ある男と少女たち
むくり、と立ち上がって何事もなかったかのようにこっちに向かって走り出すシュリアさん。
飛びつくような勢いで俺の前まで来ると、恥ずかしそうに小首を傾げながらこう尋ねてきた。
「……見た?」
「しかとこの目にはっきりと」
見た?
じゃねえよ、見えないはずないだろ。
彼女はむくれて口を尖らせる。
「女の子に気を使えないなんて……」
「お前女の子って年じゃ」
「あ?」
「誠に申し訳ございませんでした」
怒るのはいいけど自分のオーラというか覇気というか、そういうもののことを考えて欲しい。
あの門番立ったまま気を失ってるし。
……?
やべえちびった……
「これ他の人っていつ来るの?」
毅然とした態度で素朴な疑問を投げかけてみる。
……ちびってはいるが。
「もうちょっとだと思うよ?」
俺がコミュ障なのが最近発覚したのであまりお近付きになりたくはない。
噂をすれば。とはよく言ったもので、城の扉の方から足音が聞こえて来る。
それも複数。
こりゃまぁ強そうだな。
……知らんけど。
城の扉を潜り、抜けてきたのは2人の女性。
1人は銀色の長髪を靡かせた身長の高い女性。
容姿は、綺麗その一言に尽きる。
二重瞼の下の目は切れ長で左右対称。
整った形の高い鼻にも、透き通る様な白い肌にも、デキモノ一つない。
ピンクで塗られたような色で彩られた唇は、普通と比べれば薄い方だ。
一際目を惹くのはその唇から顔を覗かせる犬歯、人間とは鋭さが違うところを見ると、粗方吸血鬼とかいうものだと読める。
もう1人は人間、シュリアの様に耳が縦長だったり、隣にいる吸血鬼の様に犬歯が見えていたりはしないから恐らくそうだと思う。
身長は隣の彼女と比べてしまえば低いが、平均的な部類に入るだろう。
この子は恐らく15歳くらいだろう、赤髪のポニーテールと勝気そうに見える少しつり上がった眉、小ぶりな口の下には小さな黒子。
鼻は小さくて綺麗な形だ。
燃える様な赤髪とは裏腹に、あまり焼けていない肌……まぁ美しいっていうよりかは可愛いって感じの少女。
長々と連ねたが、端的に言うとどっちもめっちゃモテそうな美女と美少女。
今限定で俺はハーレムなのである。
「シュリアさん、早いですよ……先に行かないでください」
口を開いたのは銀髪長身美女。
それに続いて赤髪ポニテも言う。
「今日はしゃぎすぎよ……
というか、その人誰よ?」
シュリアの隣で悠長にしている俺に訝しみを覚えたのか、警戒を隠そうともせずにシュリアに尋ねている。
「んふふー、聞いて驚いけ!
この人は、序列1位の志乃優沙さんだよぉ!」
シュリアはご機嫌そうに鼻を鳴らすと、胸を張ってそう答えた。
それに合わせてたわわに実った果実が存在を主張した。
瞬間、彼女らは俺に敵意を向けてくる。
「ああ、あの変態鬼畜投獄男ね」
「あの気狂いイキリ男ですね」
ははは、可愛い子猫ちゃんたち。
渾名はせめて一つに統一して欲しいな!
……牢獄の貴公子とかミステリアス美少年とかね!
「あぁ?バカにしてんのか?初対面でソレとか育ちの悪さが伺えるよ……」
キレとノリの良いツッコミは頭の中だけ、ちょぉっぴりイラっときたので言い返した結果、程度の低い煽りと捉えたのか赤髪ポニテが癇癪を起こしてくる。
「あんたに言われたか無いわよ!
エルザに初対面であんな態度とっておいてよくそんなこと言えるわね!」
「ありゃキレて当然だろ。
お前らがおかしいんだろうが、いきなり呼び出された挙句世界救えとかドッキリにしたってタチが悪いっての。
よくそんなもん受けたなおい」
フッと鼻で笑ってやると、赤髪はその勝気そうな瞳をギッと締めて、こちらを睨みつけながら怒鳴る。
「あんた……エルザがどんな気持ちで召喚に及んだかなんて知らないくせにそんな無責任なこと口に出してんじゃ無いわよ!!」
「ふぁ?無責任なのはあっちっしょ、こりゃ立派な人権侵害?とかいうやつだぞ?
俺からしたら協力しようと決めたお前ら11人宇宙人の思考より謎だわ。
てめえがてめえで王女様に協力すんのは構わねえが、んなこと俺にゃ関係ねえわ鬱陶しい……」
後頭部を右手でボリボリと掻きながら適当に答える。
因みに俺は馬鹿なので人権侵害よくわからない。




