ある……少女?と迷子という名の同族
落ち着くんだ私……
こんなところで迷子とか信じられない、優沙くんを馬鹿にするどころか逆に馬鹿笑いされてしまう。
いや待てよ、私達ってそういえばめちゃくちゃ目立ってた。
流石にあそこまで騒がれてたらすぐ見つかるだろう。
先ずは来た道を戻ろうか。
それでも分からなかったら人に聞けば良い。
というか最早私が迷子なんじゃなくてお姫様達が迷子なんだ。
完全無欠なる私が迷子になるなどあり得ない。
自己完結すると、とりあえず私は1人で街中を歩き始めた。
ぼけっとしながら付いて回っていただけなせいか、相当あやふやになってしまっている記憶を頼りに賑やかな街を進む。
「そこの可愛いお嬢さん!串焼き一本いらねえか!?」
振り向くと、血色のいいおじさんが私のことを呼んでいる。
確かにお腹は空いた。
だが私は今、金を持っていないのである。
美味しいものを前に耐えるのって辛い……優沙くんの苦しみが少しわかった気がする。
まぁ私のせいなんだけど。
「金欠なんで遠慮しときまーす!」
そう言葉を濁すと足早に去る。
流石に迷子とか恥ずかしくて言えない。
というかあの人達私が居なくなって大声で探し回ったりはしてないよね?
……というか私が居なくなったことに気付いているのか?
よく考えたら馬車でお姫様と話したのが最後で私その後なにも話してない気がする。
他の人は結構救世主同士で積もる話もあったみたいだが。
ん?私ぼっち?
いや待て大丈夫だ私には優沙くんがいる。
彼は今、恐らく生まれ故郷の里の学び舎にも1人は居る誰の眼中にも入ってない底辺ぼっちだ。
……帰ったら馬鹿にする前に底辺同士で傷でも舐め合おう。
「おかあさーん!!どこいっちゃったの!?」
阿保っぽいことを1人で考えていると5歳くらいの女の子が大通りの端っこで大泣きしている。
多少汚れが目立つ何の布で出来ているかわからないような服を着ているが、肩まで伸びた髪や褐色の入った肌などは手入れが行き届いていて綺麗だったので、恐らく服の汚れは転びでもしたんじゃないだろうか?
彼女は大通りの真ん中に行くのは怖いのか、泣きながら端の方を右往左往している。
これはもう確定ですね。
……同類だ。
というか私がこんな小さな女の子と同類だ……
良いことを思い付いてしまった。
あの迷子の女の子のお母さんを探してたってことにして迷子を有耶無耶にしよう!
ついでにあの子のお母さんにお姫様達の場所を聞けば良い!
流石私、可愛い上に天才とか最高かよ。
善は急げ、早速声をかける。
人混みを掻き分けながら迷子の女の子の方へ向かう。
もみくちゃになりながらやっとの事で彼女の元へ辿り着くと、腰を屈めることで目線を同じ高さにしながら話しかける。
「どうしたの?大丈夫?お母さんと逸れちゃった?」
「ううん、おかあさんがはぐれちゃったの」
やばいこの子私とおんなじこと考えてる…
というか私の思考回路が5歳に満たない女の子とさして変わってない……
もう私5歳でもやっていけるのではないだろうか?
これから5歳として生きよう。
くだらないことに思考を巡らせながらも、少女には苦笑いして返す。
「そ、そうなんだ、じゃあお母さん一緒に探す?」
「うん、さがしてやってもべつにかまわないよ?」
泣きっ面でドヤ顏しながら目線をこっちに送る少女。
私が善意でこの子の親を探そうとしてたなら笑って流せるがが、実際問題下心ありありなので図星を突かれたみたいで頭にくる。
……私は一体幼女相手に何故対等に張り合っているのだ。
このままだと本当に5歳児と同レベルになってしまう危険性を感じ、大人な私は華麗に聞き流す。
「ありがとうね!じゃあお願いしようかなぁ?どこで逸れたか覚えてる?」
「うん、あっち」
そう指差したところは他の比べれば割と閑散とした住宅街の中で、今私たちがいる道を歩けば人とぶつかるような大通りとは少し離れていた。
石やレンガで出来た建物が立ち並び、道の幅も人が6人横に並んで通れるかどうかくらいまで狭まっていた。
目印になりそうなものはない。
私はその中を5歳児ちゃんの記憶を頼りに歩いていく。
案内に沿って歩けば歩くほど人は少なくなってしまっているのが分かる。
ここから、先程までいた場所に戻るのは恐らく不可能だ。
そしてこの5歳児ちゃんとお母さんは大通りを歩いていなかった可能性が高い。
まあ長々と考えてしまったが、つまりだ。
端的に言うと多分この子のお母さん見つかっても詰む気がする。
まさか城下町がこんな広いとは思ってなかったんだよ。