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Endless summer  作者: 育深
闘技場編
27/58

ある男と少女達2

その後、なんやかんやあったもののキャリッジは順調に進路を辿って目的地に着いたようだ。


「着きましたよ、皆さん」


そうお姫様が告げると、キャリッジの後部座席の方に備え付けられていた扉が上部だけ支えをなくしたように外側に押し倒され、外の地面に付く。


するとどうだろう、扉だったはずのものが地に降りるための階段に変貌を遂げた。


蝶番が扉の下部に付けられていたのはこの為か……


皆が降りていき、俺が降りるのは結局最後となった。


しかし俺は、階段を降り切る前に足を止めて、感嘆の声を漏らしてしまう。


「はぁぁぁ……」


まず目に飛び込んできたのは、大理石製の巨大な円形状のドーム。

ここからでは中が覗けないが、恐らくこれが闘技場だと一目見れば5歳児でも理解する。

ここから100メートル程離れている場所にあるはずなのに、圧倒的な存在感だ。

目算ではあるが、直径600メートルはあるんじゃないだろうか?


……目算ではあるが。


崩れている箇所があったり、遠目から見ても分かる量の傷や汚れが刻まれているところを見ると、否が応でも歴史を感じさせられる。


……別に嫌じゃないけどね?


次に目に入ったのが街中を歩く人々。

闘技場の周りとあってか、ごっつい兄ちゃんがそこら中を闊歩している。

皆彫りの深い顔立ちをしていて、兎に角背が高い。

俺は180と数センチくらいなのだが、恐らくここを歩けばチビ扱いだろう。

けどなんだろう……闘技場が凄すぎてこの人達背景に見える。


街の風景にも目を向けてみるが、やはり闘技場の存在感が圧倒的過ぎて直ぐに闘技場を眺めてしまう。

ここは闘技場の大理石に合わせられているのか、石造りの建物がダントツで多い。


シュリアに聞いた話だと、城下町では木製や煉瓦造りの建物もそれなりにあったということなので、やはり闘技場のイメージに合わせられているのではないだろうか?


「ゆーさ君、何してんのぉ?」


「シノ!早く行こうぜ!」


サルとシュリアに呼ばれて俺は現実に引き戻される。


「あっうん、ごめん」


と若干慌てながら答えてキャリッジを降りると、銀髪ちゃんの方から舌打ちが聞こえてきた……泣きそう。


「遅い!ほらちゃっちゃと行くわよ」


紅色の髪を揺らして赤髪ポニテ、もといレイスが急かしてくるのだが、俺は何処に行くか聞いていない。


「えっと……何処へ?」


こいつにはあまり聞きたくなかったが、致し方ない、聞いてみる。


すると、すでに先を歩いていた彼女は思い切り振り返る。

そして、怒ったような呆れたような表情をこちらに向けながら説明してくれた。


「はぁ、あんたねぇ……エルザの話聞いてなかったわけ?

トーナメント自体が2、3日掛けて行われるから事前に取った宿にチェックインするのよ」


「あ、あぁ。

悪いねぇ、俺寝てたもんで」


頭をボリボリ掻きながら答える。

教えてくれるところを見ると、別に悪い子じゃなさそうだな。

そりゃそうか……俺がエルザとかいうお姫様に序盤から喧嘩売ったのが悪いんだし。

なんて感心していると、レイスは俺のことを見て怒鳴った。


「なっ……あんたきったな!フケ落ちてんじゃない!何日風呂入ってないのよ!?」


前言撤回、こいつクソ性格悪い。

仕方ねえんだろ牢屋じゃ風呂入れねえんだから。


あんま大きい声出すなよ、他の人の視線が痛い。


銀髪ちゃんとかもうあの子俺を見る目がゴキブリでも目にした女子みたいになってる。




……目覚めそう。


「そいえばシノってさ、俺たち全員の名前知らないんじゃねえの?」


さっきまで引き笑いを浮かべていたサル、もといカールが気を遣って話題を逸らしてくれる。


気遣いが俺の心に刺さる……


でもまぁ全員の名前知らないのってお前のちょっと前歩いてる黒髪エルフもだからな。

……無論シュリアのことである。


「あぁ、確かにね。

俺この中で名前知ってる奴3人しか居ないわ」


俺がそう返すと、全員の名前を覚えていない系女子のシュリアが頭に疑問符を浮かべて俺に聞く。


「ん?私と……おサルさんと、誰?」


「居ねえからな、おサルさん居ないからな」


賺さずカールが突っ込むが、これはスルーでいいや。


「レイスたん」


俺がボソッと呟くと、レイスが一瞬ビクッと肩を震わせた後、赤髪ポニテを逆立てて吠える。


「あんたっ……!なんで私の名前知ってんのよ!?」


彼女の双眸は気持ち悪いバケモノでも見てるかのようだ。


……因みに銀髪ちゃんの俺を見る目は既に氷河期を超えて絶対零度ですはい。

うん、自分でも例え方が謎なのは知ってるが、もうそうとしか例えようがない。


「いやあんた、そこまで警戒するか?

ただそこに居る銀髪ちゃんが言ってるのを聞いただけだから安心しろよ」


と、宥めるように言うと、赤髪ちゃんは押し黙った。

が、銀髪ちゃんは一生の不覚と言わんばかりに唇を噛んで俯いてしまっている。


この子面白いけどあまりにも俺のこと嫌いすぎな気がするんですけど。


「うっ……じゃあそこはいいわよ。

たん付けで言うのはやめなさい」


これ以上怒られると話が全く進まなくなる可能性がある。

少し名残惜しいが仕方ない。


「分かったよ、レイスたん」


平手飛んできました。

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