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傾国の死後、私と妹【連載版】  作者: 小林晴幸
私と妹と、夜逃げの準備
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5.5/わたしとおにいさま

 うれしい。

 うれしい。

 うれしい。

 おにいさまが、あたまをなでてくれたの。


 だけど、なんで?

 ミンティシアのこと、どうしてなでなでしてくれたのかな。

 わからなくて、こまる。

 だって、だって、またおにいさまになでてほしい。

 だけど、どうやったらまたなでなでしてくれるのかな?

 もういっかい、って思うのに。


 『おにいさま』は、とっても、とってもやさしい。

 あたたかくて、ぎゅってしてくれる。

 それにずっと『いっしょ』だって言ってくれた。

 『おかあさま』だって『ずっと』なんて言ってくれなかったのに。

 『おにいさま』が『とくべつ』って、『おかあさま』は言った。

 ほんとうだったから、それがほんとうだったから。

 ぎゃくに、どうしていいのかわからなくなる。


 もしも、だけど。

 『いいこ』にしてたら、またなでてくれるかな?

 どうしたら『いいこ』になれるのか、わからないけれど。

 『おかあさま』はミンティシアのことを『いいこ』だって言ってくれた。

 だけど、ほかのひとはみんな、ミンティシアのことを『いいこ』じゃないって言う。

 『わるいこ』だって。

 

 どうしたら、どうやったら『いいこ』になれるのかなぁ。

 どうしたら、どうやったらおにいさまはミンティシアのことを『いいこ』って思ってくれる?

 『いいこ』じゃないからって、おこられることはいっぱいあった。

 だけど、なにかをして『いいこ』ってほめてもらったことはない。

 『おかあさま』は、どうしてミンティシアが『いいこ』だって言ったんだろう。

 どうしてなのか、聞けばよかった。

 聞いておけば、ほかのひとにも『いいこ』だって思ってもらえるようになったかもしれないのに。


 いっぱい、いっぱいおこられたけど。

 おこられたことを、みんななおしたら『いいこ』になれるかなぁ。

 しゃべらないで、おとなしくして。

 だめって言われたことは、ぜったいしないようにして。

 言われたことを、ちゃんとまもってほかのことはしない。

 じっとしずかに、おへやのなかですごすの。

 だれにも、おこられないように。

 おこられたら、すぐにあやまる。

 すごく、すごくさみしくて。

 すごく、すごくこわいけど。

 そうしていたら、『いいこ』になれる?

 そうしたらおにいさまはまた、ミンティシアのことをだっこして、なでてくれるかな……。




恐らく『お兄様』が望んでいるものとは、真逆の決意。

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