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Endless summer  作者: 育深
闘技場編
34/58

ある男と恋する乙女2

「始めッ!!」


審判の凛とした声が闘技場全体に響き渡れば、女剣士の方が敵を斬り捨てんと言わんばかりの高速で間を詰める。


横薙ぎに一閃。


彼女の放った剣撃に一切のブレはない。

煌めく片刃は男の胴を完璧に捉えた。


……と思われたが、男は相手が一発で決めにくることが分かっていたかのようなバックステップでこれを回避。


観客席は沸き立ち、カレラはそわそわが止まっていない。


闘っている砂塵のステージでは、女剣士が男の方に話しかけている様子だった。

男もそれに返答を返しているのは分かるが、ここからでは声など聞こえない。


審判は戦闘の邪魔にならない位置まで移動して勝負の行方を見守る。



話が終わったのか、今度は男の方から斬りかかる。

体格と筋力量の差を活かしながらも型に忠実な剣戟が数発。

飛ぶように襲い掛かる。


しかし、【東都の姫騎士】の2つ名は伊達じゃないらしい


小ぶりな袈裟斬りは刀で受け流され、そこから流れるような動作で放たれた突きは女性特有の柔軟な動きで躱される。

若干無理やり放たれた片刃を下にした振り下ろしは姫騎士の刀と鍔迫り合うが、所詮は突きからの振り下ろし。

しかし威力不足が否めないのか正面から切り返される。


そのようなことが1分は続いた。


そう、1分間姫騎士の方は一度も攻勢に転じることをしていない。


観客も異変に気付いてきたその頃。


一瞬だった。


姫騎士の袈裟斬りが男へと肉薄。

自分の刀を横にして姫騎士の方の刀を思い切りかち上げることで、間一髪で防いだ男。

姫騎士の刀はそのままバランスを崩してここから見ても分かるほどに勢いよく弾かれる。


好機。


これを見れば誰もがそう思うだろう。


それはカレラも例外ではないようで、思わずといった叫びが出ていた。


「そこっすよ!緋色さん!!」


男も考えは同じ。


速さに特化させ、ダメージを与えることを重要視させたコンパクトな横薙ぎが姫騎士の脇腹を捉えた……



かに思われた。


姫騎士はなんと、男が万全のカウンター体制で放った攻撃よりも早く不安定な一本刀で男の右肩を狙って渾身の唐竹を放っていた。


片刃の剣。

その重量は約1キロ。

それを吹き飛ぶやもしれない勢いで弾かれた時点で手が痺れるまではいかずとも、腕から指にかけてある程度の衝撃が入るのは必須。

その上男の判断は早い、故に身に迫るのは刃と敗北の予感のみ。

しかし彼女が下した判断は瞬時に握り直し、唐竹を放つという聞くだけなら暴挙とも取れる行動。


まあお察しの通り先にヒットしたのは姫騎士の唐竹。

刃が肩に食い込めば大量の血が砂色の地面を紅く染める。

男はその計り知れない痛みに当てられ、左手に持つ刀を思わず落としてしまう。

一応男の刃も姫騎士を斬るが、既にその時男は肩口を裂かれていた。

それ故に彼の攻撃は、彼女の防具に裂傷を刻むだけに留まった。


すれば姫騎士は男の首筋に剣の切っ先を突き立てて何か一言。

聞いた男は顔を伏せる。


この間10秒ほど


「しょ、勝負あり!」


審判すらも試合に見惚れていたようで、合図を出すのが遅れるという痛恨のミス。


あの人はクビだねうん。


周りを見渡して見てもこの闘技場の中、声を出すものが1人もいない。


約50000人が一斉に奏でる静寂。

それはそれで不気味なものなのだな。



果たして初めに声を出したのは一体何処の誰か?


審判の合図から1秒ほど遅れ、観客席が盛大に湧く。


形容するとしたなら地鳴りとか雷とか、最早自然災害にしか例えられないほどだった試合前の歓声も、これと比べてしまえば大した事はないと思える。


「っく……うぅ……」


近くで聞こえたのは啜り泣く声。


発生源は御察しの通りカレラだ。


それに気付いたシュリアは俺に目をくばして、今だけはそっとしておいてあげよう、と言いたげなアイコンタクト。


俺はそれに同意しながらも、沸き立つ観客の中で1人悶々とした気持ちを孕ませていく。

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