ある……少女?と迷子という名の同族3
「エリシア!どこ行ってたの!?」
探しながら歩いていると、前の方から声がした。
背伸びをして人混みから顔を覗かせてみれば、結構若い女性が心配そうな顔をしながらこちらを見ていた。
身長は私よりも少し高いくらいで紺色の目、明るい茶髪。
綺麗に洗濯された水色のチュニックを着ていて、人混みに紛れていてもあまり目立たなさそうだ。
凄い量の汗をかいている。
きっと凄い焦っていたんだろうなぁ。
肌に褐色が混ざっているし、顔の造形もエリシアちゃんをそのまま大きくしたみたい。
髪の色は違うがこの人がエリシアちゃんのお母さんで間違いないだろう。
「おかあさん!」
嬉しそうにはしゃぎながらエリシアちゃんは私から手を離して走り出す。
危なっかしく走りながらお母さんのそばまで行くと、タックルと言われても違和感のないようなハグをかました。
お母さんは心配から解放されて、泣きながらそれを受けとめていた。
最近私臭い場面に立ち会いすぎじゃないだろうか?
それでも折角エリシアちゃんのお母さんが見つかったんだから臭そうな顔なんてしてられない。
「よかったねぇ、エリシアちゃん。
お母さん見つかって」
私は目元を緩ませて彼女らに話しかけた。
「えっと、すみません。
何方ですか?」
お母さんは少し不審げにこちらに目をやってエリシアちゃんを後ろに隠すような仕草を見せる。
「おかあさん!この人が私と一緒にお母さん探したいって言ってくれた人よ」
エリシアちゃんが元気な声で弁護してくれる。
「本当ですか!?すみません、怪しんでしまって……」
お母さんは申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「いえいえ!頭を上げてください!
いきなり話しかけられたら誰だって混乱しますってぇ」
「そ、そうですか、お優しいんですね。
帰りの魔行船が行ってしまうところでした……本当にありがとうございました」
長年引きこもってたから人と話すの不安だったけど大丈夫そうだな、流石私。
「いえいえ、お気になさらず」
何もなさげにそう返す。
「本当にありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
エリシアちゃんと彼女のお母さんが同時に頭を下げる。
「ご恩を返したいのは山々なのですが、魔行船の発車時刻が迫ってしまっているので……
何もできず、申し訳ありません」
そう言った彼女はまた頭を深々と下げた後、エリシアちゃんを連れて歩いていく。
手を振っていたが、唐突に思い出す。
私も迷子だったということを……
他の11人について聞かなきゃ!!
私は彼女らを追いかける。
あっ、見つかった!
まだ大丈夫そうだ。
仲睦まじげに歩くエリシアちゃん親子の背中。
私はその背中に何故か見惚れてしまって引き留めることでできなかった。
彼女達の姿が完全に見えなくなるまで私はその場で突っ立っていたらしい。
気付けば周りから奇怪なものを見るような目で見られていたことに気付き、すぐにその場を離れた。
「ふぅ……いやぁ懐かしいもん思い出しちゃったなぁ」
と小さく一人呟く。
それでもまぁまだ迷子なことに変わりはないので、場所も分からずほっつき歩くことになったことは言うまでもないだろう。
そして日も傾いて私も流石に焦りを感じてきたその時だった。
後ろから嗄れた声がかけられたのだ。
「まぁ焦りなさんな、お嬢さん綺麗だね。
少し占ってあげよう」