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うす青い強弱の交差点  作者: 結城 義仁
2/22

02 うす青い強弱の交差点の扉が少し開いた。

  『 これまで私は、まだ強弱の交差点の、

         入り口にも到着していない 』


なんとなく中学3年の夏休みに入って、幼馴染の青野と武道場の

近くを通った時、20人程の人が空手の練習していた。

チラッと見てみると「あれ、師範は俺の叔父さんだ」と青野が。


しばらく見ていたら、練習の休憩中に叔父さんが青野に「見学に

来たのか、最後まで見ていけ」と声をかけられ最後まで残った。


俺が「面白そうじゃないか」「お前は、どうじゃ」と尋ねると。

青野が「叔父さんが師範なら、安心じゃ」とやる気を示した。


練習は2時間程で、「押す」の掛け声で終わった。暑さで全員の胴

着から汗が滴り落ちて、いかにも暑そうだ。


近寄って来た。「どうだ、お前たちも入門せいや」「強くなりた

いだろう」……。


急に声を掛けられた。 すぐに返事は出来なかった。


お前達 「胴着は・・・店で一番安いの買って、来週の月曜日6時ま

でに来いよ」


少し遅くなったので、急ぎ自転車に乗り。帰ろうとした時「待って

るからな」と叔父さんに声を掛けられた。


「はい、わかりました」と2人とも返事をしてしまった。


次の日の夕方、二人で一番安い胴着を買いに行った。



   『 この事件が、強弱の交差点の扉を少し開いた 』


今年の夏は特に暑い。少し早めに青野を誘って武道館に向かった。


自転車で15分程走ってきたので、頭から汗が噴出してきた。

まだ誰も来てない。

パンツ一丁になり、汗を拭いて胴着に着替えた。


「オー来たか」後ろから、叔父さんの声がした。

ビックリして振り向くと、既に汗びっしょりの叔父さんが立っていた。


「いつも30分間ほど身体慣らしをしてるんだ」「そうしないと怪我

をするからな」……。 この言葉を聞いて、これからは師匠と呼ぼう

ぜと二人で決めた。


「集合」「新人は一番後ろに並べ」「押す」の挨拶から開始だ。


俺たち2人は一番後ろに回り、柔軟体操が始まった。

柔軟体操といっても簡単ではない。2人一組で力いっぱいやるので、

汗が体中から噴出してくる。


暑くてたまらん。休ませてもらえない。


俺たち素人は、怪我を予防するための(型)の基本練習から始めた。


そうしながら1ヶ月がたった頃、師匠から、お前たちもこれからは、

「型だけの練習では、絶対強くならない、(組み手)が重要だ」と

言われ、恐怖心は当然あったが、防具は一切付けないで、相手を倒

す組み手練習をすることになった。


厳しい練習を続けていく事で、恐怖心も徐々に薄れてきた。

不思議と守りにも強くなり、怪我をする度合いもへってきた。


冬の寒稽古も、なんとか踏ん張り通し、先輩たちの練習にも付いてい

けるよなり。中学生活も終わりに近づいた頃、黒帯の先輩が俺たちに

「お前たち、特に必要がないなら黒帯はとるな。

「有段者になると不便なこともあるしな」と年度末の打ち上げの日に

助言をもらった。


その時は、正確には理解できなかったが、なんとなく納得してしまった。

その後は教えを守り有段試験には一切参加しなかった。


黒帯は見栄とハッタリには使えるが、事故があった場合には大きな重

荷になる事もあるので、無理して黒帯をとる必要はなかったようだ。


助言をくれた先輩は若い頃は、やんちゃ者で、よく暴れていたらしい。

先輩の気持ちが、なんとなく理解できたような ??。


暑い時、寒い時には空手を何度も止めようと思ったこともあったな。


クソー負けてたまるか。

そう思いながら高校2年まで続け、その後大学受験のため引退した。


早いもので中学生活も、あっとゆう間に終わり。

情けない話だが、男性だけの工業高校を何故選択したのか。今考えても

思い出せない。


入学してやっとクラスに慣れ、教室変えで移動中。

教室の前に来た時、廊下の隅で入学してから最初に仲良くなった長渕

が、なんとも癖のありそうな上級生に脅かされていた。


近くに行って見ると「参考書を買ってくれや」と言われ困っている様

子だ。


とっさに「こら、いい加減にせんかい」と言ってしまった。「なんじ

ゃお前は、くらされたいのか……」 廻りの同級生達が集まってきた。

やつは「覚えとけよ」と捨て台詞を残して帰っていった。


教室に入ると、長渕と同じ中学出身の同級生が教えてくれた。

あいつは、在日韓国人で、「長渕」と同じ中学の1年先輩で「金子」だ

と分かり、急に不安が過ぎった。


相手が相手だけに、このままでは終わらないだろうと覚悟した。


それから数日が過ぎた。

以前助けてやった長渕が、「結城は空手を習っていて結構強いらしい

ぞと、先輩に吹き込んでおいたから、もう大丈夫だと思うぜ」と言う

ので、一安心。


その後も数回、金子先輩とは顔を合わしたが、知らん風なので、安堵

したことを覚えている。



    『 結城は、その日から同級生に少しだけ、

              注目されるようになった 』


夏休みも間近になり、日に日に暑さが増してきた。


数人の友とバカ話をしながら教室を移動中。違うクラスの背の高い野郎

と、出会いがしらにぶつかった「こらー前向いて歩け」と怒鳴られた。


その瞬間に手が出てしまった。 口元からポタポタと血が流れ落ちた。

文句あったらいつでも来い。と言ったものの何か不安が過ぎった。


残念ながら不安は的中してしまった。次の日、担任に呼ばれ「明日、親に

来るように」と言われた。 どうしよう? 母だけには迷惑を掛けたくない。


親父に話すと、ややこしくなりそうなので、よくよく考えた末。

母に話すことにした。 母がただ一言、厳しい顔をして、「空手を習っ

てるんでしょう。道場以外で使っては、いかんね」明日行ってくるから

……。


「1週間の停学になったよ」学校から帰ってきた母親は、それだけ言った。

母に怒られなかった分、余計に応えた。



    恥ずかしい、その日、寝床に着いた時うっすらと涙が。


       今後、母には迷惑かけません。約束します。




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