフ吐いて突っ込んでってあれは流石に笑いを堪えろと言われても無理があるよねぇ」
彼女は心底愉快そうに笑いながらそう言った。
俺は対照的に心底不愉快である。
こいつの辞書にはデリカシーという言葉が載っていないのだろうか。
なんか今特大ブーメランが頭にぶっ刺さった気がしないでもないが知ったことではないのだ。
ここで自称妖刀と話していた時の様に煽ってしまいたくはなるが、まだ聞きたいことがいくつかあるので黙っておいてやる。
……誠に不服である。