08 秋祭りの苦い思い出
秋も深まり10月のよき日。
一年でもっとも市内が盛り上がる秋祭りの最終日。
祭りも終わりに近づき、少し寒くなってきた。同級生と二人で
帰ろうとした時、「おい明上、ちょっと金かせや」びっくりして
横を見ると、チンピラ野郎に脅せれて明上の顔が真っ青で足も
ガタガタ。
俺が「おい、どうかしたか」と明上に聞くと。チンピラに「おど
れは、だれじゃ」と恫喝された。
こいつは屋台の片づけを見張りに来て祭りを仕切っている地回り
の若いしだ。そう思った瞬間に、若いしが腹をめがけて蹴ってきた。
さいわい急所は外れていた。
その瞬間、俺は無意識に境内に落ちていた竹の棒を拾って殴り返し
た。 逃げようとしたので追っかけ、もう2~3発殴ったら地回りは
「まっとれや」と捨て台詞を残して走り去った。
「結城、やばいから早く帰ろうや」と明上が言った。
俺は、なんとも言えない不安に襲われた。
おい明上「仲間が来ないうちに帰ろうや……」
二人で自転車を飛ばして帰った。
その日は遅くまで寝付かれなかった。
翌日、寝不足で頭がボーとしたまま学校に行くと、違うクラスの同
級生( 同級生だが、一年年上の落第生 )が「結城、昨日神社で喧
嘩したろう」「どうして知ってるんじゃ」……。
それはな「昨日の夜、悪の知り合いから聞かれて、お前だとすぐわ
かった」「それからどうした」「あいつには、ヤバイ取り巻きが
いるから、やめとけ」と言っといたから。
それに「奴は、まだ使い走りの若いしだ。心配するな」と聞かされ。
一安心。
祭りには、こんな事件は特別に
珍しいことではなかった。
俺が中学時代にも神社の境内の人ごみのなかで町のチンピラと、里
帰りをしていた学生服姿の大学生と、理由は良くわからなかったが
喧嘩になり。
当初は学生の方が有利な戦いをしていたが、突然、チンピラが20セ
ンチ程の刃物を取り出した。
その瞬間、学生の腕からピューと血が噴出した。
「ワー」と言う観衆の悲鳴が......。
その時、チンピラの姿は消えていた。
俺は、こんな時代に、こんな所で生まれ育った。
よい時代だったか、わるい時代だったか?
~ ひとことでは、表せないな ~