ある男と強そうな刀2
唐突ではあるが、私こと志乃優沙は差別について思うことがある。
差別とは、一般的な解釈で見るなれば説明するまでもなく誰もが答えられるであろう。
差別が起こる要因。
容姿、スペック、人種に於いて劣っていると見られる。
無論、病気などもこの中に分類される。
……
もう少し差別に対して知ったかぶりしていたかったけどやっぱり俺は論を講じるのに向いていないことに気がついたので結論から言わせてもらおう。
「なんで帰ってきた時間は同じなのにシュリアはお咎めなしで俺だけ半時間も説教食らわないけねえんだよ!?」
「消し飛ばしますよ?」
悲痛の叫びを冷たい目で一蹴するのは我らが王女様……の騎士でど貧乳のシャルルたん。
おい待て何故殺気が増したんだ?
それ以上やったら死ぬぞ?
……俺がね。
「はぁ……大体なんで無許可で抜け出した上にそんな浮浪者みたいな格好で帰ってくるんですか……?」
浮浪者みたいな格好?
ああ、この全身に巻かれた白タオルのことか?
あの後シュリアに、俗に言う【あーれー】をやられてそのまま帰ってきたからな。
ここに関しては俺も反論の余地があると思う。
「いや、浮浪者と言うよりは変質者だと思うがね。
やはりここに関しては議論する必要があるようだな、お互い全裸で街を闊歩するというのはどうだろう?」
「割と本気な話で一遍死んどくか?」
犬歯を光らせて屈託の無い笑みを浮かべた俺に向けられた切れ味抜群の口撃。
く、口調が……
だが、俺はそんな威圧には負けないぞ!
「分かりました巫山戯ませんから。
1つだけ、何故シュリアだけ叱られなかったか教えて下さい」
威圧には勝てなかったよ……
「何故って?ビジュアル的な問題ですよ?」
さべついくない。
……
いやおいちょい待てやビジュアルてなんだ?
その後シャルルにこってりと絞られ尽くした俺は、自分の部屋に戻った。
懲りもせずシャルルに一緒に戻らないかと誘ったが、しばき倒されてえのか、の一言で一蹴されてしまった。
あの子騎士団入る前まで極道とかだったんじゃ無いかな?
俺はそこでベッドに寝転がる。
因みに夕食の時間はとうに過ぎていたようで、俺は冷めた定食を寂しくぼっちで食う羽目になった。
……いやまぁ部屋に運ばれてくる時点で夕食はみんなぼっちなんだろうけど。
「小童は悲しいやつじゃのう」
あぁ?孤高の救世主様を何と心得やがる?
「孤独な足手まといの間違いじゃろ」
ん……?
「なんじゃ?」
「お前がなんじゃらほい!?」
体を勢いよく起こし眼前を見据えれば、そこに映るはいつぞの自称妖刀。
艶やかに靡かせた黒髪には枝毛の1つもありゃしない。
前も言ったかもしれないが、のじゃとか使うやつ実際見たことあるか?
所詮死語なんだよ。
「失礼なやつじゃな、若干キャラ作りと言われれば否定は出来ないんじゃが」
「……」
「どうしたんじゃ?」
「いや、今なんか突っ込もうと思ったけどボケがありきたりな上つまらないから返答に困った」
「ねえ?妾ナメられてる?妾ナメられてる?」
額に青筋を浮かべて現代語を使いまくる自称妖刀。
今更ではあるが心を読まないで欲しい。
「本当今更じゃな……これは汝の方とのリンクがキレていないからお互いの考えていることが分かるだけじゃよ」
えっ?ということはそっちの考えていることも分かるの?
といった風に顔で訴えかけると、小首を傾げられた。
まだ自分が口を滑らしたことに気付いていないようなので、有り難く拝見させてもらうとしようか。
『あぁ、かったりぃわぁ……今日重い日っぽいなぁ、きついわぁ』
……私は何も聞いていない。
「今汝聞きおったな?聞いたな?それはほろびのうただぞ?
残り3ターンで汝は死ぬ」
何をトチ狂ったことを……
「聞いてねえよ?うん、ところでなんの関係もないけど妖刀にも重い日ってあるのかな?」
「隠す気すらないじゃろ」
「そういう日もある」
清々しい程の微笑みをセットで俺が答えると、彼女は息を吐いて話を変える。
「……はぁ、つっこみとやらは放棄するとして。
時に汝よ、明日闘技大会があるとか言ってたのう。
勿論妾を使うんじゃろ?
使う時には使用者の血を半分ほど吸い取ってしまう副作用があるが、然程の問題はない。
最近血が足りなくての……
うざったい灰髪も息を引き取ってくれるなら一石二鳥じゃろう」
それ然程の問題ないの貴女だけですよね。
人間の失血限界量余裕でぶち抜いちゃってるってことに気付いて欲しい。
それ以前に誰かは知らないけどうざったい灰髪殺す気満々だけど本当に殺したらどこかの世界の物語の1つが目出度く終焉を迎える気がするからやめてあげてくださいお願いします何でもしますから、誰かは知らないけど。
『リンクが繋がれているといっておろうが、煩わしい』
すっごいなこの人、俺の心の底からの糾弾を煩わしいの一言で済ませちゃったよ。
まぁとりあえず使う気など端っぱしからない。
うん、普通にいうのもなんなので熱血ぶってみよう。
「いや……俺は自分の力で戦いたいんだ!
君の力が強いことは知っている、それでも分かってくれ妖……」
ぐふっ……
目の前に鮮血が散った。
発生源は俺の口内。
まさかの不意打ち、衝撃と苦痛に耐えられずに俺はベッドに倒れ臥す。
おいおい……何が起きたってんだ?
霞む視界の中見えた、黒髪ロング美女の口元は動く。
『ほろびのうたの効果じゃな』
……頼むからんな物騒なもんギャグで済ませといてくれ……




