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前回死んでみて、いくつか分かったことがある。 死んでみて、というのも軽く違和感がある言葉だが、他にどういえばいいのか分からない。 だって、俺は昨日自殺したはずなんだ。しかし今はこのとおり。傷一つない。 というわけでまずは一つ。
「天野が邦章に告げていたことは本当だった…。 でもなぁ」
多分、全部あっているわけではない。 じゃないと説明のつかないことがある。
だから、多分こいつに聞けば分かる。
「よう伊月。なんかお前にしては深刻そうな顔してるけどどうかしたのか?」
「俺にしてはってなんだよ。俺そんな軽薄キャラ?…まあいいか、聞いてくれよ、今日なんかいやーな夢見てさぁ」
ビンゴ。 やっぱりそうか。あいつの見解には一つ間違いがあった。二人もいないし気にしないで確かめられるのはいい。
「いやな夢ってなんだ?誰かが飛び降りるところ見たとか?」
「お、おぉ…。ってなんでそこまでピンポイントで分かるんだよお前超能力者!?」
「いやーお前の見る夢なんてその程度のちゃっちい」
「やっぱイラつくなお前…、まあいっか。 なんであれが現実じゃねェのってくらいのリアル?な夢だったんだぜ?その上飛び降りてたのお前でさー。まあいつかやってもおかしくないとは思うけど…痛い痛い痛い!!」
…飛び降りたのが自分だとばれたのは予想外だった。窓際にいた生徒はやっぱりこいつだったか。畜生こいつの目がもう少し悪ければ。なんだよ視力3以上って日本人じゃないだろもう。
「ちょ、もう…マジできついって…」
「…俺はいつの間にお前の首を絞めていたんだっけ」
「いや、結構前から…ってか、なんで…離してくんないの?ねえ!」
とりあえず、2つ目の発見。 天野の『覚えているのは私とお前、そしてそんなことを起こしている犯人だけなんだ』というのは間違いだった。その日の事を覚えているのは、その日強いショックを受けた人間全員というのが多分正解だろう。ただ夢という扱いになるから気にならないだけだ。
だから、やっぱりあの夢は本当だ。 なら、やはり犯人は明日起きるあの出来事から逃げようとしている、ということでいいんだろう。じゃあ犯人は、夢に出てきた『人』のどちらか。
殺せばわかるんだろうけど、それはさすがになぁ。 殺人犯になるのはごめんだ。
とりあえず今日の事を忘れないために、また死んだ。