ある……少女とある男2
そこまで思い出して私は我に帰った。
目の前には透き通った水晶玉が姿を現して、やがてこの街の喧騒が聞こえてくる。
「この水晶玉すごい!
私色々感傷に浸っちゃったよぉ!」
私がそういうと、彼女は満足そうに微笑んだ。
「気に入ってもらえたんならありがたいよ……私ももっと知名度を上げたいからね、占いで食ってける程度にゃならんと」
やっぱ食ってけてないのか……
一瞬野暮なことを思ってしまうがそれを口に出すようなことは流石にしない。
ゆーさくんじゃあるまいしね。
「うん!頑張ってねお婆さん!
ついでに救世主の人がいるところも教えてくれると助かるなぁ!」
……ちゃっかりしてるとはよく言われます。
「あっ、戻ってきましたか、どうやって馬車の場所分かったんですか?
どこ行ってたんですか?
シュリアさんが戻ってきたってことはあと2人ですね」
大通りに出てキャリッジまで行くと、王女さまが待ってくれていた。
「迷ってなんかないよ絶対!」
私はきちんと迷ってないことをアピールしてキャリッジの方に乗り込む。
「……?」
王女さまは少し苦笑いでこちらを一瞥したが、それ以上は何か言ってくることもなかった。
よかった、バレなかったようだ。
救世主が皆集まった後、私の乗るキャリッジはワルポルを発つ。
広いキャリッジの中、ちらほら話し声が聞こえたが、私はそれに混ざることもできない。
決してぼっちではない。
私はぼっちではないのだ。
きっと明日くらいには友達100人くらいいる。
話に混ざれず悶々としている中キャリッジを引く馬は歩を進めていき、あっという間に王城に帰ってきたようだった。
私は城に戻った後、ベッドに転がってグダグダとしていた。
というか今のところ友達がいない為する事がない。
今は高級なベッドに寝転がりながらただただ時間が過ぎるのを肌で感じて居る最中である。
秒針の音がする。
あ、ゆーさ君のご飯……
そんな時、部屋にノックの音が響く。
「シュリア様、序列1位様への夕食をお持ちにならなくて良いのですか?
具合が悪いのなら他の救世主様に頼みますが……」
給仕の声だった。
行こうとしてた時に言われるといく気が削がれるんだよなぁ……
内心で毒吐いたが、私はアダルトな大人なのでそんなくだらないことで一々腹を立てたりはしない。
意味が被ってるとかも気にしない。
「大丈夫だよ、今行きまーす」
ちょっと遅れちゃったかな、死んでないといいけど。
まあいいや、行くか。
軽く支度をして給仕の女性とともに厨房まで配膳を取りに行く。
正直部屋から厨房までは短くない距離だったので面倒なのだが、自分で引き受けた仕事な訳で面倒だからやめたとかは言ってられない。
というか辞めろと言われてもやめる気は無い。
配膳を受け取った後、いつもの通路を通って牢に続く階段を降りる。
そして眼に映るのはいまにも死にそうな彼の顔。引き気味になりながらも声を掛ける。
「やっほ、ゆーさくん」