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Endless summer  作者: 育深
始まり 
2/58

ある男ととある国

妙な感覚に体が包まれ、俺、志乃 優沙は目を開いた。


目の前には広がる光景はまるでありきたりな物語の冒頭のシーンのよう。


髭を生やし、豪華な衣装を身につけ、これまた高級感のある椅子に鎮座してこちらを威圧する大柄な男性。

その横に控える長い金髪を靡かせている10代後半と思われる美少女、こちらもまたお金のかかっていそうな洋装をしている。

傍らには何人かの騎士を控えさせているようだ。

騎士は甲冑を着ていたが、顔ははだけさせていた為、騎士の殆どが女性だということに気付き、俺は少々違和感を覚える。

それよりもこちら側に目を向けてみると、黒ローブを身に纏った十数人の人々が跪くような形で手を平を地面につけていた。


ここは恐らく、自らを神と名乗る奇怪な情緒不安定ちゃんが言っていたとある国。

でもって今いる場所はその国の王様の城、だと考えるのが1番妥当だろうか。


そしてここはその城の大広間的な役割を果たす場所らしい。


顔を横にひねれば煌びやかなで眩しすぎるくらいの壁、


反対側の壁を見てみれば、何かに手を伸ばしている1人の男性と、それに付き従う1人の女性と3人の男性。

またその4人にそれぞれ付き従う数人の男女が描かれた絵画がでかでかと飾ってあった。


窓から差し込む日差しはステンドグラスを通って鮮やかな色を魅せている。

頭上を見上げれば太陽の如く爛々と光を放つ巨大なシャンデリア。

下を見れば特大の魔法陣。


俺がいるところから真下を見てみてもその全容は把握できない。


なるほど、これが自称神様になぜか怒られた時に出てきた魔法陣か。

そして恐らく目の前の黒ローブの人達が、この魔法陣を維持していると見て間違いはないだろう。


そして背後を見ればそれぞれ戸惑った様子の11人の老若男女。皆同様に特大魔法陣に乗っている。


え俺以外にも!?


……って、そりゃ12人の救世主だか勇者だかって話をあの女神はしてたんだし、いるに決まってるか。

出身世界が違うのだから、容姿の特徴が様々なのも合点がいく。


転生してきた者は耳がやけに縦長だったり、人間だったり、羽が生えていたり、身長が異様に低かったりと様々だった。


こんなことに気づけなかったなんてやっぱまだ寝ぼけてるみたいだなぁ。


なんて呆けたことを考えていると、わざとらしい咳払いが聞こえてきた。

聞こえてきた方を見ると、豪華な椅子に腰掛けていた如何にも国王っぽい人がその鋭い眼をさらに細めて俺たちに話しかけてきた。


「諸君、私はこのセーバ王国の国王、ウェズリー・バリントンだ」


……セーバどこ行った?

国名と王の苗字って被らないのか?

そんなくだらない俺の疑問などどこ吹く風、王様は口を開いた。


「諸君もいきなりこんなことになって困惑しているだろう。

エルザ、説明を頼む」


エルザと呼ばれた少女が説明を引き継ぐ。


「畏まりました、父上。

……では今回皆様をこの世界に招き入れることになってしまった経緯を誠に僭越ながら私から説明させていただきます」


彼女は説明を始めた。

殆どあの情緒不安定ちゃんに聞いていたので正直説明はいらないと思っていたが、流石は情緒不安定ちゃんといったところで肝心なところを完璧に説明しそびれていたようだった。

ついでに言うと、俺の中で情緒不安定ちゃんの呼び名が定着しないのが最近の悩みである。


まあそれは置いておくとして彼女が話したこの世界の特徴について簡単に説明するとこうなる。


この世界には謎の化け物が居るというところまでは白いところで聞いた。しかし俺が度肝を抜かれたのはその後だ。


この世界の住人は全員転生するらしいのだ。

女性も男性も20歳までには1回目の転生を終えると聞く。

しかし転生したからと言って強いというわけではない。


転生先では特殊な能力が1つ特典としてついてくるので転生先では強くなれるかもしれないが、戻ってきた後は別の話である。


ただ人生経験が豊富になるってだけだ。

ここの世界の住人が異世界へ転生して剣を学んだとしても、頭に体がついてこれない状況が起こる。それでも通常と比べれば相当強いことに変わりはないのだが、転生がもたらす恩恵というのは事実その限りではない。


実はこの世界の住人は、



ーー人生に幾度となく転生を繰り返す



転生の回数については個人差はあるが、転生を繰り返したものほど転生の確率が上がるというのだから若干タチが悪い。

それに傾向として女性の方が転生の確率が高いことがデータとしてわかっている。


甲冑騎士の中、女性が殆どを占めているのもこれが理由と考えて間違いはないだろう。


この世界に魔術を伝えたのも数十年前の女性転生者だったという話だ。

と、ここで矛盾が生じる。


先程俺は剣の腕をいくら異世界で上げたとしても、元の世界に戻って剣を振れば体がついていかないと説明をした。

それならば魔法など世界に伝わる術がないのではないだろうか?

実際のところこれは異例らしい。

なぜなら彼女は転生の特典にて、【自らが異世界にて学んだ全てを元の身体に引き継げる】という能力を手にしたからである。

後に彼女は長年の研究により現代魔法を確立させ、剣と弓と石が戦争の道具だったこの世界に、新しい風を吹かせた。


少し話が逸れたがこれは俺が逸らしたのではなく何故かお姫様が暴走して話し始めただけなので俺は悪くない。


彼女が言うにこの世界の特徴として知っておかなければいけないことは、少しだけ女尊男卑の風潮が広がりつつある、ってことらしい。

転生確率が女性の方が高いので、女性の方が精神的にも戦闘技術的にも強い傾向にあるからとはお姫様談である。


この世界の説明が殆ど終わった頃、彼女はホッと息を吐いた。

とても絵になる。



でもまぁお姫様、そんなこと言われたって納得できねえ奴は絶対にいるよ?


「ざけてんじゃねえぞ!!クソめんどくせえことに巻き込みやがって!!!ただで済むと思ってんのか!?」


三下のようなセリフを吐き捨てながらお姫様に詰め寄る男、




ーー無論、俺である

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