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うす青い強弱の交差点  作者: 結城 義仁
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01 私の生い立ちからお聞かせいたしましょう。

うす青い強弱の交差点

 人間の心は、勇気が出る場面(強)と、そうでない場面(弱)

が時々交差する生き物である。(強)が勝るような人物になりた

いと願っても、これだけは中々難しい。本当の心の内を知ること

が出来るのは、本人だけで、他人には絶対分からない。

 田舎の高校生活から、東京の大学応援団までの

うす青い強弱の交差点の変化模様をお楽しみ下さい。

   『 私が子供の頃を過ごした不思議な境遇 』


ここは気候も温暖で過ごしやすい、四国の田舎町。

南に四国山脈が面々と。 北には美しい瀬戸内海が広々と。


真冬だと言うのに空は晴れ、太陽の光は暖かい、そんな日に。

私(結城 義仁)は終戦直後のドサクサに生まれ、高校卒業ま

で、この町で自由奔放に過ごした。


親から聞かされた戦争時代の悲惨な体験は、50年以上経っても

耳にこびり付いて剥がれない。


戦争中は、家族全員(私は母のお腹の中)で満州ハルピン

に住んでいた。当時、父は町を襲う山賊から住民を守るために

銃と刀で命をかけて戦った警察官で、当時は恐怖心もあったの

か毎日アルコール三昧で母を困らせていたようだ。


戦争に負け、父だけがロシア兵に捕まって、シベリヤ送りにな

った。その時父は、とっさ機転で、安物の腕時計をロシア兵に

与えて逃がしてもらった。


親父の安物の腕時計が、家族全員( 長女5才、長男4才、次男2才、

三男は私でおなかの中に )を無事に満州からの引き上げに貢献

した。


ロスケ(ロシア兵)はノーナシだ。

なんと、汚れていた腕時計を川で水洗いをしたんだぞ。


親父は「ロスケ、ロスケ」とバカにして喜んでいた。

私もロシア兵のレベルの低さには笑ってしまった。


困ったことに、酔うたびに何回も聞かされてものだ。。


真冬は酷寒の満州から、道なき道を何千里も栄養失調の母の、腹

の中にはいったまま。ロシア兵に見つからないように歩いて帰っ

てきたそうで、もう少しでも帰国が遅くなっていれば、今の私は、

この世に存在していなかっただろう。


ある時「お前は、婆ちゃんがいなかったら死んでしまってた」と

母から聞かされた。


それは、俺が生まれた時、へその緒が首に巻き付いていたそうで。

「とっさにハサミで、おばあさんが、へその緒を切ってくれた」

と中学生の頃に母から聞かされた。


ひょとして、その場に婆ちゃんが、いなければ……。

想像するのも恐ろしい。 「ありがとう、お婆様 !」


今では信じられない、この時代の面白い昔話を聞かせましょう。


たしか、幼稚園の頃に引越しをした。なんと、その時代は荷馬車

で、引越しの道中に唐津の火鉢が馬車から落ちて、割れてしまった

事や、汚い話だが、歩きながら、馬が糞を道路にばら撒いた景色は、

不思議と今でも鮮明に蘇る。


こんな事もあったな。私は市役所勤めだった父に自転車で幼稚園

に送ってもらい。 帰りは、今の時代では考えられない事だが、

寒い日も、暑い日も、雨の日も、一人で30分以上かけトコトコと

歩いて帰った。犬に追っかけられたり、悪い小学性に意地悪され

たり、悔しいことも色々あった。


この時代は不便な時代だったが、キャッチボールは道路で出来

た。しかし、朝夕は通勤自転車の洪水で、車は通れないし路上で

遊ぶことも出来なかった。


交通手段はバス、タクシー、3輪自動車等で自家用車を買える人は、

まだまだ少なかった時代だ。


この時代、人々の生活は、まだまだ貧しかったが、子供たちだけで

山や海に行って山菜をとったり、魚を釣ったりして子供が成長する

には、今よりはずっと良き時代だったように思われる。


四国の田舎も急速に変化し始めたようだ。


中学生の頃、世の中の景気が、少しずつ良くなり始めた。

この時、父は市役所をやめ、家を改装して下宿屋を始めた。


その後、日本の経済も徐々に良くなりめ、懐具合も少しは裕福にな

ったが、外部から多くの労働者が入り込んできた。

急に治安も悪くなり、出張できた人に「夜は危険なので出来るだけ

外に遊びに出ないようにしてください」と注意していた。




    情けない私はこんな物騒な町に育ったようだ。




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