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染まる海、染める碧  作者: 泉水優飛
6/6

染まる海、染める碧 6章

     六、


 カレンデュラに戻ってからのアイディンの日常は、何も変わらなかった。市場には毎日調査に赴き、緋翠の精製所への顔出しも定期的に行う。小麦や胡椒の農場への連絡も欠かしてはならない。得意先顧客のご機嫌伺いは、ドゥーダと手分けしたとしても結構な数がある。アイディンに、時間的な余裕はない。たかが弟子一人、姿を消したぐらいで仕事を投げ出せるものではなかった。もちろん、何らかの事件性があれば話は別だ。だが、律儀なあの弟子はきっちりと置手紙を残していた。そこには、長い間世話になったのに手紙で別れを告げることの謝罪、アイディンに本当に感謝していること、突然姿を消したように感じるだろうが何も心配はいらないこと、そういったことが記されていた。エルヴァンが姿を消すのと同時に、当然と言えば当然だが、シェナイの姿も消えた。シェナイもきっちりと置き土産を残しておいてくれていた。新作と思われる装飾品の下書きだ。あの二人は、自分達の不在で起こりうる不利益を少しでも緩和させてから、すっぱりと姿を消したのだ。ドゥーダやザイードはそれをとても寂しがったが、アイディンがその感情を表に出すことはなかった。使う者がいなくなった机や、騒がしい声が聞こえないことに違和感を抱えながらも、努めて同じ生活を送ろうとしていた。



「アイディン」

「何だ、ドゥーダ」

「探さないのか? あの二人」

「何度言えば分かる。アイツらが自分の意思でそうしたんだ。俺達ができることはない」

 この会話もいったい何度目だ。そんなことより、手を動かせ手を。納品数が多すぎて、今社長自ら袋詰めを手伝っているところなんだぞ。

「そうだけどよー、やっぱりどこにいるかぐらい知りたいじゃねーか」

「俺は、あの二人のいる場所など知りたくない」

 知りたくても、知れない。聞かなかったのは自分だが、教えなかったのはあの二人だ。自分達は、ここカレンデュラでしか繋がっていなかったのだ。生まれ育った場所も、本当の住居の位置も、何も知らない。いっそ、偽名だと言われても納得してしまうぐらいに、個人情報を知らないのだ。それに気づいたら、それがあの二人にされた線引きに思えてしまって、無理に探そうと思う気がなくなってしまった。

「あーあー、お前は冷たい男だよ、本当に」

「何とでも言え」

 四人だったのが、ドゥーダと二人に戻っただけだ。それに、今の自分にはドゥーダだけではなく、ザイードやモーヴといった従業員達がいる。たった二人の不在を寂しく思う暇など自分にはない。

「社長ー、すいやせん。こっちもお願いしていいですかー?」

「えぇい、もうキリがない!!」

 アイディンは作業机から離れて、別で同じ作業を続けていた従業員達に告げる。

「お前ら、聞け! 今から一番多く袋詰めをした者に、特別手当を出す! 手が空いているなら別の作業工程の者も参加していい!! これに乗る奴はどれぐらいいる!?」

「はーい」

「おー」

 至るところから歓声が上がる。モーヴが小さな手を力いっぱい振っているのが見えた。二十名ほどが手を挙げただろうか。この人数が競い合えば、少しは早く終わるだろう。

「言っておくが、もちろん丁寧にだぞ! 詰め終わった商品は確認するからな。傷なんてついていたら、それは数えないからな!」

「ねー社長ー。袋が足りないよー」

「何だと?」

 そう言って、本格的にドゥーダのいる席から離れていく。その背中を眺めながらドゥーダは思う。

(俺が冷たいって言ったのは、二人に対してじゃねーよ)

 アイディンの兄が亡くなったのは、アイディンがカレンデュラに戻ってきてから聞いた。そのアイディンを、エルヴァンとシェナイが随分元気付けたらしいことも、見ただけで分かった。その二人の不在を、アイディンが何も思わないはずがないのだ。

(お前はもう少し、自分に対して優しくなっていいんじゃねーの)

 エルヴァンの机をまだ捨てられないだけで、気にしてるのなんて丸分かりだ。シェナイが着けていた耳飾りと同じデザインの物を、殊更丁寧に扱っているのも知っている。少しぐらい、自分やザイードに本音を漏らせばいいのに。

 ただ一人アイディンの下に残った緋翠事業創立メンバーであるドゥーダの、その心配が離れた背中に届くことはなかった。



 それからもアイディンは忙しい日々を過ごした。ドゥーダやザイードの何か言いたげな目は無視した。

(今日も疲れた・・・)

 随分久しぶりに帰った部屋は、掃除をしていないため埃の臭いが目立っていた。ランプに火を灯そうとして、かすかに物音が聞こえたのと、背後から羽交い絞めにされたのはほぼ同時だった。

 喉元に冷たい刃が添えられているのを感じる。殺気も何も感じなかった。

(誰だ・・・!?)

 瞬間的に、今カレンデュラで自分の命を狙う者がいたかを考える。不特定多数が相手なら分からないが、ぱっと浮かぶ個人はいなかった。あまり敵を作りすぎないようにとドゥーダに言われた結果、アイディンも気をつけるようにはなったのだ。

「動かないで」

 暗闇での刺客のその声に、聞き覚えがあった。ここ最近聞いていないが、自分が間違えるはずはなかった。自然と身体の力が抜ける。アイディンが騒ぐ気がないと分かったのだろう。背後からの拘束が解かれて、目の前に回りこまれる。月明かりにはっきりと人影が見える。

「シェナイ、か?」

 思わず間抜けな声が出た。それを恥ずかしいと思う心の余裕はアイディンにはない。どこに行っていた、何故今姿を見せた、いろいろ思うところはあるが。

 目の前のシェナイは、アイディンの知るシェナイではなかった。髪が伸びたとかそういうことではない。前から身なりは良かったが、ここまで一目で分かる上等な物を身に着けてはいなかったと思う。それに一番違うのは肌の色。健康的に小麦色に焼けていた彼女の肌は、透き通るような陶磁器の白だった。

「そうよ。あなたの知ってるシェナイで合ってるわ」

「その、肌の色は」

「肌の色ぐらい、女なら簡単に変えられるわよ。何のためにお化粧があると思ってるの?」

 シェナイが眩しいぐらいに白い手の平をアイディンに見せつけるように振る。吸い寄せられてしまうような白だった。肌の色と相俟って、目の色がより一層青く見えた。見慣れたはずの彼女が、全く別人になってしまったような錯覚に陥る。

「元気そうで、何よりだわ」

 近くのベッドに腰掛けたシェナイは、今まで会っていなかったことが嘘のようにいつも通りに見えた。アイディンは、どうやってシェナイと会話していたのかすぐには思い出せないでいるのに、だ。

「突然どうした。お前には夜這いの趣味でもあったのか?」

「ふふ。アイディン、あなたについて来てほしい場所があるの。私は迎えに来たのよ」

「ついて来てほしい場所?」

「ちなみに、あなたに拒否権はないから」

 おい。そんな強引な誘い文句があるか。

 目線で伝わったのだろう。シェナイは身体を小さく震わせて笑う。目尻の横に涙が光っていた。それを長く白い指で拭い取る。アイディンはその一連の動作に見蕩れていた。

「お願い。あなたの力がきっと必要になるわ」

「・・・それは、お前達が姿を消した理由にも関係しているのか」

「アイディン、あなたいい勘してるわね」

「アイツが、関係しているんだな?」

 それは最終確認だった。その返答次第では、アイディンは簡単に首を縦に振る。

「えぇ・・・、お願い、あの子を、エルヴァンを助けて」

 その一言で、明日以降のアイディンの予定も行く先も決まった。


 夜も明けないうちに馬で走り出した先は、王都イストレージャだった。馬に乗るシェナイを初めて見たが、その姿は随分と様になっていた。王都に辿りついてからも、アイディンはシェナイに目的地を教えられることはなかった。ただ、その背中を追いかけるだけだ。

 シェナイに連れられるままだったアイディンは、景色がだんだんと予想外になっていくのを感じていた。大きな門の前に立っていた兵士がシェナイを見て、深くお辞儀をする。それを気にすることなくずんずんと突き進むシェナイの背中を見て、とんでもなく嫌な予感が募る。

「おい、おいシェナイ」

「何ー?」

 呼び止めたアイディンに振り向くことなく、シェナイの返事が届く。

「一つ確認させてくれ」

「どうぞ?」

「俺の勘違いでなければここは」

「たぶん、アイディンの思う通りで間違いないわよ」

「なら、やはりここは王宮なのか?」

「ええ」

 できれば否定してほしかった。

 アイディンは今、王都イストレージャにある、限られた者にしか入ることを許されていない領域にまで足を踏み入れていた。一応出は有力貴族のアイディンにだって立ち入りは許されていない。即ち、王族やそれに仕える者にしか立ち入ることはできない場所にである。

「シェナイ、お前が誰かに仕える女官だという可能性は」

「アイディンは女官にあそこまで深くお辞儀をすると思うの?」

 思わない。ならそうなのか。アイディンの儚い望みは簡単に踏み砕かれてしまった。

「シェナイ、お前は、誰だ」

「・・・騙すつもりはなかったのよ。私はこのルスタ国の姫。現国王レヴェント王の一番上の娘よ」

「シェナイ・・・」

「あぁ、畏まるのはやめてね。姫君扱いはうんざりなの。私が姫なのは、私が偉いからじゃないんだし」

 突然判明した事実に驚くが、今までと同じように接していいというのは素直にありがたかった。シェナイを今更姫君扱いなど、アイディンにはできない。そこで、アイディンは一つの可能性に気づく。

「おい、シェナイ。お前、姫と言ったな」

「言ったわよ」

 おい、それではもしかして。お前が姫だと言うのなら。

「アイツも、エルヴァンも姫なんだな?」

 なんという美人姉妹な姫君達だ。ならばもう少し、女性らしい格好をすれば良かったものを。

「違うわよ。あの子は姫なんかじゃない」

「え・・・」

 なら何だ? その疑問はすぐに晴れた。叫び出さなかった自分を褒めたいぐらいに衝撃の事実がシェナイの口から語られたからだ。シェナイが姫なことなど、霞むほどの驚きだった。

「あの子は、私の弟で、王子よ」

 シェナイは、確かにそう言った。


 何度か廊下を曲がりくねった先で通された部屋には、見慣れた弟子が待っていた。いっそ憎らしいほどに変わらない姿だ。身なりが少しばかり良くなったところで、シェナイに比べれば、取るに足らない変化だった。そのエルヴァンが、部屋に入ってきたのがアイディンだと気づいて、驚きの表情を浮かべる。

「アイディン殿! どうしてここに」

「おい、エルヴァン、お前」

 その質問への答えはひとまず後だ。こっちにだって確認したいことはそれこそ山ほどある。いろいろあるが、まずはこれだ。

「お前、男だったのか?」

「ああ」

 さも当たり前に、エルヴァンはアイディンの疑問を肯定した。本人にそう肯定されて、アイディンは今までのエルヴァンの振る舞いを思い出し、そして納得するしかなかった。

 通りで気にしないはずだ。安宿に泊まったとき、同性の師弟が同じ部屋で寝起きすることは何らおかしいことではない。髪を切り落としたことだってそうだ。髪は女の命ではあるが、男もそうかと言えばそうでもない。自分の容姿に無頓着であったのも、危機感が薄かったのも、まさか男の自分がその対象になり得ると想像できなかったからであろう。背負ったときにあまりにも慎ましやかだったのも頷ける。男にそんな膨らみがあるはずがない。身分だってそうだ。初めて会ったとき学術所に通ったことがないと言っていたが当然だ。王族がそんな場所に通うはずがない。王宮内で英才教育を一対一で施されているのであろうから。

「何故黙っていた」

 ただ一言、自分の性別を言ってくれていたら、こんなに長い間勘違いすることもなかったのに。ドゥーダだって、エルヴァンのことを女だと思ってるぞ。

「私からすれば、まさか女性に間違われているとは思いもしなかったのだ。私自身、その勘違いに気づいたのが、姉上に言われてからだったしな。気づいたときに私は訂正しようとしたのだが、姉上が女性と勘違いされている方が身分を勘付かれることはないと言うので、申し訳ないがそのままでいさせてもらったのだ」

「シェナイ・・・」

 勘違いしたのは結局アイディンだが、その片棒を担いでいたのはお前か。おい、そこで舌を出すな。申し訳なさそうにするなら、演技でももう少しそれらしく(、、、)しろ。そこにいるお前の「弟」を見習え。

「けれど」

 そこで、エルヴァンの言葉がまだ続くようなので視線を向ける。

「身分を隠したのはわざとだ。すまない」

 エルヴァンが深く頭を下げる。兵士が見ていたら、不敬罪でアイディンの首が飛ぶかもしれないからやめてほしい。おい、ここはカレンデュラではないんだぞ。

「市場でアイディン殿のことを聞いたときに、カレンデュラで一番の商人だということの他に、王族や貴族などの支配階級を嫌っている男ということも知ったのだ。そんな理由で門前払いはされたくなかったのでな、悪いとは思ったが伏せさせてもらった」

 エルヴァンに倣って、シェナイも深く頭を下げる。きっと、黙っていることを心苦しく思う場面が二人にはあったのだろう。

 アイディンには二人を責めることはできなかった。エルヴァンの言う通り、もし仮に、初対面のときにエルヴァンが身分を正直に明かしていたら、アイディンは話を聞くことすらしなかっただろう。エルヴァンとシェナイが名もない一市民としてアイディンの前に現れたからこそ、この縁は結ばれたのだ。

「二人とも、頭を上げろ。俺を殺したいのか」

 こんなところ、誰かに見られたらどうする。一国の王子と姫に頭を下げられるなど生きた心地が全くしない。別に、身分を隠していたことを怒っているのではない。

「それで、何故突然姿を消した? ご丁寧に置手紙をしてまで」

 どちらかと言うと、そちらの方がアイディンの怒りを買う行動だった。事情はあったのだろうが、薄情だと少し思ったのも事実だ。

「アイディン殿の兄上が、亡くなったであろう。殺めたのは私の兄だ。アイディン殿と一緒にいる場面も見られてしまった。このままアイディン殿のそばにいたら、迷惑がかかると思った」

 そうか、エルヴァンが王子ならば、あのティメル王子が兄にあたるのか。

「似てないな」

「母が違うからな」

「またそれか」

 いったい何人の妃がいたんだ、レヴェント王には。

「俺の兄のことは、お前が気にすることではない。まだ複雑だが、仕方がなかったのだと思っている。兄が愚かだったのだ」

「けれど、命を奪う必要はなかった」

 あぁ、お前はあの夜もそう言ってティメル王子に食って掛かっていたな。あれは兄弟喧嘩の一つだったのか。命が幾つあっても足りないような、正直近付きたくもない喧嘩だが。

「それは、私が謝らなければいけないことだわ。あの夜、ティメルが屋敷に来たのは私のせいよ。私が兄に聞いたの。「アイディンを脅しているのはあなたの差し金なの?」って。そんな方法を一番嫌う人だって分かっていたのに、頭に血が上って冷静な判断ができなかった。その結果、不名誉な勘違いを生んだ行動を取った、あなたの兄が斬られたの。本当にごめんなさい」

 ティメル王子があの場に現れたのはそういう事情だったのか。ティメル王子の取った行動は許せないが、ティメルがその行動を取った気持ちは分かる。一概に兄の仇として恨むことはできそうもなかった。

「シェナイ、お前ももういい。いつかどこかの機会で俺が一発くれてやるさ」

 間違いなく次の瞬間死にそうだけど。だから二人とも、そんな顔はよせ。

「ありがとう・・・アイディン」

 涙ぐむシェナイをエルヴァンが支える。男だと知った今でも信じられないぐらい、美しい二人は姉妹にしか見えなかった。

「まだ聞きたいことはあるぞ。何故、そうして姿を消したお前達に俺は呼ばれたのだ? その隠していた身分を明かしてまで」

「それは私も聞きたい。姉上、どういうことなのだ?」

「何だ、お前がシェナイに言って呼んだのではないのか」

 薄々、アイディンを見たときの反応で違うとは思っていたが、エルヴァンのこの発言で決定的になる。ならシェナイの独断なのか?

「私が呼んだの。アイディンなら絶対にエルヴァンの味方になってくれると思ったから。これからは、味方は一人でも多いに越したことはないもの」

「これからのこと?」

「アイディンももちろん聞いたことぐらいあるでしょう? 『国一番の宝』の話」

「レヴェント王が、王太子を決めるために言ったというアレか?」

「えぇ」

 聞いたことがあるも何も、結局断ったがティメル王子の付き人にそれの入手を依頼されたことすらある。この国でその話を聞いたことのない人間の方が少ないだろう。

「おい、エルヴァンは王子で間違いないんだな?」

「もちろんだ」

 おい、まさか。お前もそれに参加していると言うのか?

「エルヴァン、お前の王位継承権は何位だ」

 アイディンには一つ、その順位に心当たりがある。ドルキがかつて吐き捨てるように言っていた順位が。

「十五位だ」

「そうか」

 やっぱりか。なら、王太子有力候補のティメル王子に闘いを挑んでいるというのはお前のことか。

「国一番の宝を聞いてきたのはそのためか」

「そうだ。今思えば短絡的だが、あのときは人に聞くこと以外の方法が浮かばなかったのでな。一人目で当たりを引いて本当に良かった」

 エルヴァンのことを男だと気づけていたら、もっと早くにこの事実に辿りつけていたのかもしれない。それこそ、ヒントはそこら中に散らばっていたように思う。

「明日、その答えを父上の前で見せることになっているのよ」

「明日?」

 随分と急な話だ。

「その場にはもちろんティメル王子も、他の王子だっているわ。皆、各々が用意した答えを示すんだから。けれど、今のエルヴァンには味方が少なすぎるわ。私一人の力なんてたかが知れてる。女は黙ってろ、なんて誰かが言い出さないともかぎらない」

 王位継承権を有するのは男子だけだ。古い考えを持っている者は、姫であるシェナイがエルヴァンを擁護しても聞く耳を持たないかもしれない。だから、シェナイは独断でアイディンを呼んだのだ。

「それで、俺にコイツの味方をしろ、と」

 確かに、他国への侵攻を繰り返すティメル王子よりはエルヴァンの方がアイディンにはずっといい。けれど、アイディンはエルヴァンの目指すところを知らない。無責任に味方はできない。正直欠片ほども疑ってはいないが、エルヴァンがアイディンの嫌いとする王族である可能性だってゼロではないのだ。

「エルヴァン、お前が立派な王になるために目指すものは何だ? お前は明日、王の前に何を差し出すつもりなんだ」

「アイディン殿、私はかつてザイード殿に言ったことがある。ザイード殿はそれを笑わずに聞いてくれた。そして、私はルスタ国をより良い国にすると約束したのだ」

「ザイードに、お前は何と言ったんだ?」

 あの聡明な男がエルヴァンの理想を認めたというのか。

「私はな、全ての人が幸せに暮らしていける仕組みを作りたいと言ったのだ。私一人の力では難しいかもしれないが、その仕掛けの一つぐらいは作ってみせたいと」

「あぁ」

「アイディン殿の下で学んだ経済学の知識はそれに大いに役立つ。私は、このルスタ国を皆が笑って暮らせる、そんな国にしたいのだ」

 あぁ、子供でも考えるその理想論をこうも堂々と言えるエルヴァンに、アイディンの胸のあたりが熱くなる。誰が笑ったとしても、その理想をアイディンが笑うことはない。

「奴隷制度も失くしてみせる。人としての権利や自由を奪うことなど、あっていいわけがないのだから」

「そうか」

 もう、アイディンからエルヴァンに伝えることはない。一番知ってほしかった部分は、始めからこの弟子は自分の胸に持っていたのだ。

「お前は、王に国の宝は知識だと言うつもりなのか?」

 アイディンはエルヴァンの言いたいことは分かるが、それを王や他の王子達が理解するのは正直難しいだろう。

「私の思う宝は、すでにこの国に溢れている」

 そう言って、エルヴァンは笑う。今は明かす気がないのだろう、それ以上エルヴァンが口を開くことはなかったが、アイディンにはそれでかまわなかった。この王子になら、国を託してみたいと思った。

「アイディン殿、明日は玉座の間の片隅にいてくれるだけでいい。弟子の最初で最後の講義だ。ぜひ、聞いていてほしい。もちろん、姉上にも」

「エルヴァン、もちろんよ」

「俺が玉座の間に入ってもいいのか。たかが一商人だぞ」

 仮にアイディンが本来の貴族としての身分を明かしたとしても、国のことを決める一大事だ。入室を許可されるとは思えなかった。

「それは大丈夫よ。私が潜り込ませてあげるわ」

 シェナイが微笑む。話してる内容は悪巧みなのだから、そんなに綺麗に笑わないでほしい。けれど、彼女がそう言うなら大丈夫なのだろう。

「無様なマネを晒したら許さないからな」

 大きく頷いたエルヴァンの顔は、弟子でもあり王者の風格をも漂わせていた。



 ぜひ王宮に泊まってくれと言うエルヴァンから何とか逃げ切って、アイディンはイストレージャの宿屋で一息ついていた。窓から見える夜のイストレージャは、カレンデュラとは当たり前だがだいぶ違う。開放的な親しみやすさ溢れる美しさを誇るのがカレンデュラだとすると、王都イストレージャの美しさは触れない絵の中の宝石のような美しさだ。近付いていくのを拒むような、そんな何かがある気がする。アイディンの生まれはイストレージャだが、カレンデュラの方が性に合っていると思う。

 明日のことを考えると、とても今夜は眠れそうにない。それは、アイディンだけではないようだが。夜風に当たりに出たベランダに、アイディンと同じ考えの先客がすでにいた。

「お前は、王宮でなくていいのか」

 何故かアイディンの横の部屋に泊まっているシェナイである。彼女は、ぼんやりとしてどこも見ていないようだった。

「いいのよ。王宮って堅苦しくて息がつまりそうで嫌い。エルヴァンに会いに行くのでないなら、私だって寄り付かないわ」

「そうか」

 姫君が何を言っているんだとは思うが、息苦しさを感じたのはアイディンも一緒だ。自分の生家だってそうだったのだ。自分が望まない場所にいる苦痛は、少し分かる気がした。

「アイディン」

「ん?」

 なので、二人隣り合ったベランダで時間を過ごすことにする。

「明日、勝てるかしら」

「どうだかな」

 それはその場になってみないとアイディンには分からない。

「シェナイ、お前、肌の色を変えていたのは変装のつもりだったのか?」

「当たり前でしょ? さすがに姫がそのまま街に紛れるのを許してはもらえないもの」

「なら、その名も偽名だったのか?」

「いえ、本当の名よ」

「何故。危険ではないのか」

 身分を隠すなら、肌の色よりまずはそれだろう。

「私はちゃんと偽名を考えていたのよ。それをエルヴァンが、私が名乗る前に本名で紹介しちゃうんだもの。そこで訂正する方が不自然だったから、そのままになっちゃっただけよ」

「あぁ、なるほど」

 考えが足りていなかったのはエルヴァンだけか。

「でもね、今は偽名を使わなくてよかったって思うの」

「何故だ?」

「アイディン達は、ただのシェナイとしてその名を呼んでくれたから」

「シェナイ・・・」

 風がシェナイの短い金の髪を攫ってゆく。

「私はね、姫を押し付けられて生きてきた姫君だったの。そこに私の意志は関係ない。大事にはされたけど、それは私としてじゃなかった。それが苦しくなってね、姫君として振舞うのをやめたの。エルヴァンだけがそんな私に笑いかけてくれた。それにどれだけ私が救われたか、言葉では言い尽くせないわ。だから、エルヴァンの作りたい国の助けを私はしたい。エルヴァンのためなら何だってするわ」

「シェナイ」

 初対面のときから全く女性らしく見えなかったのは、彼女なりの反抗だったのかもしれない。カレンデュラを訪れるシェナイはいつも楽しそうだった。それは、姫君としてではなく、ただのシェナイとして振舞えるからだったのだろう。

「姫として振舞うのをやめたって具体的に何をしたんだ?」

 純粋な好奇心で聞いてみる。アイディンには、目の前のシェナイしか想像できない。肌の色も少しずつ見慣れてきてしまっている。

「言葉遣いとか、大股で歩くとか、今思えばくだらないことよ。あ、けど髪を切ったことだけはエルヴァンにも悲しい顔されたわね」

「髪・・・」

「腰ぐらいまであったのを、ばっさりと切ったの。私の中で、いろいろ飾り付けられる長い髪は姫の象徴のようなものだったから」

 なんて勿体無い。

「勿体無いな」

 心と同じ言葉が飛び出していた。だって、本当に勿体無い。細い金糸の髪はさぞ見事だっただろうに。

「なに、アイディンも女の価値は髪だとでも言うの?」

「いや・・・、純粋にお前の髪なら綺麗だったろうと思って。・・・見てみたかったな」

「・・・・・・」

 シェナイがあんぐりした顔でアイディンを見ている。何だ、何か変なことでも言ったか?

「どうした、シェナイ」

「・・・ううん。何でもないわ」

(これで無自覚なのよね・・・)

 アイディンが、自分のことを女性として意識していないだろうことを知っている。そのことにシェナイが安心していたのも事実だ。いつか離れることになる、そう思っていたから。だから、その彼がまさかそんな優しい顔で「見てみたかった」なんて言うと思わなかったのだ。一瞬、また伸ばしてみてもいいかと思うぐらいの破壊力があった。

「・・・風が冷えてきたな。そろそろ戻るか。お前も眠れないだろうが、せめて横にはなっておけよ」

「えぇ。じゃあ、おやすみなさい」

「あぁ」

 そう言って、二人は各々の部屋に戻っていった。どうせ眠れないだろうが、少しでも身体は休めておかなくては。身体の疲労は思考を鈍らせる。無理やりにでも休息は必要だった。


 そして、運命の日がやってくる。



(凄いな)

 玉座の間など、当たり前だがアイディンには縁がない場所だ。自分がここにいるのが今だ信じられない。

「私からあまり離れないでよ。あなたは私の護衛なんだから」

「分かってる」

 シェナイの手回しで、アイディンは無事玉座の間に入ることを許された。アイディンが護衛なんて、心許なすぎるとは思ったが他にいい手は浮かばなかったので仕方がない。

 シェナイと二人、扉すぐ近くの片隅で王や王子の入室を待つ。まだこの場の主役達は姿を見せていないのだ。

 しばらくして、続々と玉座の間に煌びやかな男達が入ってくる。その中にはティメル王子やエルヴァンもいる。彼らはあらかじめ決められていたであろう位置で直立し姿勢を整えた。そして、玉座の主を待つ。

(あの男が・・・)

 最後に入って来た人物に見るからに一人、風格のある人物がいる。ティメル王子とはまた違う王族としての風格だ。柔軟そうな眼差しは、少しエルヴァンに似ている気がした。軽くウェーブがかかった金の髪に、誰が見ても整った顔つき。歳を感じさせない真っ直ぐと伸びた背筋。間違いない、彼がルスタ国の現国王レヴェントだ。幾多の美姫と浮名を流したのも頷ける。

 国王は厳かに玉座に掛けると、傍らに控えていた老年の男性に目線で合図した。そして、その男が前へ一歩進み出る。

「彼はこの国の宰相よ」

 シェナイから解説が入る。どうも、この場を取り仕切るのは宰相の役目らしかった。この場では議長のようなものだろう。

「それでは、早速始めさせて頂くことに致しましょう。ティメル第四王子、前へ」

 沸いて出た疑問に、小声でシェナイを問い詰める。

「おい、おいシェナイ」

「何?」

「何故いきなりティメルからなんだ。第一王子達はどうした」

 こういうときは、王位継承順なのではないのか? 何故第四位から?

「あぁ、一番上の兄は生まれつき病弱でね。頭は良いんだけど、とても国政を任せられる男じゃないわ。二番目はただの馬鹿。三番目は国自体に興味がないのよ。自分の屋敷に篭ってずっと絵を描いているわ」

「何だそれは・・・」

 なら実質はティメル王子が第一位みたいなものではないか。世間がティメルに期待をするのは、そういった事情もあったのか。

 宰相に呼び上げられて国王の前で膝を折ったティメルは、確かに王としての風格をすでに持っているように見えた。アイディンには、彼が身に着けた真紅のマントが血の色に見えて嫌な気分にしかならないが。

「父上、お久しぶりでございます」

「おぉ、ティメル。おぬしも息災で何よりだ」

「は、ありがたきお言葉にございます」

 頭を垂れていたティメルが玉座の王を見据える。アイディンから表情は見えないが、彼の強い空気は簡単に感じることができた。

「父上、我の考える国の宝とは力です。そして、領土です」

 そう厳かにティメル王子が告げる。分かりやすい感嘆の声がそこら中から漏れる。アイディンはそれに舌打ちしたい気持ちを懸命に堪える。反吐が出る。その武力のために必要な金を、民から搾取するのだ。何も全ての力が悪いわけではないことは分かっている。他国に攻め入られたとき、国を守る力は確かに必要だ。それを担うのは、ティメル王子が一番適任なのだろう。けれど、侵略の力を認めることはアイディンにはできそうもなかった。

「今回は、新たに手に入れた北方の領土をお持ちしました。気候の穏やかな、過ごしやすい土地です。ここに新たな街を作れば、民が移り住むでしょう。きっと大きな都市になります」

 そう言って、目録を差し出す。宰相がそれを受け取って、レヴェントに渡す。それに軽く目を通して宰相に戻す。

「うむ。ご苦労だった。ティメル、おぬしに目立った怪我がなくて良かった。下がってよいぞ」

「はい、失礼致します」

 一礼してティメル王子が元いた位置に戻る。次の王子の番になるのだろう。呼び上げられた第五王子が、ティメルと同じように父王に頭を垂れている。

「アイディン」

「なんだ、シェナイ」

「ティメル王子を、ただの侵略者だと思わない方がいいわよ」

「どういうことだ」

 心でも読まれたのかと思った。驚く気持ちを隠して、シェナイの話に耳を傾ける。どうせ、エルヴァンの番になるまでは暇なのだ。

「外から見たら、兄のやっていることは一方的な侵略かもしれないけどね、それだけじゃないのよ。彼は、攻め入った国の民に恨まれてなんかいないのよ」

「何だと?」

「兄は徹底的に略奪行為を禁止しているわ。その土地に暮らす人からしたら、治世者が変わるだけなの。他国の重税に苦しんでいた人達から、感謝されることだってある。領土にしたら終わりじゃなくて、その後の暮らしの基盤をきちんと用意するから」

「そう、なのか」

 それでは、他国の民からしたらティメル王子こそが救世主ではないか。正直、それを聞いて少しだけ見る目が変わった。

「もちろん、私はエルヴァンを応援しているわ。けれど、ティメルも私の兄よ。何も考えずに戦争を起こしてるんじゃない。それは知っておいてほしかったのよ。まぁ、だからこそ手強いんだけどね」

「そうだな」

 無意識にティメル王子に視線を向けると、一瞬彼と目が合った。まずい。これはアイディンに気づかれたかもしれない。

 王子達の発表は続いている。ある者は輝く宝石を、ある者は美しい女を、ある者は単純に金を、と手を替え品を替え父王の興味を引こうとしている。レヴェントはその全てに同じように労をねぎらっている。今、どの王子が優勢なのかはその反応だけでは分からない。その一連の流れの中で、第十位の王子だけ飛ばされたのが、アイディンには少し疑問だった。アイディンはしばらくその様子を壁の花となっているシェナイの隣でただ眺めていた。

 そして、ついにエルヴァンの番になった。

「では最後に、エルヴァン第十五王子、前へ」

 エルヴァンが呼びかけに応じ前へ進み出る。額には緋翠の頭飾りが光っている。王族の装束なんて目じゃないぐらいに、エルヴァンの姿は見事だった。

「おい、シェナイ。アイツで最後なのか?」

「エルヴァンの下にも王子はいるわよ。けど皆諦めちゃったり、母の身分が違いすぎてこの場にいる資格を得られなかったりで、エルヴァンが最後になっちゃったみたいね」

「なるほど」

 争わずして相手が引いてくれたのは、素直にありがたいと思っておくべきか。

(いよいよだな・・・)

 王の前に佇んだエルヴァンは驚くほどに落ち着いていた。自然体の自分を、外側から見ているような感覚すらする。宰相に促され、レヴェント王と視線を合わせる。自分と目元がよく似た顔をしっかりと見て、口を開く。

「父上、私は、『国一番の宝』をこの場に持ってくることはできませんでした。私が父上に御見せできるのは、目に見える形のある何かではないからです」

 一瞬その場が静まり返る。エルヴァン、お前馬鹿か。

「なんだと・・・!」

「それなのにむざむざこの場にいるというのか。王族の恥さらしが」

「そうだ、お前は商人の弟子になっていたそうではないか。そのまま商人として一生を過ごせばよかったのではないか?」

 一斉にエルヴァンへの怒号が飛ぶ。嘲笑も聞こえる。アイディンが思っていた以上にエルヴァンの味方がいない。まぁ、始めから否定で入ったエルヴァンもエルヴァンだったが。こういった場のコツも教えてやっておくべきだったかもしれない。

「私が得たものはそれです」

「何!?」

「おっしゃった通り、私はとある聡明な商人に師事しました。そこで、私はいろんな知識を学んだのです」

「お前、まさか持ち帰ったのはその知識だとでも言うつもりではないだろうな!」

「そうだそうだ!! 知識がなんだというのだ!」

 うるさい。お前達が先程示した宝石やら美女やらに馬鹿にされる謂れはない。アイディンはシェナイにしか聞こえないような小さな舌打ちをして堪える。

「? 兄上達は、教育の大切さをご存知ないのですか?」

「今はそんな話をしているのではない!」

「御託はもういい。お前は結局、父上の前に何も持ってくることができなかったんだな。父上、これ以上こやつの話を聞く必要はありませんぞ!」

 そうだそうだ! 数人の王子が父王に言い募る。ティメル王子や一部の王子はその様子をただ静観しているようだった。

「よい、今はエルヴァンの話を聞いてやろう」

「しかし父上・・・!」

 なおも言い募る王子にアイディンは居ても立ってもいられなくなって、前へ一歩進み出た。視界の端に慌てるシェナイが映ったが、許してほしかった。エルヴァンも、驚いた顔をしていた。そして、口を開く。

「恐れながら宜しいでしょうか。私はカレンデュラで商人をしております、アイディンと申します」

 突然のアイディンの発言に視線が集中する。今アイディンの存在を認識した者も大勢いたことだろう。そして集まった視線は、アイディンを糾弾する声に変わる。

「王の御前であるぞ。お前のような者が口を利いてよい場面ではない!」

「誰だ、たかが商人をここまで通したのは!」

 予想はしていたが、散々な言われようである。このままでは、誰かが命じた刃がアイディンに迫って来るのも時間の問題かもしれない。

「よい、発言を許す。アイディンという名にも覚えがあるしな」

 そこで、玉座のレヴェント王が口を開く。助かった。首と胴が離れることはなさそうだ。思っている以上に自分の知名度はあったらしい。

「エルヴァン王子は王族としての身分を隠し、名もない一市民として私めの弟子となりました。かつての師匠から、その弟子の説明をさせて頂きたいと思います」

「聞こう」

「ありがとうございます」

 これ以上ないほどに頭を下げる。話を聞く余裕のある王でよかった。

「ときに国王陛下。陛下は、こちらをご覧になったことがおありでしょうか?」

 懐から大振りの緋翠がついた装飾品を出す。シェナイが普段身に着けている物と同じ耳飾りだ。

「存じておる。最近城下でも評判の品であろう? 私も幾つか所有しておる。まるでかのペリル海を内包したかのような、美しい宝石だ」

「では、この石を見出したのがエルヴァン王子だということはご存知ですか?」

「それは知らなかったな」

「この石は、元はどこにでも転がっているような何の変哲もない、何の価値もない石でした。これは、原料となる石を火で加熱することで、このような美しい色に変化致します。正しい方法を取らねば、せっかくの価値在る物も宝の持ち腐れとなってしまうのでございます」

「ふむ・・・。その石にはそのような秘密があったのか」

「そして国王陛下。それは人も同じことだと私は思います」

「ほぅ」

「エルヴァン王子は、失礼ながら私の弟子となった直後、何も知らない世間知らずでございました」

 その発言を聞いて、エルヴァンが苦笑する。やはり、そう思われていたのか、といった顔だった。

 エルヴァンは本当にひどかった。金の使い方すら知らなかった。助ける必要のない者を助け、アイディンに損をさせたこともある。掃除一つできないことには眩暈すら覚えた。当たり前に厄介事を抱え込んできた。警戒心のなさで危険な目に遭ったこともある。けれど、エルヴァンの周りにはいつも笑顔があった。エルヴァンが自分の選択を後悔したことはなかったと思う。

「けれど、エルヴァン王子は学ぶことを選びました。知る努力を惜しみませんでした。何が正しくて、何が間違っているかを、自分で判断できる力を手にされました。それは、言葉にすれば簡単なように聞こえますが、とてつもなく難しいことであることを、国王陛下ならば分かって頂けるかと思います」

 正しい知識を、正しく与えられねば人間だって腐ってしまう。周りの人間の話をしっかり聞いて、外から与えられるものを自分で取捨選択して、良いと思ったものを素直に吸収してさらに輝く。それで価値さえ変わることがある。緋翠と同じだ。

 全ての人が幸せに暮らしていける仕組みを作りたいとエルヴァンは言った。甘すぎる理想論だが、今のエルヴァンは何も知らず無責任にそう言っているのではない。それに必要な知識を、決意を胸に堂々と謳っているのだ。

「そんな弟子を、私は師匠として誇りに思います」

 もう二度とこんなことは言ってやらない。自分の柄ではないのだ。

 アイディンの後を受けて、エルヴァンが話し出す。アイディンの発言を聞いたエルヴァンはとても嬉しそうだ。

「父上、国の宝とは財宝でも領土の広さでもありません。それは、この国に暮らす民の笑顔です。ぜひ父上にも一度見て頂きたい。民が幸せに暮らすからこそ、私達も王族としてあれるのです。私は学びました。私達の贅沢のために民がいるのではありません。民が何不自由なく暮らせるために私達がいるのです。私は、この国の礎になりたい。私の幸せは、私一人で叶えられるものではないのです」

 これが、エルヴァンの答えだ。彼がカレンデュラで学んで、気づいたこと全てだ。

「よ、よくもそんな絵空事を恥ずかしげもなく言えたものだな!」

 一瞬エルヴァンに聞き入っていた王子が声を上げたことによって、その場はまた騒然となる。説得されかかってしまった自分を認めたくないのだろう。別に、それだけで納得させられるとはアイディンだって思っていない。なら、誰にも判りやすい形を見せてやるまでだ。不肖の弟子の尻拭いはいつだって師匠の仕事なのだ。

「国王陛下。国や民が豊かになるのに、必要なものは何だと思われますか」

 もう国王に対して無礼だとかを気にしている場合ではない。いよいよ危なくなった場合はシェナイが何とかしてくれるだろうし。

「はて」

 幸い、レヴェントに気分を害した様子はない。一気に畳み掛ける。

「これは、商人の私の一意見にすぎません。が、正答の一つだとは思っております」

「聞こう」

「それは、繰り返すサイクルを持つ産業です。国を豊かにする産業は、全てこの国の民に返ってきます。私はそれを『繁栄の種』と呼んでおります。そして、今、その新たな種がカレンデュラを中心にして、大きく成長している最中です」

「・・・なるほど」

 遠くで小さく呟く声が聞こえた。アイディンの聞き間違いでなければ、ティメル王子のものだ。武力だけだと思ったら、なかなかに頭のいい男だ。

「して、その産業とは?」

「こちらでございます」

 もう一度、手の中の緋翠を掲げる。

「この石の名は、緋翠と申します。エルヴァン王子が見出し、エルヴァン王子がそう名付けられました。この事業の利益は、年間で300,000,000(3億)クルツはくだらないでしょう。そして、それは年々膨れ上がっていくと思われます」

 ルスタ国公認の名物となれば、大手を振って諸外国に輸出できる。大量生産をすれば、その分のコストは低くなる。まだまだ儲けは大きくなっていくはずだ。

 3億クルツという数字に圧倒されたのだろう。野次を飛ばしていた王子が静かになる。なんせ別の王子が用意した金の十倍以上だ。しかもそれは更に多くなるのだ。

「ほぅ、それで?」

「恐れながら、この緋翠事業の権利を有しているのはこの私でございます。私は、この私の資産を手放す気はございませんでした。昨夜、エルヴァン王子のお話を聞くまでは」

 エルヴァンの理想の助けになるのなら、安いものだ。アイディンの理想も結局エルヴァンと同じなのだから。

「アイディン殿・・・」

「私は、エルヴァン王子ならこの()を、正しく使ってくれると信じております。エルヴァン王子の持ち帰られた物は、ただの絵空事ではございません。恒久的な平和の礎となる種でございます」

 俺ができるのはここまでだ。あとは、お前がその綺麗すぎる理想で父王を説得してみろ。

「父上、私はずっと考えていたのです。どうやればより多くを提供することができるか、どうすればより多くに貢献できるか、私に何を為すことができるのか。国の頂点に立つということはそれだけ多くを与えることができるということだと思うのです。私は、ただ王になりたいのではありません。その地位の者が、民や国のためにできることがあるから、私は王になりたいのです」

 そう言い切ったエルヴァンに、場の空気が静まる。もう野次も飛ばない。今、発言を許されているのは、レヴェントとエルヴァンだけだと皆分かっていた。

「エルヴァン」

「はい」

「おぬしのその言葉に、嘘はないな?」

「もちろんです」

 王は静かに笑うと、宰相を呼んで小さく耳打ちをした。宰相が弾かれたように外へ飛び出してゆく。遠く、「お触れを出せ!」と聞こえた。

「私の息子達よ」

 玉座に残された王の言葉に、その場にいる全ての者の視線が集まる。

「どうやら決まったようだ。真に国の宝を用意したのは、誰であったのか。誰が王に相応しいのか。よもやこれから私の言うことを理解できない者はいないだろう。・・・エルヴァン、おぬしを王太子とする。次期国王はおぬしだ」

 おぉ・・・! とその場がざわめく。シェナイがその場で飛び上がる。アイディンとエルヴァンが視線だけで笑い合う。上がった声はもちろん喜びの声だけではない。むしろ、不平不満の声の方が断然多かった。

「しかし父上・・・!」

「見苦しいぞ、貴様ら」

 不満の声を上げた名も知らぬ王子を制したのは、意外なことにティメル王子だった。ざわつく玉座の間で一人だけ、平静なままに見える。

「父上が、エルヴァンが相応しいと決断されたのだ。それに我らは従うのみだ。そもそも、兄弟が血を流して争うのを見たくないという父上のお気持ちを、貴様らは無碍にするつもりなのか」

 ぴたり、とその場に静寂が訪れる。一番次期国王の席に近かったティメル王子がそう言うのであれば、他の王子は黙るしかない。敵ながら天晴れだ。アイディンは素直にティメル王子のことをそう思った。

「エルヴァン」

「はい」

「先程はそう言ったが、貴様が腐抜けたら、すぐに我がその席を奪ってやるからな。それを胆に銘じておけ」

「はい、兄上。ご心配には及びません」

 目指した形は違うが、正しく王族の誇りを持っている者同士が誓い合う。それに文句を言う野暮な人間はいなかった。



「アイディン殿、よければこれからは私の傍で私を支えてくれないだろうか」

「何だと?」

 カレンデュラへの出立を明日に控えた夜、エルヴァンはそう言った。師弟関係はこれで終わりだ。アイディンはカレンデュラへ帰る。二人の道は別々になる。アイディンはそう思っていた。

「私はこれから、次期国王としてこの国を良くしていくつもりだ。その助けをアイディン殿にしてほしい」

「エルヴァン・・・」

 ありがたい申し出だが、生憎アイディンに興味がある話ではない。正直、アイディンには話が壮大すぎる。所詮一商人、これからのエルヴァンとは責任が違いすぎる。

「アイディン殿、アイディン殿はこの国が好きか?」

「大体は」

 馬鹿正直に答えてしまった。全てを好きだとは、お世辞でも言えない。まだ変わらなければならないことはあるのだ。

「私もだ。だからだ、アイディン殿。だから、私はおぬしを必要とするのだ」

「どういう意味だ?」

「私は、この国の好ましくない部分を改革する。私の正義を信じて、悪しきを変えよう。けれどそれは所詮私一人の主観に過ぎぬ。それでは私の手から零れ落ちてしまう者が出てくるかもしれない」

 まずは奴隷制度の廃止だ。けれど、何の保障もないまま廃止したのでは、彼らを野放しにするのと同じだ。

「・・・・・・」

「アイディン殿には、間違えそうになったとき私を叱ってほしいのだ。おぬしの意見なら、私は信じることができる」

「それは・・・」

 随分信頼されたものだ。

「アイディン殿は、この国を変えたいと思ってくれているのだろう? それの一番の近道は、次期国王の私に物申せる立場になることだ。私は、その立場はアイディン殿であってほしい」

 相変わらず、澄んだ瞳だった。その瞳が濁るところは見たくないと思った。

「エルヴァン」

「私はまだまだ未熟者だ。私には、厳しいぐらいのお目付け役が必要だ」

 エルヴァンの瞳には、そう簡単に引かない色がありありと浮かんでいた。こんなの、お願いと言う名の脅迫だ。彼にアイディンを諦める気は毛頭ないのだから。

 けれど、今回だけは聞いてやれない。エルヴァンの傍にいてはできないことが、アイディンにはある。答えは決まっていた。

「断る」

「・・・そう言われると思った」

「そうか」

 師匠にも聞いてやれない願いはあるのだ。アイディンはアイディンの、エルヴァンはエルヴァンの闘いがこれから始まるのだから。

「アイディン殿」

「何だ」

「おぬしには本当に感謝している。アイディン殿が私の師匠で良かった」

「・・・あぁ」

 俺は、始めどうしようかと思ったけどな。しかし、エルヴァンとの日々は確かに悪くはなかった。

「また、会いに行ってもいいだろうか」

「王太子がそんなに軽々しく外に出てかまわないのか」

「かまうだろうが、大丈夫だ。私には姉上がいる」

「あぁ」

 確かにシェナイがいれば、こっそり抜け出すのもできそうだ。事実彼女がお忍びでやっていたことだし。

「アイディン殿」

「なんだ」

 話したいことは沢山あるはずなのに、二人とも言葉を上手く出すことができなかった。何も今生の別れではない。それが分かっていてなお、離れがたい気持ちがあった。

「アイディン殿、一つ頼みがある」

「ここには来ないぞ」

 ふふ、とエルヴァンが笑う。

「それは期待していない。アイディン殿は、どうもこの街が嫌いなようだから」

 いろいろと、良くない思い出が多すぎる。アイディンは冷たい美しさより、庶民的な美しさの方が好きだった。

「では何だ」

「ずっと、私の師でいてくれ」

「エルヴァン」

「私が何かに迷ったときは、おぬしの顔を思い浮かべよう。アイディン殿ならどうするかを考えよう。そのためにも、私がアイディン殿を師だと思うことを、許してほしい」

「・・・次期国王の師匠とは、随分俺も偉くなったものだ」

 実質、エルヴァンの願いを許す発言は、アイディンの口から無意識に出ていた。

「ありがとう。・・・私はイストレージャで、アイディン殿はカレンデュラで、人々の生活を支えよう。私達は一人ではないのだから」

 そう言って、師匠と弟子は別れた。



 そして、アイディンは今日も精製所に来ている。晴れて国王公認となった緋翠の売れ行きは一気に跳ね上がった。追加の従業員の募集をかける予定だが、今は社長だとか言っている場合じゃないほどに猫の手も借りたい状態なのだ。

 どうせ、じきに解放された奴隷達がこぞって押し寄せてくるだろう。それまでの辛抱だ。

 作業の手は休めずに、隣に座るドゥーダにカレンデュラを離れていた事の顛末を話す。彼は分かりやすいぐらいに驚いてみせた。

「まっさかアイツが王子様だったなんてなー」

「黙っていてすまなかったと言っていたぞ」

「まぁ、俺も女と間違えてたんだから、えらそうなことは言えないけどな」

「それも気にしていないと」

 と言うか、それはあえてアイツがそう見せていたのが判明している。ドゥーダが気にすることではない。

「しかし、王太子ってことは次の国王陛下だろ? 随分住む世界が違っちまったみたいだよなぁ」

 アイツは超能力者か。そのドゥーダの発言を予見していたのか、それに対する返答も己は預かってきている。

「それはアイツに言わせると違うらしいぞ」

「どういうことだよ?」

「なんでも、「私達の世界は同じだ。私はこれから、この国に暮らす全ての者のために生きてゆくのだから」だと」

「・・・エルヴァンらしいや」

「ある意味アイツが一番の底辺だ」

「アイディン」

 お前、王太子に対して怖いもの知らずすぎる。とてもじゃないが、ドゥーダにはそんなこと言えない。

 エルヴァンとシェナイの本当の身分を知ったときは本当に驚いた。ドサクサ紛れにアイディンの身分が貴族だと知れたが、そんなことを気にする余裕はなかった。けれどドゥーダにとって、エルヴァンはエルヴァンで、シェナイはシェナイだ。王族だったからって思うところが変わるわけではない。その答えをいつか二人に伝えたいと思う。

「寂しくなっちまったな・・・」

「何も一生会えないわけではないだろう。アイツのことだ、じきに顔を出すさ」

 湿っぽい空気を醸し出したドゥーダを止める。そのでかい図体でしんみりされても少しも可愛くない。おい、手が止まってきてるぞ。

「アイディン、お前エルヴァンに誘われたんだろ? 何で残らなかったんだよ」

 てっきり、アイディンはもう戻らないと思っていた。アイディンがエルヴァンの頼みを断れるとは思っていなかったのだ。

「俺は、商人だ。王族でも貴族でもない。国を大きく変えるのはアイツに任せておけばいい。俺はここで、金儲けをして生きていくだけだ」

「素直じゃねー奴」

 それが、一番エルヴァンのためになると判断してカレンデュラに戻って来たくせに。頑なに認めようとはしないとは。

「うるさい」

 相変わらず天邪鬼な奴だ。エルヴァンに対する優しさの少しでもいいから自分にも向けてほしいとドゥーダは思う。

 アイディンの袖口から白銀の腕輪が見える。ドゥーダの指輪と同様、肌に吸い付くように身に着けているのが当たり前になってしまった。男性用で「邪魔にならない」というのはそれだけで価値がある。さすがはかのデザイナーである。

「・・・シェナイのことはいいのかよ?」

「シェナイ?」

 何故ここで彼女の名が出る? ドゥーダは何を知っているというのだ。

 彼女は王族だ。エルヴァンがこの街を訪れるときは一緒に来るだろうが、元よりそう気軽に会える身分の女性ではない。今までが気安く会えていただけなのだ。


 アイディンの見送りに、エルヴァンは来られなかった。王太子となった次の日だ、やらなければならないことは山ほどあるのだろう。だから、馬上のアイディンに近付いたのは、シェナイだけだった。

「アイディン。やっぱり行っちゃうのね」

「あぁ、俺の住む場所はカレンデュラだからな」

「私が止めても、ダメよね?」

「・・・・・・」

 否、ともはっきり言えなくて口を閉ざす。何と答えるか自分ですら分からないから、そんなことは言わないでほしかった。

「アイディン、あなた私と初めて会ったとき、「何だこの女は」って思ったでしょ」

「あぁ」

 思った。女性らしさの欠片もなくて、見事なプロポーションを台無しにしている騒がしい女だと思った。

「あなたのことだわ。実は言葉遣いとかでそう思ったわけじゃないんでしょう?」

「・・・どうだかな」

 否定しないということは、肯定しているのと同じだ。

 シェナイのことを女性と認めなかったのは、結局はその短い金の髪のせいであったことを、アイディンはもう気づいている。肌の色なんて小さなことだ。実際、本当の色ではなかったわけだし。つまり、アイディンのこだわりなどたったそれだけのことだったのだ。

「アイディン」

「なんだ?」

「いいことを教えてあげる」

「いいこと?」

 なんだ。

「髪の毛はね、伸びるのよ」

 次、会うときを楽しみにしていてね。

 せいいっぱい顔を寄せてそう言った彼女は、いつも通りにとても親しみやすい笑顔を浮かべていた。それは姫君ではない、シェナイの笑みだった。


「シェナイには必ず会える」

「その心は?」

 絶対に伸ばした髪を見せに来る。そしてアイディンに対して、「どうだ参ったか」ぐらいは言いそうだ。

「アイツは緋翠のデザイナーだろう。新作を持ってきてもらわなくては困るからな」

 アイディンは、彼女の来訪を楽しみにしていることがドゥーダに気づかれているとしても、まだそれを認めるつもりはない。

 長い髪で笑う彼女を見て、そのときに初めて自分の感情に名がつくだろうから。




 王都イストレージャには、姫と見間違うほどの見目麗しい王太子がいる。

 彼は大声で理想を語る。全ての者の幸せを願う。裏表のないその人柄は、彼を知れば大きな魅力と映った。甘さを秘めた彼の力になりたいと思う者が増えていった。兄や姉と協力する彼の姿に、父王はその顔を綻ばせていた。

 王都は変わっていく。さながら、南東に位置する交易都市カレンデュラのような美しさだと見る者は語る。彼はそれを誇らしいと思う。

 彼の心の中には、終始不機嫌顔の師匠がいる。その師匠もカレンデュラでは有名人だ。いまや、ルスタ国を支える産業の総責任者なのだ。お忍びで会いに行くたび、「お前の仕事をしろ」と追い返されるのを繰り返している。

 けれど、彼には確信がある。きっと、師匠とはもっと近しい間柄になれる。 

 突然髪を伸ばし始めた自分の姉と仲睦まじく歩く姿を見かけるようになったのは、彼の勘違いではない。揃いの腕輪をしていることだってこっちはお見通しなのだ。いつか、自分にも話してくれるだろう。そうしたら、思い切り歓迎して祝福してやるのだ。

 その日を彼はとても楽しみにしている。


 額に碧色を光らせる王太子のいるルスタ国は、きっと今日も平和なのだ。

完結です。


この物語のジャンルを、選択することに一番苦労しました。

大量の水に一滴の雫を落とした程度しか恋愛要素はないし、魔法が出てくるファンタジーというわけでもない。

戦記もののように、剣を持って戦わない。

ミステリー要素もホラー要素もゼロ。

私の中では、「物語」なのです。もしかしたら童話が一番近いのかもしれません。けれど童話ってのも少し違う。

なので、「厳密には冒険してない」冒険、とさせて頂きました。

エルヴァンから見れば、確かにカレンデュラでの日々は冒険なので。

主人公はアイディンのつもりで書きましたが、成長するのはエルヴァンです。最後は彼に締めてもらいました。


とにかく、エルヴァンの性別がバレないように、けれど地の文では女性と表さないように注意しました。彼女とも彼とも書けなかったので、「弟子」という言い方に大変助けられました。


主要人物の名前は、トルコ語で意味を調べてつけています。

奴隷出身の者達はパッと頭に浮かんだままを採用しました。

ここで簡単な設定プロフィールを。

★アイディン(男性名、意味:啓発)

 カレンデュラの商人。生まれはイストレージャの上流貴族。

 年齢は26歳。身長は176㎝ぐらい。短髪黒髪に瞳の色は赤に近い赤茶色。

 アイディンの総資産は7500万クルツ(日本円7億5千万)→奴隷解放後は1500万クルツ(1億5千万)のイメージでした。

★エルヴァン(ユニセックス、意味:色)

 年齢17歳。身長は168㎝。金髪、瞳の色は紫。中性的な整った顔立ち。

 日焼けはあまりしていないが、色白と表現するほど白くはない。

 王位継承権第十五位の王子。

★ドゥーダ

 年齢はたぶん29歳(数えてない)。190㎝以上ある大男。こげ茶の髪と瞳。

 交渉人で情報屋で案内人。アイディンに解放された元奴隷。

★シェナイ(女性名、意味:陽気な月)

 エルヴァンの姉姫。エルヴァンとは異母姉弟。男勝りな女性。

 年齢は24歳。身長は165㎝くらい。短い金髪。瞳の色は空の青。

 抜群のプロポーションを誇る、肌は変装で小麦色だが本当は透き通る白。

★ティメル(男性名、意味:鉄)

 年齢26歳。身長は185㎝。オールバックにした金髪、瞳は暗めの青。

 王位継承権第四位の王子で、エルヴァンの異母兄。シェナイの実兄(母も同じ)。

★ジェミル(男性名、意味:優しさ)

 エルヴァンの異母兄で、ティメル、シェナイの異母弟。

 年齢21歳。身長は170㎝。長めの金髪に琥珀色の瞳。

 王位継承権第十位の王子。

 ありとあらゆる薬物や毒物に精通しており、毒伯爵と呼ばれている。

★レヴェント(男性名、意味:ハンサム)

 ルスタ国の現国王。エルヴァン達の父。五十代半ばぐらい。

 もちろん、子供達の金髪の遺伝子は彼から。

★ザイード

 ドゥーダの奴隷時代の昔馴染み。

 年齢28歳。身長は173㎝。茶髪にうすい灰色の瞳。

★ドルキ(男性名、意味:山頂)

 アイディンの兄。年齢31歳。黒髪で茶色の瞳。


設定がしっかりあったのは以上です。

あとは、サリーネ夫人とかモーヴは名前は決まってるけど外見イメージを固めてはいませんでした。


途中、章ごとに人が死んでいくのは辛かったです。

結局はストーリー上仕方なく亡くなって頂きましたが。

ルミージェ卿ことジェミルのことをもう少し掘り下げてあげるべきだったかと思いますが、エルヴァンの正体のヒントを撒き散らしたくなかったため最低限の描写となりました。


ここまで読んで頂けた方がどれぐらいいらっしゃるか分かりませんが、ありがとうございました。

今度はもっと分かりやすくジャンルを説明できる話を書きたいです。

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