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傾国の死後、私と妹【連載版】  作者: 小林晴幸
私と妹と、夜逃げの準備
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3.5/わたしとおにいさま

 はじめてお会いした『おにいさま』は、『おかあさま』とおなじ顔をしていた。


 おかあさまに会える日をまっていた。

 そうしたら、『おうたいし』さまに呼ばれた。

 はじめてあう人だったけど、ふしぎ。

 おかあさまじゃないのに、ミンティシアにやさしい。

 だけど、やさしくない。

 ミンティシアはもう、おかあさまに会えないと言う。

 

 どうして?

 ミンティシアが、わるいこだから?


 みんなみんな、ミンティシアがわるいこだって言う。

 でも、なにがわるいのか教えてくれない。

 ただわるいって、そう言うの。


 ミンティシアのことばに、おうたいしさまは首をふる。

 だれかがわるいんじゃないって。

 もうだれも、おかあさまには会えないんだって。

 ミンティシアだけじゃないって。


 じゃあどうして会えないの?

 

 しぬって、しんじゃったって。

 にんげんも、しぬの?


 むずかしくて、よくわからない。


 こまるミンティシアに、おうたいしさまは言う。

 まって。

 まだよくわからないの。

 まって、まって。


 おうたいしさまは、まってくれない。

 ミンティシアがまってほしいってことに、きづいてくれない。

 だけどそんなこと、どうでもよくなった。

 おうたいしさまは、言ったの。


 『おにいさま』に、会えるって。


 おかあさまにはもう会えない。

 だけど、代わりに。

 これからミンティシアは、おにいさまとずっと『いっしょ』だって。


 おうたいしさまが、そう言ったから。

 ミンティシアの頭は、『おにいさま』のことでいっぱいになった。


 おにいさまって、どんなひとだろう。

 おかあさまに、にてる?

 おかあさまみたいに、やさしい?

 まえからずっと、おもってた。

 優しかったらいいな。

 あたまをなでてくれないかな。

 ぎゅっとしてほしいなって。

 


 そうして、会えたおにいさまは。

 おかあさまに、とってもよくにていたの。



 おにいさまは、やさしかった。 

 ミンティシアのあしがおそくても、おこらない。

 とんできた泥からも、まもってくれた。


 おにいさまは、ぎゅってしてくれた。

 だっこしてくれて、ミンティシアをかるいって言う。

 おかあさまは、おもくなったって前に言ってたよ。


 だけどほんとうに、かるいみたい。

 ミンティシアをだっこしているのに、すたすたあるくの。


 おにいさま、おにいさま。

 はじめて会った、おにいさま。

 会ったばっかりなのに、やさしい。

 会ったばっかりなのに、ぎゅってしてくれた。


 あたまも、いつかなでてくれるかなぁ。




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