ショートストーリー コロッケが好きなんだ
ぼくはコロッケが好きだ。
今日も歩いて十分も行ったところに散髪屋があるが
その隣に特別美味しいコロッケを作っている店があるんだ
その店は坂の上にあってその横に夢前川が流れていた。
夢前川は平安時代に播磨地方にやってきた
紀貫之が命名したとも伝えられている。
コロッケ店にはいつも長い行列が出来ていて
揚げたてのホッかホッかのコロッケが食べられる。
ぼくはいつもその店にコロッケを二つ買いに行く。
一つは3つ上のお姉ちゃんにやるんだ。
お姉ちゃんもここのコロッケが好きでね。
揚げたてのコロッケをお姉ちゃんにあげると
いつもこぼれるような笑顔で
コロッケのように喜んでくれた。
そんなある日坂の上のコロッケ屋さんに
いつものようにいつもの通り二つ買って帰り道
ぼくは小石に蹴躓いて
お姉ちゃんにあげるちょっと大きい方のコロッケを
落としてしまったのだ。
ぼくは拾おうとしたがころころ糸コロッケは転がっていき
追いかけたが拾えなかった。
すると坂の下でコロッケが止まった。
しめた!
と思った瞬間
コロッケは鶏に化けて
コケコッコー
と鳴いていた。
夏の暑い日が始まろうとしている頃だった。
※二〇一七年四月六日