ある男と闘技大会
「朝か……」
眼を擦って明るくなった部屋を見渡す。
が、まぁ一夜明けて部屋の内装が変わるなんてことはなく、なんの変哲も無い宿の一室のまま其の姿を俺に見せる。
本当に昨日は散々な目にあった。
それにしてもあの妖刀はすぐに消えるな、幻でも見てたような感覚に苛まれるよ……
というかまだ妖刀形体を見てないんだけど大丈夫か?
実は只のストーカーでしたとかいうオチはやめてほしいぞ。
いつも通りの阿呆思考で脳内を埋めながら、お世辞にも綺麗とは言えない無地の白Tシャツの上にいつものパーカーを羽織る。
……あまりにもファッションセンスが無さすぎて笑えない。
「というかこの服装って此処じゃ珍しいだろうし、他の服買ったほうがいいかなぁ……」
ぶつぶつと、呪詛のように小言を垂れていると部屋の扉が勢いよく開いた。
「おはよう朝だよゆーさくん!
例の生理現象の処理は終えたかなぁ!?」
シュリアであった。
早朝一発目から下ネタぶっぱしてくるとはもうどうしようもねえなこいつ。
「じゃかしいわい、こちとら枯れてるっつってんだろ……
つかお前……」
と言って俺は自分の頭に指を指す。
「ふぇ?どうしたの?」
それでもまだシュリアは気付いていないようで、キョトンと擬音が聞こえてきそうなほど綺麗に小首を傾げる。
対して俺はため息を1つ。
「はぁ……寝癖やべえから直してこい」
いつもの綺麗な黒髪どこ行った。
なんでそんなサボテンみたいな髪型になってやがる……
「へ?
……くっ、殺せ」
彼女は俺に言われた通りに髪に手を添えると、そう言って巫山戯たが、顔がめっさ赤くなっているので照れ隠しだろう。
「実力的な問題で殺せねえよ……」
俺は片手であしらい、素っ気ない態度を見せる。
パーカーを着るのに忙しいのである。
そのことにご立腹っぽいシュリアさんは不満げである。
「キングスライム風情が調子に乗りやがって……我が髪の毛に宿しサボテンマンの威を知れ!」
「お前さん一体どこへ向かってんだ?」
……不満げとか立腹とかではなくて何か新しいなにかに目覚めちゃってるような気がしないでも無い。
つかキングスライムやめろ。
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「おはようございます、遅かったですね。
十中八九そこの変態のせいだとは思いますが……」
「おいおい、朝からいいご挨拶だねえ本当に……
仲良く行こうぜシャルルたん!」
此処は宿の中の待合室である。
まあ簡単に言うと宿を入ってすぐのところだ。
刻一刻と過ぎる時間を気にも止めずに渾身のボケを続けるシュリアを鋭いツッコミであしらっているうちに結構時間が経ってしまったのか、俺たちが来た時には他の救世主たちは全員揃っていた。
まぁ遅れた1番の理由は別にあるのだが……
「穢らわしい……」
「やめなさいってメイラ。
煽ったって無駄よ……」
後ろから汚物を見るような目で見てくるのは吸血鬼っぽい長身少女ちゃん。
成る程、この子の名前ってメイラだったのか……
それを宥めるのは赤髪ポニテがトレードマークのレイスたん。
「えぇ、嘘でしょ……顔は自分でも結構いい方だと思ってんだけど?」
「顔のこと言ってるんじゃありません。
性格ですよ……」
嫌悪感を隠そうともせずにそう言ってくるのはシャルル。
長身銀髪美少女ちゃんも、同意とばかりに首を縦に降る。
へぇ……ってことはつまり……?
「なるほど、俺がかっこいいのは否定しないところを見ると……これで俺も念願のハーレムが……!」
自分でも気色が悪いと思うような笑みを浮かべながら言う。
見れば両名は、血管ぶった切れるんじゃ無いかと見てるこっちまで心配になるほどにビキビキと青筋を浮かべていた。
こいつらってなんかちょっと似てるところあるよな……
「メイラ……だからやめといた方がいいって言ったのに……」
何故か赤髪ポニテは悟ったような表情を浮かべていた。
「そうだぜメイラたん、怒りっぽいのは肌に悪いぞ?」
しかしメイラは既に冷静を取り戻したようで、落ち着き払った様子で笑みを浮かべた。
「ちょん切りますよ?」
どこを!?
まったくもって悍まし過ぎるわ。
総勢14人の大所帯で闘技場に向かう間、俺たちはエルザからいくつか説明を受けていた。
割愛してまとめてしまうと、
今回の闘技大会は、6つのブロックに分けて行われること。
1つのブロックに対して救世主が2人ずつ入っており、最後にそれぞれのブロックで勝ち残った6人が試合をするということ。
敗者復活戦が用意されており、そこで勝ち残った者は自分がいたブロックの優勝者と戦い、最終試合出場へのチャンスが与えられるということ。
闘技大会参加人数は1つにブロックで16人それが6つ分。
らしい。
因みに闘技場に入るのに名前やら泊まった宿やらは別に書かなくてよかった臭い。
もしも何か貴重品の紛失などした時のために書いておくことが出来るのだ。
あの紙は特別な魔法紙で作られており、落し物に紙を翳せば書いた人間のものかどうか分かるとかなんとか。
なんにせよ俺たちは貴重品など持っていなかったので、書く必要皆無だったというわけだ。
「あ、そうそう。
言い忘れていましたが、闘技場に武器の持ち込みは禁止とされています。
性能の差などのハンデを無くすためです」
掌を拳でぽんっと叩いて付け加えるエルザ。
今日は俺たちは貴賓席での観戦となる。
そのせいか彼女の服装も豪奢で、ここでは少し目立つだろう。
まぁ、自国の王女が来ているのにここまで騒がない街もおかしいとは思うのだが。
シュリアの話では、城下町に行った時はもっと騒がれてたっぽいしね。
「それって闘技場が用意した武器を沢山持ち込むことは許されてるの?」
そう問うたのは前を歩いていた赤髪ポニテの暴れ馬ことレイスたん。
あどけない表情を憤怒の色に変えて罵倒する姿は圧巻である。
というかやめてほしい、君も大の大人が大声を上げて大泣きするところなんざ見たかない筈だ。
「え、えぇ。
別に禁止にはされていませんが、そんなことしても重いだけで何の意味もないのでやる人はいませんよ?」
「いや、それならいいわ」
そう言って前に向き直って歩をを進めた彼女を見ながら、少し不思議に思ったことを聞いてみる。
「なぁ、お前さんらって全員王女様とかに力を見せたんだろ?
何であいつは何も知らなそうな素振りなんだ?」
そう言って俺が指差したのはエルザの方だ。
「ああ、そうね。
カール君が前回大会優勝者と喧嘩しちゃってね……
そのせいで全員の力を見れていないのよ」
偶然隣にいたガイに事情を聞く。
独特のおカマ口調のせいで、台詞だけ読むとレイスと間違えそうだな。
……そんな聞き間違えは想像もしたくないが
猿のせいか。
なるほど。
詳しく聞けば、力を見せたのは、カール、スルト、シュリア、メイラの4名だけらしい。
全く、ろくなことをしない猿だ。
「……なんかどっかで理不尽な罵倒を受けた気が」
……気のせいだろ。
オタクをディスるって古いですよね、今じゃ卍もメンヘラもアニメにハマり隣の席のリア充なんてなろう読んでる始末ですよ(授業中




