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傾国の死後、私と妹【連載版】  作者: 小林晴幸
私と妹と、夜逃げの準備
8/39

4.5/わたしとおにいさま

 ミンティシアのおにいさまは、絵がじょうず。

 ぜんぜんしらないおにいさまのことを、ひとつしった。


 犬のろっとばるとは、とてもおおきくて。

 あたたかくて、やわらかくて。

 おひさまのにおいがして、毛がふさふさ。

 さみしくなったとき、ろっとばるとをぎゅってしたくなる。


 でもろっとばるとは。

 あたたかいけど、ぎゅってはしてくれない。

 やわらかいけど、やさしいけど。

 でも、おはなしはできない。

 いつもじっとわたしをみて、おとなしい。


 ろっとばるとのことは、すき。

 だけどたまに、いっしょにいてさみしくなる。

 さみしいからぎゅってする。

 だけど、もっともっとさみしいってなる。

 

 どうしてかな。

 どうして、さみしくなるのかな。

 ろっとばるとは、となりにいてくれるのに。


 それがどうしてか、わからなかった。


 ろっとばるとは、となりにいてくれる。

 でも、となりにいてくれるだけ。

 

 おおきな犬の、ろっとばると。

 でもおにいさまは、もっとおおきいの。

 ミンティシアをぎゅっとして、だっこしてくれるくらい。

 

 ぐいんって。

 みてるものが、ぐいんって。

 いきおいよく、たかくひろくなる。

 おおきく、ひろがる。

 

 ミンティシアのことを、「ミンティシア」って呼んでくれる。

 その声はとっても、やさしくて、ゆったりしていて。

 呼ばれると、なんだか心がふわっとした。


 ろっとばると。

 会いにいくと、ぎゅってさせてくれた。

 でも、もう会えない。

 ミンティシアは、おにいさまと行くから。


 さみしくて、ろっとばるとを見る。

 おにいさまは、またミンティシアをだっこしてくれた。

 こんなにたくさんミンティシアをだっこしてくれたのは、おにいさまだけ。

 さみしいって、わかってくれたのかな。

 おにいさまは、ミンティシアに絵をくれた。


 ミンティシアと、ろっとばるとの絵。

 おにいさまは、絵がじょうず。

 はじめてしった、おにいさまのこと。


 おにいさまの服をぎゅっとにぎったら、おにいさまもぎゅってしてくれた。

 おにいさまはおおきくて、あたたかくて。

 ろっとばるととちがう、おはなみたいなにおいがした。


 おにいさまはミンティシアをぎゅってしてくれる。

 ミンティシアと、いっしょにいてくれる。

 ……さみしくはならなかった。





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