ある男と外出
その後1週間、彼女は毎日俺の居る牢にきた。
まぁとりあえず俺の飯をとられる確率も下がってきている……本当によかった。
今は俺以外の救世主の方は、転帰者協会の方で仕事をしているみたいだ。
いくら切羽詰まった状況だからといって、謎の化け物が出てくる要因の糸口すら掴めていない以上、救世主に特別な依頼など舞い込んでくるはずもない。
とはシュリア談である。
しかし問題になっているのが、救世主の人数の話。
俺が今まで一度も表に出ていないということだ。
以前から王国民には救世主の人数が伝えれていたそうな、その所為で11人しかいないことに不審を抱き始めている。
異世界から連れ出した人間を不敬罪で逮捕。
王政なら可笑しなことでもないはず。
事実を伝えればいいのではないかとも思ったがが、それは難しいと考え直す。
なにせこの世界の住人は全員が転生を経る。
転生先の世界で不敬罪だけで投獄など、自分が転生する側だったら最悪だ。
それが主な理由として、国民に序列1位の存在は開示されていなかった。
もっと言ってしまえば、シュリアが序列1位ということになっている。
俺は12位扱いらしい。
とりあえず何を伝えたいかというと、
「暑ぃ、何月だよ今……」
場所は、城から出るための両開きの大きな扉を開いてすぐのところ。
緑が美味しいしあっちになんか噴水見えるぞ……流石は王城。
時刻は辰の刻真っ最中。
日光は少し斜めからの攻撃を浴びせてくる。
そう、俺こと志乃優沙、初めての外出である。
俺が外出するに至った理由は、前記に記したのともう1つある。
闘技場への参加。
これをしなくてはならないのは俺だけではない。
救世主全員が強制参加、ということらしい。
理由はサルってやつが喧嘩売ったから。
シュリアに齧るほど聞いただけなのでどんな喧嘩かは知らないし、細かい事情も分からないが、俺を牢から出してくれたことには感謝しよう。
もし会ったらバナナを献上しなければ。
して、俺は気になったことがあったのでここから数十メートル先にある城の門を守っている門番に聞きに行く。
「あの、ここの扉ってって開きっぱなしなんすか?」
俺が指を指したのは先ほど通った両開きの扉。
大方、城というか最早宮殿?の玄関口的な役割を果たしているのだろう。
ここって開けといていいものなのかね?
「いえ、もうすぐ他の救世主様方もお見えになられるので開いているだけでございます。
いつもは魔法鍵も掛かっていますよ?」
へぇ、魔法鍵なんてもんがあんのね。
俺が話しかけてしまったからか、緊張で顔を強張らせた門番を他所に納得する。
俺も欲しいなぁ、なんて考えていると、言ったそばからとはよく言ったもの。
見れば、先ほど俺が出てきた扉の向こうから高速で走ってくる物体。
ここから見えるだけでも城の内装はそれはもう煌びやか、敷かれた赤いカーペットと人が20人横に並んでも余裕がありそうな廊下。
壁には壁画、天井にはシャンデリア。
これは豪奢と表現せずにどう表せるものか。
はぁ……
迫ってくる物体は置いといて宮殿の内装に本気で感嘆を漏らしていると、それら全て台無しにする勢いで突っ込んでくる黒髪美少女は、もう声が届くところまで迫っていた。
「ゆーさくーん!」
高級感溢れる大理石の床を、ドタバタと下品な音を鳴らしながら手を振って走る黒髪美少女ことシュリア。
ここまで足音聞こえてくるってどうなのよ?
あ、コケた。




