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傾国の死後、私と妹【連載版】  作者: 小林晴幸
私と妹と、夜逃げの準備
4/39

2.5/わたしとおにいさま

傾国の娘、独白。

ミンティシアの設定上、ひらがな多目でお送りします。

読み難かったらごめんなさい!

 わたしには、『おにいさま』がいるって。

 そう、『おかあさま』がおしえてくれた。


 毎年、お庭に蛍が放される頃に一回だけ。

 わたしは『おかあさま』にあえる。


 他の人は『ミンティシア』と目も合わせてくれない。

 だけど『おかあさま』は『わたし』の目を見て笑ってくれる。

 他の人は『ミンティシア』とお話してくれない。

 だけど『おかあさま』は『わたし』とお話しようとしてくれる。

 いつも、うまくしゃべれないけれど。


 いちど、さみしいって言ってみたことがある。

 いつもいつも、ひとりぼっち。

 かまってくれるのは、『おかあさま』だけ。

 どうして『おかあさま』だけ優しくしてくれるんだろう。

 それは『ミンティシアのおかあさま』だからだって教えてくれた。

 どうしていつもは会えないんだろう?

 優しくしてくれる『おかあさま』に、なんどでも会えたらいいのに。

 

 おかあさまも、さみしいって言った。


 『おかあさま』はさみしそうに笑う。

 わたしよりも、なんだかさみしそうだった。

 いつも、いつも、会うときの『おかあさま』はさみしそう。

 『ミンティシア』と、『リュケイオン』に会えなくてさみしいって。

 『わたし』と『おにいさま』のそばにいたいって。


 『おにいさま』ってだあれ?


 わたしに、おかあさまは教えてくれた。

 『わたし』は『おかあさま』の『子』で。

 『おにいさま』も、『おかあさま』の『子』。

 たったひとり、『わたし』と『おなじひと』。

 

 わたしとおんなじ?


 そう、わたしと『いっしょ』だっておかあさまが言う。


 『おとうさま』が同じひとは他にもいる。

 だけど『おかあさま』が同じなのは、『おにいさま』だけ。

 それに他のひとは『おにいさま』をおなまえで呼ぶけど、『わたし』だけは『おにいさま』とお呼びしていいんだって。


 『とくべつ』だって、『おかあさま』が教えてくれた。


 『おにいさま』ってどんなひとなんだろう。

 わたしと、おなじ?

 わたしと、いっしょ?

 よくわからない。

 だけどおかあさまが、『とくべつ』だって言う。


 いまは『とおく』にいるんだって。

 『とおく』ってどこだろう。

 どうして会えないんだろう?

 わたしと、おなじひと。

 会ってみたい。

 会ってみたいな……。


 わたしにとって『とくべつ』は『おかあさま』だけだった。

 ほかのひとはみんな、わたしを『じゃまもの』だって言うもの。

 だけど『おにいさま』も『とくべつ』だっておかあさまが言うから。


 おかあさまに、にてるかな。

 おかあさまみたいに、優しいかな。

 

 あたまを、なでなでしてくれる?

 ぎゅ、ってしてくれる?

 おはなし、きいてくれるかな。

 わたし、うまくしゃべれないけど。

 だけどおはなしできたら……いいなあ。


 『おにいさま』にあってみたい。

 優しくしてほしい。

 あたまをなでてもらいたい。

 ぎゅってしてみてほしい。


 それで、それで。

 いっしょにいてくれないかな。

 『おかあさま』は、いつもいっしょにはいられないから。


 いつか、『おにいさま』に会えるかな。

 会えたら、いいなあ。



 もうすぐ、ことしもお庭に蛍が放される。

 そうしたら、おかあさまに会える。

 

 おしゃべりしたいな、きいてほしいな。

 そう思ったいろいろも、きっとことしも口からはでない。

 それでもいいの。

 それでもいいから、ことしも会いたい。


 もうすぐ、蛍がみられる。

 ゆびでかぞえて、もうすぐと待つ。



 だけど、ことし。

 おかあさまには会えなかった。


 だけど、そのかわりみたいに。

 おにいさまが、むかえにきてくれたの―― 

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