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Endless summer  作者: 育深
始まり 
10/58

ある……少女と城下町

彼の居る牢を後に、小走りで城門の前へと急ぐ。


既に朝日が登ってから数刻ほどの時が経ち、城の廊下に大量に張られたガラスは朝の陽光に照らされて幻想的な空気を創り出していた。


城門の前へ着くと、さっきまでガラスを通して浴びていた陽光が直に私に突き刺さり、どこか懐かしいような感覚を覚える。


季節は初夏だろうか、少しだけ強すぎる日差しはじゅくじゅくと私の額を焦がしていった。


今日は周辺の地理を確かめるという名目……というか王国側の気遣いだろう、城下町を見学することになっていた。


転生する前は諸事情で引きこもってたりしてたので、結構楽しみだったりする。


折角彼の投獄中に甘い蜜を吸えるのだ。


戻ってきたら彼が羨ましがるような話をいっぱいしてやろう。

また勝手に夕飯を食べてしまおうか?

いや、流石に丸1日食わなかったらあの人だって死にかねない。


城門は私の背丈の3倍ほどある。

両開きの扉の両端には大柄な門番が控えていて、立ち振る舞いのみですら強者の風格を醸していた。


城の正面玄関から城門までを繋ぐ白いカーペットを思わせる白石の道は、馬車でも通れそうなほど幅が広い。

そこだけ見ればここが外とは思えないほど綺麗に手入れが為されており、足元を覗けば鏡でも見ているかのようだった。


特に私の目を引いたのは右手の方の庭に小さく見えるやけに豪華な大理石の噴水。

空に届かんとすべくしているように思えるほど、勢いよく水が噴き出している。


その周りには花が生けられており、ここが別世界なのだと改めて実感させられる。


先ほどより寸刻遅るれば、11人の救世主は既に城門前に集まっていた。

それを知ってから知らずか、いつのまにか一緒にいた姫様が微笑みながら言い放つ。


「これから皆様には私がついて、セーバ王国の城下町を案内させていただきます」


彼女は私たち11人の顔を伺って、準備が出来ていることを確認した後、こう続ける。


「では、行きましょう」


彼女は右手を掲げた

それが城門を開けるための合図だったようで、城門が開く。


姫さんにやけてる……

きっとこれがやりたかったんだろうな。


圧巻だった。

開いた先には地平線の向こうまで伸びた道、その先に薄く見える街並み。

獣道のような感じだが、舗装されていて凹凸は少ない。

少なくとも歩く時に嫌悪感を覚えることはないだろう。

幅は馬車3台が同時に通れるくらい。

両脇にはどこまで続いるかさえ分からない森が広がっていた。


はてさて見知らぬ土地というのは心が躍るものだ。

勿論私も例外ではない。

一行は若干浮ついた表情を見せながらもセーバ王国城下町への一歩を繰り出した。


「ちょっと待ってください。

どこいくつもりですか?」


意気揚々と城門を抜けて歩いていこうとする私達にお姫様は首を傾げる。


「えっ、これから城下町まで行くんじゃないんですか?」


キョトンとした顔で銀髪ちゃんがそれに答える。


「行きますけど、馬車ですよ?」


「あっ、そうなんですね」


恥ずかしそうに目を伏せた銀髪ちゃん可愛い。

ぺろぺろしたい。


「おいおい、しっかりしてくれよなぁ?

全く……こんなんじゃ先が思いやられるよほんと」


おい猿、お前さっきまでこっち居ただろ。

いつの間にか城門内側のお姫様の隣に移動して居たサルさんが溜息をついている。


「じゃ、じゃあ行きましょうか?

で、馬車はどこです?」


スルトくんがそう言って辺りを見回す。


確かにここらを見回しても馬車は居なかった。


「そろそろ来ますから暫しお待ちを」


そう彼女が言った時、地をけたたましい音で鳴らしながら前方からキャリッジが現れた。

いやキャリッジって高級な馬車のことを指すんさけどその言い方のほうがこれには合うと思う。


それにしてもやっぱりお金かかってそう……

そのキャリッジは車体が白塗りされており、角の部分などを純金が縁取っている。

通常の馬車に比べたら大きい四輪は、本当に地面を踏んでいるのかと不安になる程汚れがない。

それに兎に角デカい。

私はさっきこの道を馬車三台横で並んでも余裕があるほどの幅と形容したが、このキャリッジ1つで3分の2以上は占領してしまっている。

車体が大きければそれに比例して馬も大きくなるもので、その大きさたるや祖国ではお目にかかれないだろう。


……引きこもっていたので記憶が曖昧なところはあるのだが。

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